うかうか瓢箪
《うかうか瓢箪》(金工作家・小原ゆかり先生作)は、夏の風趣溢れる瀟洒な銀製菓子切である。京都・大徳寺四百三十五世、大綱宗彦和尚御歌にある言葉 “うかうか”を瓢箪の蔓に見立て、うかに「有閑」の意をも含む意匠とのことである。「忙中閑」、「忙裡偸閑」、「忙応不及閑」、「忙総不及閑」等々、様々に言い回された語句中“閑”の言意は深い。以下は大綱和尚「瓢図」の自画讃である。
瓢、瓢、汝真瓜の位もなく、西瓜の暑をはらう徳もなし。しかれど気は軽く、中むなしくて無欲なれば、仙人も汝を友として、酒を入れて腰に携え、あるいは駒を出して楽しめり。汝瓜の類にして、包丁の難にあはざるは智也。鯰を押えてのがさしむるは仁也。羽柴公の馬印となりて強敵をくだくは勇也。汝、性は善なりというべし。
うかうかとくらす様でも瓢たんの胸のあたりにしめくゝりあり
(「大徳寺墨蹟全集 第三巻」,p178-180 )
(「茶人のことば」, p209-210)
参考資料:
井口海仙著:「新版 茶人のことば」, 淡交社, 1998
築達榮八編:「大徳寺墨蹟全集 第三巻」, 毎日新聞社, 1986
芳澤勝弘著:「瓢鯰図の謎」, ウェッジ, 2012