山クジラの田舎暮らし

岩手県北の田舎に生息する「山クジラ」です。定年後の田舎暮らしや趣味の山行きのことなど、発信していきます。

『等伯』上=安部龍太郎著

2013-02-03 09:45:14 | 読書

 直木賞を受賞した安部龍太郎の『等伯』の上巻を読んだ。『等伯』は画家・長谷川等伯を主人公ににした小説である。この本は久しぶりに訪れた、町立の大野図書館に「新刊」として並んでいたのを借りだした。『等伯』は日本経済新聞の朝刊に2011年1月22日~2012年5月13日まで連載されたものを、日本経済新聞出版社より2012年9月に刊行された。

 上巻では、長谷川又四郎信春(後の等伯)が、実家の兄・奥村武之丞に押し付けられ、畠山の使者として朝倉への密書を届けるために一乗谷まで出向くことになるが、様々な行き違いがあり、この情報が敵方に漏れ、長谷川の家が襲われ養父母が自害して果てる。それで長谷川家を追い出されるが、妻と子を連れて京へ出ようとする。時は戦国末期、信長が勢力を強め浅井、朝倉などと北陸地域で争う。春信は、妻子を寺に預け山越えで京に向かおうとしたが、信長の比叡山攻めに巻き込まれ、危機に陥る。「物事の本質を見極めたいという絵師の性と、荒ぶる武家の血が、妻子とともに苦難の道を歩ませる。そして、本能寺の変が運命を変える」と本の扉裏に書かれているとおり、絵師・長谷川等伯の、運命に立ち向かう姿を描いて迫力満点である。上巻は秀吉の天下となり、信春にも自由が訪れる。前の関白・近衛前久の「絵師は求道者や。この世の名利に目がくらんだらあかん」という言葉で締めくくられている。引き続き、下巻を読み始めた。