花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

大寒の養生

2016-01-21 | 二十四節気の養生


大寒(1月21日)は、二十四節気の第24番目の節気である。二十四節気の最終の節気であり、冬でありながらも次には立春の到来を迎え、冬と春が隣り合わせに接する時節である。なお寒冷厳しく乾燥する気候が続くので普通感冒、インフルエンザなどを惹起しやすく、幼小児、老年、病後・術後、過労の方々はくれぐれも御自愛頂きたい。気温が降下する早朝や夜更けの不要な外出は控えるべきで、昼間の外出時にも寒風の暴露を防ぐための衣服の工夫を怠らず、屋内にあっては室内保温とともに換気を行い、40%以下とならない室内湿度の維持が必要となる。さらに「早臥晩起」で日が暮れたら休む、日が昇ってから起床することが基本となる。日中の室内外での運動は、頑張り過ぎて体内の陽気を妄動させ消耗することを避けねばならない。いまだ冬の基本である貯蔵の「蔵」を外してはならないのである。
 風邪(かぜ)は風の邪と書くが、「風」は元来自然界の六気に含まれる気であり、この大寒の次に来る春を支配する気である。そして外感病邪の病原因子となる場合は、風邪、寒邪、暑邪、湿邪、燥邪、火邪の中のひとつの邪が「風邪(ふうじゃ)」である。「風邪」が起こす病気は春に多いが春以外の季節でも発症する。「風邪」の性質は、まず陽邪で昇発する作用があり、開泄(腠理の汗腺を開き発汗させる)を起こし、「善動不居」(病邪の作用部位が変わる)で、昇発・向上・向外の方向性(身体の陽位である上半身、頭面部を侵襲する)を示す。さらに「善行数変」(病変部位および病態が変化する)、「風勝則動」(痙攣、不随運動、めまいなど、全身・局所の動揺、異常運動を起こす)の性質が挙げられる。また「風者百病之始也」、「風者百病之長也」と記された通り、外感病(急性熱性疾患)における先駆けとなる先導者であり、寒、湿など他の邪気と連携して侵入する扇動者としての性質がある。風邪(かぜ)から始まり次々と他の病気が起こってきた様な御経験がこれまでにおありではないだろうか。風邪に続いて二次感染などの合併症が惹起される、あるいはすでに療養中の他領域の疾病が悪化することがある。また進行に従い他症状や所見が出現するが、当初は風邪様の前駆症状から発症する疾病経過を示す全く別の疾患もある。たかが風邪(かぜ)、されど風邪なのである。
 ところで「風」に限らず六気すべてはもともと天然自然を主る気である。自宅や職場をいくら人工的に作り変えても、人体を取り巻く生活環境からその影響を完全に消し去ることは出来ない。すべからく他の病原因子も同じである。大寒の最後にあたり黄帝内経素問遺篇の以下の言葉を締めくくりとしたい。
「不相染者, 正気存内, 邪不可干, 避其毒気。」(正気が充実していれば、外邪の侵入は起らない、感染も発症も防げるのである。)

うつし世の冷たき風を入れぬことこれをわが家の掟とぞする     冬夜沈吟 吉井勇






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