『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-1

2024-05-26 00:12:23 | 映画

この翻訳は韓国語の学習のために行っているものであり、営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

 オ・ソンスク、彼女には全く理解できない男が3人いる。

 1番目は夫。30年一緒に暮らしてきながらも、この男の明日は全く予測することができなかった。安定した中小企業の課長の地位を蹴っ飛ばした時も、紆余曲折の末に拵えた店を数年やりくりして、だしぬけに家出してしまった時もそうだった。彼はいつも頑固で融通が利かなく意思疎通ができない人間だった。数年前病気になって戻ってきた時、なぜ勝手に生きるのかと問い質したけれど、彼は返事をしなかった。腹が立ったソンスクは罰を与えるように毎日質問した。結局答えるのを嫌ったのか彼はまた家を出た。彼女は答えを得ることができず、今は生死さえわからない夫を理解することもその必要もなくなった。

 2番目は息子。一人で育てようと一人息子をちやほやしたにもかかわらず、血は欺くことができないのか、年齢が行くに従って夫のように理解できない様子を見せ始めた。息子が大学を卒業して大企業に就職した時だけ、苦労して育てた甲斐があったと本当に満喫できた。しかし、皆が羨ましがるそこを1年2か月で放り出した時から不吉になった。突然株式投資をしてそれなりに稼いだお金を失くし、また映画監督になると言って何か学校に通ってごろつきのような奴らと付き合い始めた。そうして借金までして独立映画というものを撮影するという荒唐無稽なことを始めると、独立どころか途中で失敗して、しばらく鬱病にまで陥って病院の世話になってしまった。

 なぜ羨ましくない、当たり前の生活があるのに、株式や映画製作とか不安で危険な無茶苦茶なことに、飛び込むのか、彼女は本当に理解できなかった。結局、ソンスクの懇々とした頼みで空しい望みを引っ込めて、今でも外交官試験の準備をしている息子。しかし、息子の表情はいつも暗く重苦しく見え、いつ再び鬱病がぶり返すか心配になった。そのたびに、ソンスクは胸の中で喚いた。「この野郎、出かけて真夏の日差しの下でセメント袋でも運んでみろ、憂鬱になる暇があるか。」

 夫と息子という理解不可能な二人の男だけでもソンスクの人生は十分に困難だったが、今回は現在進行形の問題だらけの人物が大きなクエスチョンマークのような頭を、彼女の人生に押し込んでいた。まさに1か月前からコンビニの夜間アルバイトで登場した愚鈍な熊のドッコさんだった。彼がホームレスだったことが後でわかって、びっくり仰天するにはしたけれど、その時は社長のヨム・ヨンスク姉さんが夜間業務を引き受けようと大変な時で自分も彼女を助けることができなかったから、仕方なかった。コンビニを維持しようとすれば猫の手も借りなければならないときだったから、反対する余地がなかった。

 幸いにも熊は大きい問題を引き起こさず、コンビニの夜を守ってくれた。心配なほど臭いも強くなく服装もあまりむさくるしくなかった。仮払いしてやったお金で部屋も手に入れ服も買って頭も刈ると、たちまち人がぱっと変わったと社長のヨム・ヨンスク姉さんは得意がった。いやはや、美しい。肯定の化身になると同時に、平生教育者として不良学生の教導に常に先頭に立って来た社長のヨム・ヨンスク姉さんとは違って、ソンスクには単純明快な一つの金言だけがあった。それは、人は決して変わらないということ、つまり雑巾は洗っても雑巾だということだった。過去飲み屋を運営して、彼女はいろいろな人といろいろなことをしてみて、途方もなく非常識な人の相手をした。レジの現金をかっさらって逃げて、警察署で両親と一緒に再会した20歳のアルバイトや、酒に酔って器物を破壊した後、もみ手をして詫びた還暦のお得意様も許してしまうやまた厚かましく彼女の悪口を言って通ってきた。それでソンスクは人を信じるよりは犬を信じるほうを選んだ。自分が飼っているエホとカミこそ彼女に忠実で彼女だけを眺めてくれた。

 それで、彼女はホームレス出身の熊が20日間コンビニで昼夜徹夜して義城ニンニク入りハムとヨモギ飲料を摂っても人になると信じなかった。常に半分つぶった目つきとうろつくようなのろい挙動に、お客様が来ても自分のタイミングで挨拶一つできない社会不適合者が簡単に変わるとは決して考えられなかった。

 しかし、また一つ考えても理解できないことが増えたのだ。わずか1週間で人になり切れないはずの熊がとてもいい人間になったのだった。彼は3日でコンビニの業務を全部熟知して、更に3日経つと動作がすばしっこくなり、お客様は勿論ソンスクにも目と目が合うとすぐにぺこっと頭を下げるではないか?挨拶どころか目が合うことも大変だった彼が、一体全体どうしてこのように速く社会に適応するようになったのか、ソンスクとしてはわかったようでわからないことだった。

 ドッコさんはソンスクにとって夫と息子に続いて理解できない3番目の男だったけれど、変わらない失望を与えてられて理解できなくなった二人の男と違って、今回は変身に近い変化を見せて理解できなくなった場合だった。本当にお姉さん社長の小さな手助けだけでこんなに人が変わるのか?ホームレスのドッコさんの過去がどうだったら、このように速く人の稼業ができるようになるのか?気になったけれど、お姉さん社長もスヒョンも彼の過去を探り出すことはできなかった。アルコール性痴呆によって記憶がたくさん飛んで行った彼は、ただ「ドッコさん」という姓か名前か曖昧な呼び方で呼ばれるだけだった。

 「よく思い出してみてください。今正気を取り戻したと思うから。」

 「わ、わかりません。たくさん考えると・・・頭が痛いです。」

 ソンスクが訊ねるたびに彼は大きな手で顔を乾かしながら、このように答え、彼女は限りなくじれったかった。ドッコさんが自ら自分の過去を突き止めない姿も疑問だった。気が付いたら、過去に何をしたのか、家族はいるのか、自分の本来の姿が何か、知りたいのは当然ではないか?彼女はその面から理解できないドッコさんを相変わらず熊だと思うことにした。勿論熊も犬ではないから。彼女にとって信じることができない存在に過ぎなかった。

 理解することも信じることもできないので、ソンスクはドッコさんによそよそしく接した。しかし、お姉さん社長はドッコさんを末の弟のように接し、シヒョンも彼と隔てなく会話するようだった。交代時間にシヒョンにドッコさんについて問い詰める時、彼女は彼がこの上なく正常だという言葉を繰り返した。そこに加えてホームレスになる前に、どのように生きていたのか正確にわからないけれど、明らかに優れた才能をもった人だっただろうと推理した。

 「まさか。あの愚鈍な熊は本当に優れた才能をもっているよ。話すだけでも私はいらいらする。」 

 「口ごもるのもかなり治ったじゃないですか。どこかで見たのだけど、話さなければ声帯が切れて口ごもることがあるそうですよ。私がドッコさんに仕事を教えたじゃないですか。初めは静かだったけれど、間もなくよく飲み込みましたよ。私がここの仕事を全部覚えるのに4日かかったけれど、ドッコさんは1日2日で分かって、てきぱきできましたよ。タバコの種類も1日で全部覚えてしまって・・・確かに学習能力があります。」

 「シェパードも学習能力はある。」

 「まあ、次元が違うでしょう。それに時々動くのを見ると、カリスマがあります。迷惑をかけるお客さんには怖い顔をして、とにかくごく小さい食堂の社長ぐらいはした人のようです。」

 「ぷっ、どこの組織暴力団の末席で何人のチンピラを連れていたっていうの。」

 「本当にあの人がそういう人ではないだろうかともちょっと考えたけれど、そうではないと思います。犯罪者のような感じはありませんよ。」

 「やめて。刑務所の代わりにソウル駅で過ごしたことが問題よ。」

 「ホームレスになったことが間違いですか?偏見を持って人に接したらだめです。」

 「シヒョン、あなた、偏見がすべて悪いのではないよ。世の中はいつも用心しなければ。」

 シヒョンがうんざりした表情になったけれど、ソンスクは若い者が何か心に思ってふざけているのかという調子で、横目で睨んで会話を締めくくった。とにかくお姉さん社長も若いアルバイトも人に甘すぎた。ソンスクはせめて自分だけは厳しい態度で職場を守ろうと誓った。

 息子が食べる朝食を支度して8時までにコンビニに出勤すると、ドッコさんがレジ台の後ろに立ったまま、こっくりこっくりうとうとしていたが、彼女の登場にぱっと目を開けて挨拶した。ソンスクは挨拶を受けたり、受けるのをやめたりして倉庫へ入ってユニホームのチョッキを着て出てきた。機転の利かないドッコさんはカウンターに相変わらず引きこもっていた。出てこいと蝿を払うような手振りで彼はあくびをしながらカウンターから出てきた。彼女はレジの前に立ったままお金の点検をしながら訊ねた。

 「引継ぎに特別な事がありますか?」

 「別に・・・ありません。」

 「確かでしょうね?」

 ドッコさんが頭をかきながら、しばらく困ってから答えた。

 「世の中に・・・確かなことはありません。」

 これは何か・・・私があんたと世の中の道理を問い質そういうことでもなく。ソンスクは鼻であしらってからお金の点検を済ませた。

 しばらくしてドッコさんの理解できない行動が始まった。彼は8時で勤務時間が終わっても陳列台の所を行ったり来たりしながら、商品を縦横の列に合わせ始めた。どんな強迫観念があるのかわからないけれど、大体30分ぐらい品物と目の高さを合わせたまま、汗をかきながらまっすぐに商品を陳列することに力を注いだ。構わない。ところでお客がいない早朝の時間に片づけて勤務が終わったら、まっすぐ退勤するのがいいんじゃない?彼は必ずソンスクがカウンターに座ってからゆっくり陳列の整理をした。それが終わりではなかった。整理が終わると再び掃除道具を持ってコンビニの外に出た。屋外テーブルを雑巾で拭き、出入口の周辺を箒で掃いた。そうして屋外ベンチに座って出勤する人々をじっと眺めながら廃棄食品の牛乳やパンを食べた。

 ソンスクはドッコさんが相変わらずホームレス本能を払い落とすことができず、借りた部屋に戻るのが嫌で、そうするのだと思うことにした。そんなことに神経を使わず、自分の仕事をしていると、いつの間にか彼は消えていなくなっていて、1日が退屈に流れ始めた。


にほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログへ
にほんブログ村


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
不便なコンビニ (nishinayuu)
2024-05-29 12:12:23
「お姉さん社長」という訳語、いいかも。
返信する
不便なコンビニ (マリーゴールド)
2024-05-30 13:18:18
いつも読んでくださってありがとうございます。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。