花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

桃紅李白薔薇紫│其の二「偈」

2019-02-22 | アート・文化

桃紅李白薔薇紫、問起春風總不知│「句双紙假名抄」, 雄松堂

  偈三十五首 其十五 宋・釋祖珍
向上一路、千聖不傳。恁麽會得、十萬八千。桃紅李白薔薇紫、問著春風總不知。
向上の一路は千聖も傳へず。恁麽に會得すれば十萬八千。桃紅李白薔薇紫、春風に問著すれども總に知らず。
本詩は『全宋詩』、『五灯会元』等に収載。偈(げ)、偈頌(げじゅ)は、経典の中で韻文の形式で仏徳を讃え教理を説いた詩句であり、または大悟の心境を表現する禅詩の総称である。

鼓山祖珍禅師(南岳下十五世/臨済宗黄龍派/上封才法嗣)
「上堂、尋牛須訪跡、學道貴無心。跡在牛還在、無心道易尋。竪起拂子曰、這箇是跡。牛在甚麽處。直饒見得頭角分明、鼻孔也在法石手裏。上堂、向上一路、千聖不傳。卓拄杖曰、恁麽會得、十萬八千、畢竟如何。桃紅李白薔薇紫、問著春風總不知。」
(五灯会元巻十六│「訓読 五灯会元」下巻, p148-149)

慧林懐深禅師(青原下十三世/雲門宗/長蘆崇信法嗣)
「上堂云、紅杏枝頭小雨乾、東風特地作春寒。祖師門戸無遮障、祇要時人著眼看。遂竪起拂子云、還會麼、桃紅李白薔薇紫、問著春風總不知。」
(慈受深和尚焦山語録│「慈受懐深禅師廣録」, p44)


第九 返本還源│徳力富吉郎・販刻「十牛図」, 竹僊堂

参考文献:
柴山全慶編:「禅林句集」, 其中堂, 1972
村口四郎所蔵 室町末期寫「古典籍覆製叢刊 句双紙假名抄」(川瀬一馬解説), 雄松堂, 1974
山田俊雄, 入矢義高, 早苗憲生校注:新日本古典文学大系「庭訓往来 句双紙」、岩波書店, 1996
能仁晃道著:「訓読五灯会元」全三冊, 禅文化研究所, 2006
上田閑照, 柳田聖山著:「十牛図 自己の現象学」, 筑摩書房, 1982
懐深撰, 陳曦點校:雲門宗叢書「慈受懐深禅師広録」, 上海古籍出版, 2015