花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

本棚・其一│紙本と電子書籍

2022-10-01 | 日記・エッセイ


医療器械は勿論、電子カルテやファイリングソフトが載ったPCなど、昨今の医療業務はデジタル機器の利用なくして完遂不能である。だが自分の性根はどこまでもアナログである。電子書籍リーダーの携帯性、用語検索における便利さを日々痛感するものの、本と自分との間に端末が介在する隔靴掻痒の感には未だに馴染めない。紙本それぞれの嵩、厚みや質感、纏う装丁の意匠など、読み手の五感にからむ強調因子を欠く為なのか。ダウンロードした“どの本”を開いても、没入の遥か手前で同じ顔の金太郎飴データを眺めている気分が続き、原本が胚胎する千差万別の世界に全身全霊をもって埋没出来ない。
 文庫本や単行本に限らず、経年変化で色褪せた背表紙が並ぶ本棚を見れば、整理をさぼるがゆえの偶然の並びから、考えもしなかった新たな閃きや連想が生まれることがある。そして再び手に取れば、挟んだ付箋の束や余白の書き込みから、かつての熱い時代がまざまざと蘇える。