地域経済 活性化の道
紘一郎雑記張
西村好正早稲田大学院教授
一人4万ドル(GDP)稼げる地域経済構築への道
◇地域経済の衰退
昨年3月に大学を定年退職し、4月から西日本の中小企業をサポートする新しい仕事に取り組んでいる。その関係で地方都市を訪れる機会が増えたが、今更ながら認識不足を思い知らされることが多い。
永年、東京にしがみついて活動し、グローバル化の流れの中で外向けの問題意識ばかりが強かったことに度々反省を迫られている。
最近では全国的な関心を呼ぶことの少ない地味な地方都市を訪れても、それぞれの地域で歴史的に形成されてきた文化や経済力の蓄積を肌で感じる。
それと同時に、日本経済が、ピークを過ぎつつある兆候が、地域社会の末端から随所に現れていることを痛感させられる。
ずいぶん前からの現象ではあるが、興隆するアジアへの「経済シフト」は地方の生産拠点から始まった。製造業の基盤を失うと、サービス業の根が枯れる。経済力が弱まると、文化や風物も勢いを失う。
アジアへの工場移転は、かつて欧米の製造業が競争力を失い、日本が世界の工場になった頃と本質的には同じ現象である。
私は当時、ヨーロッパの大使館で勤務していたが、伝統ある社会の崩壊に対するイギリス人やフランス人の焦りや怒りは、嫌日感情としてたびたび現れた。
当時われわれは、欧米人ができることは、日本人にもできることを示したに過ぎない。それを非難されるいわれはない。
しかし、市場を奪われた欧米企業は、日本人を「ウサギ小屋に住む働き中毒」の文明生活破壊者だと批判した。彼らには、日本人のワーク・ライフ・バランスは、非人間的だ、そうでなければ、欧米人が日本人に負けるわけがない、との自負心があったのである。
◇地域経済の再構築
今では日本人の所得水準は、欧米人並みとなり、労働時間は、米国人より短い。若者は、3K(危険、汚い、きつい)の仕事を嫌がる。それに対し、他のアジア人の労働意欲は高く、技術水準は劣らなくなった。高度の熟練を要する仕事は、タイ人に教えてもらわなければならない。
―続く―2部明日投稿