『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想136  逆説の日本史17江戸成熟編

2014-07-10 23:56:47 | 時事・歴史書

 

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読書感想136  逆説の日本史17江戸成熟編

 

著者      井沢元彦

 

略歴      1954年名古屋市生まれ。1980年「猿丸幻視行」で第26

 

江戸川乱歩賞受賞。「逆説の日本史」シリーズは500万部を突

 

破するベストセラー。

 

出版年     2009年から2010年にかけて「週間ポスト」連載、2011年単行本で刊行。

 

出版社     (株)小学館

 

 

 

感想

 

 著者が従来の歴史の定説を崩して行くという姿勢はここでも貫かれている。

 

著者の以前からの主張である、日本の歴史学における宗教やイデオロギーの軽

 

視が歴史を歪めているという観点はここでも生きている。ここで取り上げられ

 

ているのは、明治維新をイデオロギー的に準備した国学であり、幕府を支えた

 

イデオロギーとしての朱子学の弊害である。ここでは朱子学を宗教と見ている。

 

 著者は以前から日本の宗教というのは祖霊信仰(怨霊信仰)であると述べて

 

いた。それが国学を天皇教として普及させる上で再度登場してきている。本居

 

宣長が古事記の上に打ち立てた国学には、死後すべての魂がケガレの世界へ行

 

くという解釈しかなかったのを、その後継者と自認する平田篤胤は、死後の救

 

いを認めた。平田篤胤の説では死後肉体と切り離された魂(霊)は幽冥界に行き、霊

 

体となった人々は生前の行いについて審判を受けるというものだ。これによっ

 

て平田派国学は天皇教を完成させ、熱烈な信徒を生み出して行き、幕末に向けて国論

を統一していくのである。天照大神の統治権を受け継ぐ天皇から将軍は統治を委託さ

れているという国論である

 

 朱子学の弊害は幕府の三大改革の中に現れていると著者は批判の矛先を向ける。

 

特に松平定信の寛政の改革については「農業を国の根幹とし商業は悪とみなす」とい

政策で、まさに朱子学の考え方を反映したものである。幕府の財政破綻の打開の道とし

て、前任者の田沼意次が通商開国へ転換しようとした方策をすべて定信は撤回させ

た。田沼意次の時代に北方に出没するロシアの脅威から、蝦夷地についての詳細な調

査が行われた。ロシア人を江戸に呼んで日本人のロシア語通辞を養成するという計画

のために、将軍の許しも得ていた。蝦夷地は松前藩から取り上げ幕府の直轄地とし

て、交易と開拓を行うことでロシアの脅威からの国防とロシアとのウインウインの交

易の果実という一石二鳥をねらっていた。しかし、松平定信は一切を白紙にもどし

た。著者によれば、松平定信は幕府に夷(野蛮人)と商売させたくなかったからだと

いう。松平定信の手下の朱子学信徒が記した徳川実記には三大改革については記して

いても田沼意次の蝦夷地の調査報告書について一切無視しているという。 

 朱子学の毒について著者は三点あげている。一点目は先祖つまり今とは全く

 

違う前提で生きてきた人々の決めたルールを「祖法」として絶対化するので、

 

新しい事態への柔軟な対応ができない。二点目は歴史を捏造してしまう点であ

 

る。現実よりも理想を重視する朱子学では「実際あったこと」は無視され、「あ

 

るべき姿」が歴史として記述されることになる。三点目は外国人を「夷」、野蛮

 

人と決めつけ、その文化を劣悪なものとして見る。

 

 家康は外国人を政治顧問にしていたが、そんなはずはないという「あるべき

 

姿」に歴史を改竄したまま、幕末の攘夷運動が展開されていくのである。まさ

 

に朱子学の毒である。

 

 この「逆説の日本史」シリーズでは、なぜそういう選択をしたのかという当

 

時の人々の考え方がわかって、いつも明快な気分になる。歴史に「もし」とい

 

う仮定はありえないが、田沼意次の路線が継承されていれば、日本の近代史も

 

もっと違ったものになっていただろう。近代化の時期が100年以上早まってい

 

たかもしれない。そう思うと残念な気がする。

 

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四季折々406  北鎌倉散策8

2014-07-10 13:05:19 | まち歩き

建長寺の境内の奥の山腹に半蔵坊がある。建長寺の鎮守の神である半蔵坊大権現が祭られている。明治23年(1890年)に建長寺の住職が静岡県奥山方広寺より勧請したもの。霊験あらたかと伝えられている。

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半蔵坊大権現の石碑。

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赤紫のアジサイ。

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青いアジサイ。

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白いアジサイ。

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半蔵坊の一番目の鳥居。

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半蔵坊の2番目の鳥居。

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参道を囲む木立。

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白百合。

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最後の上り。

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保全地区になっている。

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