花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

巧未能勝拙、忙應不及閑│忙と閑・其三

2021-06-04 | アート・文化


  宿竹閣   白居易
晚坐松簷下 宵眠竹閣閒
清虚當服藥 幽獨抵帰山
巧未能勝拙 忙應不及閑
無勞別修道 卽此是玄關


  竹閣に宿す
晩に松簷(しょうえん)の下に坐し、宵に竹閣の閒(あひだ)に眠る。
清虚にして 藥を服するに當(あた)り、幽獨にして 山に歸るに抵(あた)る。
巧は未だ拙に勝ること能はず、忙は應(まさ)に閑に及ばざるべし。
別に道を修むるを勞する無く、卽ち此(ここ)ぞ是れ玄關(げんくわん)
(白氏文集巻二十 律詩│「白氏文集 四」, p377-378)
(全唐詩 巻四百四十三)

*玄關:玄妙の道に入る関門。
*玄:象形は糸たばを拗(ね)じた形、黒く染めた糸。緇(し、黒色、黒衣)に近く、その色相は幽遠であるので幽玄といい、幽遠の意に用いる。(「字通」,p455-456)
*此两者同出而異名、同謂之玄。玄之又玄、衆妙之門(此の两者同じきより出でて名を異にす。同じきもの之を玄と謂ふ。玄の又玄、衆妙の門):天地と万物は同じ一つの道から出ながら、天と地というように名を異にしているし、また天地という同じ親から出ながら万物はそれぞれ名を異にしている。このように同じ所から異なったものを産み出している不思議な働きをしているもの、これを玄という。この奥深いかすかな所、これがさまざまな微妙な現象を産み出す門なのである。(老子道經・禮道第一│「老子 荘子上」, p11-13)
*巧未能勝拙:大直若屈、大巧若拙、大辨若訥(大直は屈するが若く、大巧は拙なるが若く、大弁は訥なるが若し):真にまっすぐな者はかえって一見曲がっているように見え、真に巧みな者はかえって一見下手なように見え、真に雄弁な者は一見訥弁のようにみえる。(老子徳經・洪徳第四十五│「老子 荘子上」, p81-83)

参考資料:
岡村繁著:新釈漢文大系「白氏文集 四」, 明治書院, 1990
阿部吉雄, 山本敏夫, 市川安司, 遠藤哲夫著:新釈漢文大系「老子 荘子上」, 明治書院, 1975
蜂屋邦夫訳注:岩波文庫「老子」, 岩波書店, 2012
白川静著:「字通」, 平凡社, 1997