科学は普遍的であるという主張に反して、科学者の社会的、専門的な地位がしばしば新しい考え方の受け入れに影響を及ぼすのである。革命的な新しい概念の創始者が、自分の学問領域のエリート社会の中で低い地位にあったり、他の領域からの新参者であった場合、その考えは真剣な検討の対象とはまずなりえないだろう。それが真価においてではなく、その創始者の社会的業績によって判断されてしまうからである。しかし、学問を進歩させる独創的な考えに貢献するのは、たいていその学問領域における確立された教義に洗脳されていない部外者か、もしくは他の学問領域から来た新参者である。この事実こそ、新しい考えに対する抵抗ということが科学史の上で常に問題となる原因なのである。
(七章 論理の神話│W. ブロード・N. ウェード著, 牧野賢治訳:「背信の科学者たち」Betrayers of the Truth: Fraud and Deceit in the Halls of Science, p175, 化学同人, 1988)
(七章 論理の神話│W. ブロード・N. ウェード著, 牧野賢治訳:「背信の科学者たち」Betrayers of the Truth: Fraud and Deceit in the Halls of Science, p175, 化学同人, 1988)