観測にまつわる問題

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中華人民共和国が中華民国(台湾)を自国領とする理屈は何か?

2023-08-10 13:32:39 | 外交安全保障
麻生氏訪台に中国反発「もはや清国政府ではない」(ANNnewsCH 2023年8月9日)



>7日から9日までの日程で行われた自民党の麻生副総裁の台湾訪問について、中国外務省が「中国はもはや清国政府ではない」と歴史を持ち出して非難しました。

中華人民共和国が(台湾を日本に割譲した)清国ではないのは当たり前ですから、清を継承しない=台湾は割譲してないという主張なのでしょうか。しかし、清の継承国でないなら、台湾を併合する理由が無くなりますね(それとも明の継承国、あるいは「李自成の国」の継承国と主張するのか知りませんが)。南シナ海も然り。建国時の領土だけ国内を主張してくださいということになります。建国時の領土の外へ進出したら、侵略になるでしょう。まぁ(清は継承しているが)下関条約当時の我々ではないぞとイキッてみせただけかもしれませんがね。

日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(外務省)

>三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

日本は中華人民共和国の台湾に関する立場を理解し尊重するだけです。台湾が不可分と主張しているのは理解しますが、中華人民共和国の立場をそのままなぞるとは一言も言ってません。

従って中華人民共和国が自分自身で清の継承国でないとするなら、清以前の時代に得られた権利も放棄したと理解するのが通常です。中華民国の継承国家かに関しては、中華民国が存続しているので、中華人民共和国の判断に委ねることは出来ません。中間人民共和国は台湾を支配したことが無く、清の継承以外の権利とは?

中華人民共和国の立場とは清を継承するから、台湾が不可分の領土とする論法のはずです。中華民国は存在しており、中華民国が清を継承していると考えられるのですから、中華民国を倒して継承しなければ、清の権利は継承されないのであって、中華人民共和国が清の継承を主張しないなら、台湾に何の権利も無いというか、反乱軍は中華人民共和国ということになるのではないかと思います。無論、力で正統性を覆すことは可能です。そしてそれをやるとロシアと同じになるでしょう。一体全体、中華人民共和国は清を引き継がずに、台湾等に対して如何なる権利を行使する気なのでしょうか?

ポツダム宣言第八項ですが・・・

>「カイロ宣言」の条項は,履行せらるべく,又日本国の主権は,本州,北海道,九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし

カイロ宣言・ポツダム宣言の当事者は中華民国なのであって、中華人民共和国は中華民国を継承していません。中華民国はそこにあるからです。これを覆す論法は中華人民共和国が清の継承国(だから中華民国は不法)しかないはずですが、中華人民共和国自身がその立場を放棄すると言います。そうすると唯一の清の継承国であるところの中華民国が正統ということになるでしょう。反乱軍が実力で勃興することは有り得ますが、正統性を主張することは出来なくなります。

そしてそもそもポツダム宣言第八項は日本の立場を述べたものであって、それを堅持するということは、単に日本の主権はアメリカ・イギリス・中華民国(ソ連は署名してない)が決めた諸小島に局限するということに過ぎないのであって、中華人民共和国は全く関係ありません。そしてその諸小島とは、沖縄と小笠原のことなんですね。尖閣が沖縄に含まれるのかが問題ですが、尖閣の領有を中華民国が主張したのは1971年以降、沖縄返還は1972年ですから、中華民国が尖閣の領有を主張するのは、ギリギリ時間内で、アメリカとの間で交渉がつかず、施政権だけ日本にあるという解釈になるのかもしれません(尖閣の主権が中華民国にあるか、日本にあるかは曖昧)。ただ、尖閣列島遭難 中華民国感謝状 玉代勢孫伴(1920年)(内閣官房)があるので、中華民国が尖閣の領有を主張するにしても、元々日本領だったことは認める必要があるはずです。また中華民国は日華平和条約(1952年)に尖閣の領有を主張しなかったことに関しても理論武装する必要があります(まぁアメリカに預けていただけという論法は有り得ますがね)。

ここで問題は中華人民共和国であって、中華人民共和国は尖閣を台湾省の管轄としています。していますが、1971年以降の主張はタイムアウトでしょう。中華人民共和国は中華民国ではなく、カイロ宣言及びポツダム宣言の当事者ではないからです。つまり尖閣諸島は中華人民共和国の立場から言っても、日本か中華民国に属します。そして中華人民共和国は1969年の地図で尖閣諸島を日本領と認めていますから、中華民国に渡すぐらいなら、日本領でいいやと既に決めているんですね。無論、地図一枚で領有権は決まらないとは言えますが、清の継承国としてもしなくても1971年まで尖閣を日本領と認めていたのは重いです。まぁ清の継承国の方が清が尖閣や台湾を事実上、条約上日本領と認めていたろうとなるかもしれませんが、どちらにしても日本領ですから、その辺はどうでもいいことです。問題は尖閣が日本領か否かというより、清を継承しない歴史と分断された(ただの新興国の)中華人民共和国が中華民国を自国領とする理屈は何か?ということになります。ただイキッてみせたと弁解しますかね。

最後に戦う覚悟発言と「一つの中国原則」に関してですが、いずれにせよ、武力による現状変更には反対と言うことが出来、日本・台湾・アメリカの戦う(攻められる)覚悟を問うことは挑発的でも何でもありません(戦争を抑止し、現状を維持するものであって、平和を愛する発言と言えます)。寧ろ武力による現状変更を否定しない中国が問題ということが出来るでしょう。

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