うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読む25

2010-02-17 06:55:31 | 日記

風太郎氏の身内に戦死者出る<o:p></o:p>

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 二月十三日() 曇<o:p></o:p>

 午後山辺中佐より「動員」と「国民総動員」について聞く。<o:p></o:p>

 二月十四日() 曇後晴<o:p></o:p>

 午前三時、十時B29一機ずつ来る。<o:p></o:p>

 河江伯母より来書。大阪の孝叔父、昨年二月八日ニューブリテンにて戦死せられしとのこと。太田の四郎兄フィリッピン沖にて昨年十一月十八日行方を絶てりとのことを伝う。<o:p></o:p>

 すでに吾は河江の勇兄をガダルカナルに失い、諸寄の勇夫叔父をフィリッピンに、泰夫叔父をビルマに失う。(身内の人たちみな軍医といいます。軍医が戦死とは、いかに戦局が悪化の一途を辿っているか一目瞭然といえます)<o:p></o:p>

 吾にとりてその性親しく、その職近し。その人を思い、戦争と運命なるものを偲びて、校庭の白き冬日の中に立ちつつ、悵然として個人と祖国について黙想せり。<o:p></o:p>

 爆弾の落つるを一町あまり離れてきけば、ちょうどガードの下に立ちて頭上を走る過ぐる電車の轟音をきくが如しと。その間三十秒。ああっと思う間にぐわあんと大地鳴動する由。<o:p></o:p>

 「屍体貯存法」を読む。<o:p></o:p>

 二月十五日() 曇午後晴<o:p></o:p>

 午前十一時より月例防空演習。午後一時半、八時B29来。<o:p></o:p>

 夕食時の話。いま米一升十五円、炭一俵七十円、酒一升百四十円、砂糖一貫四百円、卵一個二円とのこと。(作者はこれらの値段を見、若者らしく言ってのけます。このうち酒や卵は贅沢品であり、これを買って暴利をぼられても自業自得であると)<o:p></o:p>

されど米一日に二合三勺、野菜一日に十匁のみにては、この限りなき民衆、限りなき歳月の間「闇」海の夜霧のごとくたちのぼり、全生活を覆わんとするも是非なきなり。これを責むるは易く、これを救うは難し。その心に怒るは易く、その具体的生活を救うるは難し。<o:p></o:p>

(この言葉、まさに繰り返しになりますが、営々と続く国策・教育に洗脳された一学徒の、偽らざる胸奥に巣くう信念と見ます。作者はなおも続けます)<o:p></o:p>

この議会にて、国民の生活上闇の占むる割合を諸公知れるやと一議員質し、左様なことは研究せずと大臣答えたり。ああかくのごとき大臣国を滅ぼすなり。何たる冷淡、何たるとぼけ、国民の口にする大部は闇のものならずや。日々に闇を嘆く声聞かれざる日ありや。「最低生活の確保」これぞ日本の国難を救う根本の問題なり。<o:p></o:p>

(このやり取りの模様、現在の政情・国情に照らして大差ないような気がしてくるから不思議であります)。25<o:p></o:p>


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