才能のない者は芸術の世界では辛抱されるわけにはいかないのです。この男は物事を深く感じもしましたし、感激をもって芸術を愛しもしました。けれども、芸術のほうではこの男を愛してくれませんでした。――舞台監督の鳴らすベルが鳴りひびきました。――大胆に勇気凜然と主人公登場、と役割書には書いてありました―この男は、いま自分をあざけり笑った見物人の前に出なければなりませんでした。―
(第十九夜│ハンス・クリスチャン・アンデルセン著, 矢崎源九郎訳:「絵のない絵本」, p51-53, 新潮社, 1970)
Aber Stümper dürfen nichit in dem Reiche der Kunst geduldet werden. Er fühlte tief und liebt die Kunst mit Begeistetung, aber sie liebte ihn nichit.
――Die glocke des Regisseurs ertönte; ―― und mutig, stand in der Rolle, tritt der Held vor ―vortreten sollte er vor ein Publikum, dem er zum Gelächter war. ―
(Neunzehnter Abend.│Hans Christian Andersen: Bilderbuch ohne Bilder, p27, CreateSpace Independent Publishing, 2014)
<蛇足の独り言>人は永久機関ではない。外部からのエネルギ―供給が得られなくとも、壮大なる片思いの回転に終わるとも、それでも天から緞帳が下りるまで廻る、廻り続けねばならない。