著者 : アリソン・ゲイリン
現住地 : ニューヨーク州 ハドソンヴァレーのウッドストック
経歴 : コロンビア大学大学院でジャーナリズムを専攻し、タブロイド紙の記者を経て2005年に小説家として
デビュー。本作が10作目。
出版年 : 2018年
邦訳出版年 : 2020年
邦訳出版社 : (株)早川書房
受賞 : アメリカ探偵作家クラブ賞
翻訳者 : 奥村章子
☆☆☆感想☆☆
本書の中ではフェイスブックが重要な役割を果たしている。母親ジャックリーンのフェイスブックに息子のウェイドが書いた決別の書から始まる。「みんながこれを読むころには、ぼくはもうこの世にいない。」
ウェイドの遺書からさかのぼること5日前から物語は動き始める。ウェイドは17歳の高校生、弟のコナーは13歳の中学生。二人はシングルマザーのジャックリーンとニューヨーク市郊外のヘヴンキルというハドソンヴァレーの小さな町に住んでいる。深夜午前3時すぎにウェイドの同級生リアムがひき逃げされて死亡する事件が発生する。その車の持ち主は往年のスター歌手で今はうらぶれたエイミー。エイミーは黒い服を着た男に車を奪われ、止めにきたリアムがひかれたと主張する。車は見つからず、エイミーは飲酒運転の疑惑が生まれる。コナーはその夜ウェイドが朝方帰ってきたのに気づく。リアムを追悼するフェイスブックの中で、ウェイドの名前で出されたものが冷酷だということから、いつも間にかウェイドがひき逃げ犯じゃないかと、ありもしないことまで書かれるようになる。
重要人物では、あまり出番はないが、ジャックリーンの離婚した夫のビル。そして、ヘヴンキル警察署のパール・メイズ巡査、心に大きな傷をもっている。そしてもう一花咲かせたいエイミー。リアムの親友ライアン。その従兄のウーデル巡査。ジャックリーンの友人のヘレン。
地名につくキルというのは古いオランダ語で「川」という意味だとか。オランダ人入植地だったために、ハドソンヴァレーにはキルがつく地名が多いという。それから、パールがセックスフレンド、一夜だけの相手を探すのもフェイスブックだ。個人的な詮索を受けたくないために活用している。一昔前なら、バーとかで相手を探しているシーンがあるが、時代が変わったという感じだ。
大きな不幸に見舞われて、ばらばらだった親子や元夫婦の絆が結びなおされてほっとした。読後感はさわやかだった。