『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想327  罪責の神々(上)(下)

2023-05-28 21:53:42 | 小説(海外)

undefinedの画像「リンカーン弁護士」の映画から。

著者     :  マイケル・コナリー

生年     :  1956年

出身地    :  アメリカ、フィアデルフィア

出版年    :  2013年

邦訳出版年  :  2017年

邦訳出版社  :  (株)講談社

訳者     :  古沢嘉道

 

★☆感想☆☆☆

映画にもテレビ・ドラマにもなっているリンカーン弁護士・シリーズの第5作。この作品はまだ映画にもドラマにもなっていない。

弁護士マイケル(ミッキー)・ハラーはアール・ブリックスの運転する高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりにしている。アールは母親の住宅差し押さえ問題でうまく解決したハラーの弁護料の代わりに運転手として働いている。2番目の妻のローナ・テイラーはハラーのマネージャーで、ハラーの調査員のシスコと結婚している。3人の関係は非常に良好で固い絆で結ばれている。1番目の妻はマギーは文書整理担当検事補。2人の間の娘16歳のヘイリーは、飲酒運転癖のある依頼人をハラーが無罪にした直後に、ヘイリーの友人とその母親をまた飲酒運転で撥ねて殺してしまったことから、父親と絶縁してしまった。ハラーはヘイリーがサッカーをする姿を丘の上から双眼鏡で眺めるしかない。また、亡きハラーの父親の弁護士事務所の共同経営者だったリーガル・シーゲルは今は老人ホームにいるが、ハラーの相談相手である。リーガルが「罪責の神々」について語り、ハラーがそれに答える場面である。

 

 「きみの父親は、陪審員たちのことをいつも、『罪責の神々』と呼んでいた。おぼえているかね?」

 「ああ。連中が有罪か無罪かを決めるからだ。なにが言いたいんだ、リーガル?」

 「言いたいのは、われわれの暮らしのなかでの毎日を、そしてわれわれがするすべての動きに対して批判する人がおおぜいいるということだ。罪責の神々はおおぜいいるのだ。それをわざわざ増やす必要はない」

 わたしはうなずいたが、どうしても返事をせずにはおれなかった。

 「サンディ・パターソンと彼女の娘のケイティ」

 リーガルはわたしの返事に困惑している様子だった。彼はその名前に聞き覚えがなかった。わたしは、当然ながら、一生忘れないだろう。

 「ギャラガーが殺した母と娘だ。そのふたりがおれの罪責の神々だ」

 

「ミッキー。もしあなたが望むなら、殺人事件を手に入れられる」というローナからの電話でジゼル・デリンジャー殺人事件の容疑者アンドレ・ラコースの依頼を受けることにしたハマーは、ラコースがハマーを選んだ理由に驚く。殺されたジゼルが最高の弁護士として推薦していたのだ。ジゼルの写真を見たハマーはかつての依頼人の売春婦グロリア・デイトンであることに気づく。7年前にグロリアは売春婦から足を洗ってハワイに引っ越したはずだった。デジタル・ポン引きのラコースは無罪を主張し、グロリアには何者かの尾行がついていたこともわかってくる。グロリアとの最後の案件で麻薬密売人モイア逮捕にグロリアが一役買ったことを思い出していた。

善と悪の物語ではなく、悪の弁護をする弁護士も大変だ。ハラーの考えがうかがえる場面だ。

 

 殺人事件を頭に浮かべると、さまざまな理由で血のなかにスパークを起こしうる。第一にそしてなによりも、法の上で最悪の犯罪であり、それとともに弁護士という仕事の上で最高の褒美がやってくる。殺人事件容疑者の弁護をするためには刑事弁護というゲームのなかで最上位にいなければならない。殺人案件を手に入れるには、ゲームの最上位にいるというそれなりの評判を保っていなければならない。そしてそういうことすべてに加えて、金が存在する。殺人事件の弁護はー事件が裁判になろうとなるまいとにかかわらずー金がかかる。とても時間がかかるものだからだ。必要な金を払ってくれる顧客つきの殺人事件を手に入れれば、一年分の事務所維持費を稼げるようなものだ。

 


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