読書感想135 バーニング・ワイヤー
著者 ジェフリー・ディーヴァー
略歴 1950年シカゴ生まれ。雑誌記者や弁護士を経て世界的なベス
トセラー作家になる。本書はリンカーン・ライムのシリーズ
の第9作目。
出版年 2010年
邦訳出版年 2012年
訳者 池田真紀子
感想
今回の凶器は電気だ。目に見えない凶器だ。金属や水のような伝導体を媒介して最短のコースを選んで地面に落ちて行く。
アメリカのニューイングランド地方の変電所が次々に故障して、電力をコントロールできなくなり、一つの変電所に電力が集中し、ついにパニックが起きた。ニューヨークにある変電所の窓から、中の電線がむき出しになったケーブルが垂れ下がっていた。そばのバス停に停車していた路線バスが、爆発的な放電に襲われ、乗りこもうとしていた若者が死亡し、運転手も負傷した。
犯人からニューヨークに電力を供給している電力会社に脅迫状が届く。ニューヨーク市への送電を50%削減せよ、さもなくば第二の放電殺戮を実行するという内容だった。車椅子の捜査官リンカーン・ライムと彼のチームが捜査に乗り出す。
プロットは巧みで、いろいろなエピソードが最後に連結され、謎が解明される。そのエピソードの中に窮地に陥る二人の捜査官の話がある。一人はFBI捜査官フレッド・デルレイとその大物情報屋ウィリアム・ブレンドのくだり。上司の命令に背いて10万ドルの報酬を先払いしたのに、ブレンドは約束を守らず、連絡を絶ってしまう。窮地に陥るデルレイ。もう一人はルーキーと呼ばれるロナルド・ブラスキー巡査。感電の恐怖から容疑者のアパートの駐車場で交通事故を起こしてしまう。駐車場に荷物をもって入ってきた人にぶつけてしまったのだ。
「ボーン・コレクター」や「007白紙委任状」でもそうだったが、暗いトンネルが犯行現場としてここでも活躍している。確かに暗さは恐怖を増殖する。
また、電気の怖さが伝わってくる。それもあって責任感の強い電気の専門家が何も道具のない中で放電を防ごうと努力するエピソードもある。
犯人と動機がちょっと唐突な感じがする。電力事情に疎いからかもしれない。