すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

多摩川

2018-04-21 19:57:29 | 自然・季節
 東横線の電車が多摩川を渡る。20秒ほど目の前に開ける、河川敷の緑。20秒間の喜びは大きい。桜が終わって、今は新緑のやわらかな、一年でいちばん美しい季節だ。
 電車の中ではたいてい本を読んでいるのだが、多摩川を渡る間だけは目を上げて外を眺める。前は週に何回かは渡っていたのだが、仕事をやめてからは、ずっと機会は少なくなった。並走する電車があるときなどは、がっかりする。大げさではなく、ささやかな幸せを奪われたような気持ち。
 河川敷はぼくの散歩のコースのひとつでもある。多摩川の駅まで電車で行って、こちら側か、あるいは橋を渡ってむこう側を、上流か下流に向かって歩く。下流に向かうと朝日が目に入るので、たいていは上流に向かって、二子多摩川か、体調の良い時には和泉多摩川まで歩いて、電車で帰ってくる。川岸に近い、人の比較的少ないところを歩くことが多いが、時には気分を変えて、サイクリングコースになっている土手の上を、風に吹かれながら歩くこともある。
 サイクリングも気持ちが良いが、子供の頃はよくしたのだが、家から多摩川までの往復が自転車ではしんどいので、今ではほとんどやらない。むしろ、家から歩く方が良い。
 碑文谷八幡の参道を通って、大岡山の工大の横を通って、呑川緑道、緑が丘駅、奥沢神社、奥沢駅、田園調布駅、多摩川台公園を通って多摩川駅まで、のんびり歩いて約2時間、駅から駅を結ぶ割には緑の多い、静かな道だ。天気の悪い時や体調の悪い時にはどこでも中断して電車で帰って来られるのも良い。
 先日、そのコースの最後の部分を、人生の先達でもある友人と歩いた。
 田園調布の老舗の洋菓子屋「エピ・ドール(金の穂)」のサロンでゆっくりお茶をして、高級住宅街を抜けて宝来公園を下って反対側をちょっと上り返せば、そこはもう多摩川の土手、多摩川台公園の一角だ。多摩川駅に向かって古墳群の続く道の左側つまり北側は明るい落葉広葉樹林、右側つまり南側は暗く茂った常緑広葉樹林だ。
 この地形は、高尾山にもあるが、たったこれだけの土手で気候が違い、植物相が違うのも興味深い
 散歩道の途中には富士山の見えるベンチもあり(その日は見えなかったが)、ぼくはやや難しい相談事を受けたときなど、駅で待ち合わせてそのベンチまで行って話を聞いたものだ。眼下に広がった川面を眺めながら、風に吹かれながら、今の季節なら眼前のつつじの花などを眺めながら話を聞くと、お互いに心を開いて話がしやすいのだ。
 先日はそういう難しい話ではなく、宮沢賢治のことや朗読のことや音楽のこと、彼女の主催している小さな子供クラブの子供たちのこと、などを話しながら歩いた。親しい友人と散歩する楽しみを堪能した。
 彼女は元気いっぱいな人で、ぼくは何時でも元気をもらって帰るのだ。
コメント
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