血の海 中国漁船凶悪化
違法操業船員に切られ韓国隊員死傷
紘一郎雑記張
黄海の韓国の排他的経済水域(EEZ)で12月12日午前7時ごろ、違法操業中の中国漁船を取り締まっていた韓国海洋警察庁の特殊部隊員2人が中国船員にガラス片で切り付けられ、41歳の男性隊員が出血多量で死亡、33歳の男性隊員が負傷した。海洋警察は漁船を拿捕して乗組員9人を拘束。韓国外交通商省の朴錫煥(パク・ソクファン)第1次官は駐韓中国大使を庁舎に呼び、抗議した。韓国EEZではこれまでも中国漁船員が取り締まり中の係官を襲う事件が頻発。最近は中国漁船の組織化、武装化が進んでおり、東シナ海でのEEZに関して中国と主張が対立している日本にとっても看過できない事態だ。
■まるで被害者答弁
韓国の聯合ニュースによると、海洋警察の警備艇はこの日早朝、黄海の大青島の南西85キロ沖で違法操業中の中国漁船を発見。うち1隻に特殊部隊員16人が警備艇のボートから乗り移り、船員らを拘束し始めた。その際、船長とみられる男がガラス窓を割り、ガラス片を振り回した。死傷した2人は防刃チョッキを着ていたが、保護されていない部分を切り付けられたという。
抗議を受けた駐韓中国大使は遺憾の意を表明したが、北京で記者会見した中国外務省の劉為民報道局参事官は「われわれは韓国が中国漁民の合法的権益を十分に保障し、人道主義に基づき対応するよう希望する」などと逆に被害者であるかのように答弁。その上で、「中国側としては主管部門が中国漁民への教育や出漁する漁船の管理を強化し、越境捕獲や違法操業を制止するなどの措置を何度も講じてきた」と語り、中国としても努力してきたことを強調した。
事件を受け韓国海洋警察庁は12日、銃器使用条件を緩和すると表明。これまで隊員に危害が加えられた場合に限っていた実弾発砲を、今後は違法操業船に接近する段階から積極的に行うと警告した。
■おのなどで武装
黄海の韓国EEZはワタリガニやイシモチの良好な漁場で、これまでも中国漁船の違法操業が多かった。2001年に漁業協定が結ばれ、今年は1700隻に限り操業が許可されている。しかし、実際に周辺海域で活動する中国漁船は1万隻を超えるとみられ、最近は船団を組み、組織的に違法操業する例が目立っている。船員は鉄パイプやつるはし、おのなどで武装し、取り締まりに当たる韓国係官の負傷者はこの5年間で30人以上に上る。昨年12月には中国漁船が海洋警察の警備艇に体当たりし、中国側の2人が死亡・不明となったほか、韓国側の4人が負傷する事件が発生。この時は、最大の貿易相手国である中国との外交関係を配慮した韓国当局が中国船員を不起訴としたため、韓国内では政府の対中弱腰外交に批判が集中した。
■拿捕件数、昨年上回る
その後も中国漁船の違法操業や暴力行為は続き、今年に入って韓国当局は12日までに、違法操業を理由に中国船を中心とした外国漁船472隻を拿捕。昨年1年間の330隻を既に43%上回っている。
一部の漁船には中国海軍の兵士が漁民に姿を変えて乗り込んでいるとの情報もあり、中国国内で軍強硬派の発言力が勢いづいている事情を背景に、偶発的事件から日中、中韓の軍事的衝突にエスカレートする危険性を指摘する声すら専門家の間では上がっている。