第2部 安部総理を引きずり下ろしたい人達
紘一郎雑記帳
ところが、安倍首相をなんとか引きずり下ろしたい人は別の考え方をする。
朝日は10日付朝刊で、長崎で被爆5団体と面会した首相のエピソードを紹介した。
被爆団体側は集団的自衛権の行使不要を訴えたのに対し、
首相は「平和国家としての歩みは寸分とも変わらない」と説明。
集団的自衛権の行使について丁寧に説明し、理解を得る考えを示した。
面会終了後、被爆者の一人が「納得していない」と声をかけると、
首相は「見解の相違だ」と応じたという。
まさに「見解の相違」としか言いようがない。
確信的に反対する人は、何を説明しても反対するだろう。
政府の説明不足という指摘もあるが、難解な安全保障の仕組みを理解しようとする
国民側のいささかの努力がなければ、理解も深まりようがない。
誤解がないように付言すると、一般の人がどんな考えや政治的スタンスを
持っていても基本的に自由だ。すべての人が同じ考えになるはずもない。
問題は、特定の言動を安倍政権批判のために意図的に引用する報道のあり方だ。
先ほどから引用している記事は、いずれも「安倍首相が悪い」とは書いていない。
「安倍首相に怒っている人たちがいる」という紹介なのだ。
自分たちに都合の良い意見を重点的に紹介し、
一般の人が首相を批判しているとの構図になっている。
東京、共同、朝日は、なぜ集団的自衛権が必要かを丁寧に説明する記事を
書いていないと感じる。
行使不要、容認反対ありきだからだ。ゆえに行使容認に関して
「『戦地に国民』へ道」(東京、5月16日付朝刊)という意味不明で
扇動的な見出しを掲げた記事を1面に大々的に掲載する。
ちなみに、この記事を掲載した東京新聞は
「優れた言論・報道活動に贈る今年の日本ジャーナリスト会議賞」の大賞を受賞したという。
丁寧に自ら同日付の1面で紹介していた。
その大賞なるものにどれだけ意味があるのか知らない。全く優れていると思わないし
「見解の相違」を感じるが、同意できない方がおかしいのだろうか。
こういうことを書くと、「お前こそ、とにかく安倍政権を存続させたいのだろう」との
批判があるだろう。安倍首相であろうがなかろうが、日本や世界の将来を考え、
きちんとした政治を行う首相ならば、誰でもいい。ただ、
少なくとも3年3カ月の民主党政権の首相はそうではなかった。
民主党政権を振り返ってみよう!!
16兆円の予算のムダを削減するなどの政権公約は守らず、
政府・与党として決めたことを民主党の議員が守らない。
首相や閣僚は北方領土や竹島の現状を「不法占拠」と呼ばず、
ロシア、韓国の大統領にそれぞれ上陸を許した。
尖閣諸島海域での中国漁船衝突事件に関する船長釈放の一件もしかり。
こうした問題を日々記事で追及してきた。
いずれも後に民主党政権の枢要にいた人たち自らが「失敗」と
認定したことばかりで、「ためにする批判」ではなかったと自負している。
民主党は海江田万里代表の下、安倍政権への対決色を強める方向にカジを切った。
集団的自衛権については3月に「行使一般は容認しない」との党見解をまとめた。
前原誠司前国家戦略担当相らは反発したが、ひとまず党見解を出した。
「行使一般は容認しない」は、「行使そのものは否定しない」との解釈を生む余地を残した。
党内の保守系に配慮した結果だ。それが8月5日の常任幹事会で、
海江田氏が「現時点では行使は必要ない」に変更すると宣言し、そのまま党見解となった。
海江田氏は自らの進退が焦点となった7月31日の両院議員懇談会では
「行使一般は容認しない」が党見解だと強調していた。
続投が決まった直後に見解を変更したのは、懇談会で表明すれば批判を
受けるのが必至だったからだろう。
3月の際は全所属議員が参加できる党安全保障総合調査会と憲法総合調査会の
合同会議を開いて積み上げた見解だったが、常任幹事会であっさりと覆した。
実に強引だ。さらに今度は「現時点」を外す方向で再び変更を検討している。
民主党政権の欠点は「バラバラ感」だと海江田氏自らが認識しているが、
今後もバラバラ感が出るのは間違いない。
海江田氏が見解変更を宣言したのは、安倍政権への対決色を強めたいからだ。
海江田氏を党内で支える中心がリベラル系であることも影響している。
「とにかく安倍首相を引きずり下ろしたい」のだ。
しかし、集団的自衛権の行使が不要だとして、その代替策を民主党は描き切れていない。
3年3カ月とはいえ、政権を担当した教訓や反省はあるのだろうか。
「何でも反対の野党」にカジを切っているようにしか見えない。