1.うんこメッセージ
A君はダウン症の男の子
とっても甘えん坊
でも彼の口から
声や言葉は
聞けません
施設入所をして
10年近くが立ち
彼の要求は
一つの行動で
示されるようになりました
廊下に
なにやら怪しげな物体が
点々とつながって
矢印のように
トイレに向かいます
黄色いウンチの
塊が小刻みに
まさしく
芸術に見えるほど
一直線です
廊下の角を
急に折れると
その点々の先に
A君が座って
待っていました
ようやくだね
待ってたよ
そう言わんばかりに
にんまりと笑う
A君の表現です
こういう形でしか
スタッフの
独占ができない
入所施設の
悲しさです
彼の要求は
言葉の代わりに
芸術的な
うんこメッセージを
発明したのです
2.飢えています愛に
お母さん
ぼくを
ほっとかないでよ
ぼくを
抱きしめてよ
K君は
いつも
タオルを
口の中に
突っ込んで
お母さん
ぼくを
心配してよ
ぼくどっかへ
行っちゃうよ
K君はブルースリー
世の中全部が
気に入らない
柱も壁もベッドの足も
蹴りつけている
お母さん
ほらほら
ぼくの足も
背中も首も
血だらけだよ
K君は
アトピー性皮膚炎
かゆいから
かきむしる
血が出るまで
お母さん
見て見て
ぼくの
体中の
血のあとを
K君はいつも
学校から帰ると
靴もシャツもズボンも
ぽいぽいって
脱ぎ飛ばす
お母さん
ほらほら
ぼく風邪を引いちゃうよ
ぼくのほしいのは
お母さんの胸
K君は
畑の軟らかな土を
はだしの足に
踏みしだくのが
大好き
お母さんの
おっぱいのような
やわらかな
足の裏の
気持ちのよい感触