花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

花に鐘 道成寺│日本花図絵

2022-02-08 | アート・文化

花に鐘 道成寺│尾形月耕「日本花圖繪」明治廿九年

(シテ)春の夕ぐれ。来てみれば(地謡)入相の鐘に花ぞ散りける。花ぞ散りける花ぞ散りける(シテ)さる程にさる程に。寺々の鐘(地謡)月落ち鳥鳴いて霜雪天に。満汐程なく日高の寺乃。江村の漁火。愁ひに對して人々眠れば好き隙ぞと。立ち舞ふ様に狙ひ寄りて。撞かんとせしが。思へばこの鐘恨めしやとて。龍頭に手を掛け飛ぶとぞみえし。引きかづきてぞ失せにける。
(「道成寺」, p三-四)


楓橋夜泊 張継│「唐詩選畫本」
月落烏啼霜滿天 江楓漁火對愁眠 姑蘇城外寒山寺 夜半鐘聲到客船

昔の人は清姫をあられもない女と考えたかもしれないが、この絵巻をみていると蛇になる女に至純の切迫があり、追いまくられて逃げる男は、僧らしい尊厳のカケラもない。(中略)長年の修行でどのような高徳を得ていたかはしらないが、なぜ女の恋と対等の話ができなかったのであろう。その折伏(しゃくぶく)ができない時は一緒に悲運をともにする覚悟がきまらなかったのであろう。覚悟を持つ者と持たぬ者との美醜が歴然としている。
(道成寺│「能つれづれ こころの花」, p57)

参考資料:
廿四世観世左近著:観世流大成版「道成寺」, 檜書店, 2016
石峯橘貫書画:「唐詩選畫本 七言絶句続編」天明戌申再刻版, 嵩山房
岡部伊都子著:「能つれづれ こころの花」, 檜書店, 1999