国債売りのオオカミ少年 第1部
紘一郎雑記張
2011年は消費増税論議で明け、復興増税に引き込まれ、消費増税で総仕上げとなりそうだ。「オオカミ少年」こと財務官僚に翻弄された極めて特異な年を戯画化してみた。
俗に言う「オオカミ少年」のネタ元はイソップ寓話(ぐうわ)の「羊飼いの悪戯(いたずら)」編である。羊の群れを遠くまで追う羊飼いが「狼が羊を襲いに来たぞ」と大声を出す。村人たちは驚いて駆けつけてきたが、狼はどこにもいない。羊飼いはそんな騒ぎを2度も3度も引き起こした。ところがある日、狼が本当に来た。羊飼いがいくら叫んでも村人は助けに行かない。羊は全部食べられてしまった。
イソップ寓話はまた、「羊飼いの悪戯」とは別に「狼と羊飼い」編も盛り込んでいる。こざかしい羊飼いが狼に羊の見張りを委ねたために大半の羊が引き裂かれた。イソップは欲張りに大事なものを預ける人は奪われて当然、と結んでいる。
■策略にのる野田村長
これら2つのイソップ話をベースに今、私たちがはまっている日本の経済危機を以下のようにドラマに仕立ててみる。羊飼いは財務省あるいは財務官僚、羊は日本国民、あるいは家計、企業、いわば日本経済そのものである。村は永田町という政界、村人たちは政治家、そして狼は国際投機勢力、あるいは強欲きわまりない金融資本と言い換えられよう。
羊は村の財産なのだが、羊飼いは実権を握っており、「税」の名で総称される牧羊犬が大好きである。忠実で、羊飼いの仕事を楽にしてくれる。犬の数が多ければ縄張りを拡張できる。羊たちも犬に恐れを抱いて従順になる。そこで牧羊犬の数を増やしたい、より大型の犬も欲しい。だが、村の承認がいる。
羊飼いは一計を案じた。放牧地の垣根を取り払う「グローバリゼーション」のせいで、狼は世界中からあっという間に集まってきて、日本国債マークの付いた日本経済という羊をめちゃくちゃにしてしまう、と村を説き伏せることにした。折りも折り、はるか海のかなたのギリシャ、イタリアなど欧州の羊たちは狼に襲われて大騒ぎだ。「ギリシャ、イタリアを見ろ、狼が来るぞ。もっと犬が必要だ」と騒ぎ立て、永田町村の連中を慌てさせた。
村では、野田佳彦村長らが財務官僚の羊飼いの言うことなら何でも間違いないと信じている。羊飼いの策略に乗ってまんまと村長に上り詰めたことに味をしめたからで、村長の補佐役たちは羊飼い差し回しの官僚や官僚上がりで固めている。
東日本大震災・福島原発事故という史上未曽有の大災害で羊の多くが傷ついたのだが、構いもしない。まずは所得税、住民税という種の犬を増やし、次には消費税という種の超大型犬を導入する。
これに対し、あのうさんくさい羊飼いにだまされるな、という声が村人の間にある。羊飼いの言いなりになる村長に反発する村人たちの数は民主党という名の村長グループ内部でも増え始め、反村長派の自民党などを含め党派を超えて次第に増えそうな気配だ。
(特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS参照)
続く