冒頭写真は、中央卸売市場入荷翌日の拙宅到着から九日を経た花菖蒲である。すでに一番花が終わり二番花の蕾が膨らみ始めている。自宅での生け花はその都度、入手した一枝一花一蕾全てを無駄にせず、差し替え挿し直し最後の一杯まで生け納めるのが習いである。
杜若、花菖蒲ともに花茎先端の肉厚の肉穂花序(にくすいかじょ)が次々と花をつける。しかし切花延命剤を用いても、花器の中で二番花を拝むことは必ずしも容易ではない。日数を経れば経るほど、花序から顔を覗かせ色付いてきた蕾が、明日には花開くと思う日になり急に頽れ萎む機会が増える。地を離れ陽の恩なく人為的な環境下、花一輪が咲くという営みはさほどまで過酷である。もちろん野に在るとも生命を繋ぐ峻厳さは同等であろう。この花を咲かせんと最期、力尽きるまで粛々と其処で努める。果たして私はその様な生き方が出来るだろうか。