すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

ミカンの花咲く、海の見える山

2021-04-26 20:55:01 | 山歩き

 退院後2回目のハイキング。久しぶりに山上から海の見えるところに行きたい。下山してから浜辺にも行ってみたい。とすると、今のぼくの体力から言って、大磯の湘南平か三浦半島だ。それで、友人二人と一緒に、三浦富士-武山のコースに行った。最高点の砲台山で204mの低山だ。40年ぶりくらいだ。
 津久井浜駅からミカン畑の中の舗装道路をゆるゆると登ってゆく。ミカンの花が咲いている。ノイバラの垣根もある。

ミカンの花は種類がいっぱいあるのだろうが、それは分からない。

ノイバラ。シューベルトやウエルナーの歌に出てくる赤い野ばらとは別種。

 白い花は好きだ。でも道はかなり長い。前に来た時には駅からほどなくして尾根に取り付いて海が見えたと思うのだが、あれは隣の京急長沢駅からの道だったろうか? 記憶があいまいになっている。
 45分ほどで山道になって、あっという間に二人の友人との間に差がついた。ストックを出し、ゆっくり上る。三浦富士の山頂の手前の階段ですっかり息が上がって、心臓がバクバクする。こんなに体力が落ちているとは思わなかった。下りてきた人に「大丈夫ですか?」と心配される。やっと息を整えて上がる。標高わずか183mだ。岩場の上に祠があってここからはやっと海が見える。西に相模湾。その向こうに雲か陸かと思うように伸びる伊豆半島。富士は霞んで見えない。東には東京湾を挟んで房総半島。南には大島が見えるはずだが、これも今日(昨日)は霞んでいる。この山頂はもっと狭かったように思うが、刈り払ったのだろうか? 手入れの作業をしている人がいた。
 道を続ける。三浦半島は高尾山あたりとは植生が違って照葉樹林帯なので、新緑と言う感じはあまりしないはずなのだが、それでもこの季節は葉が柔らかく輝いていて、落葉樹林帯よりは緑が濃く、これはこれで感じが良いし、懐かしい気がする。
 この季節、自然は一年でいちばん人間に優しいのだ。ぼくたちが安らぎを求めて懐に入っていくと、優しく受け入れて抱擁してくれるような気がする。照葉樹林は日本列島のこのあたりの本来の植生で、300年も放っておくとこの種の森に覆われるのだそうだから、おのずと包容力があるのかもしれない。人間の側も、縄文時代以来この自然の中で過ごしてきた長い無意識の記憶があるのだ。いわば日本人のゆりかごだ。母性と幼年のようなものだろうか。
 途中から道は広がり、平らになり、小型トラックがいくつか来る。作業の人もトラックについてくる。濃い茂みが開けて陽当りのよい展望スペースがあり、眼下にミカン畑と海が広がる。先客がいたのでもう少し進んでわき道に入り、巨大な砲台跡の石組みの穴のそばの草地でお昼にした。
 分岐に戻り、道を続ける。いったん下り、20分ほどで長い階段が現れる。友人たちの姿はすぐに見えなくなり、上の方からはしゃいだ子供の声が聞こえる。山頂は明るい日が射しているらしい。でも天国はぼくには遠い。何度も立ち止まって、荒い息を100回ついて50歩進む。それからまた100回息をして50歩進む。やっと展望台の下に着いた。友人が待っていてくれた。展望台は二段になっていて、あとについて登ろうとしたが、一段目で目が回ってそれ以上登れなかった。気持ちが悪くなったので何とかこらえる。森と畑の向こうに海が広がり、すぐ下にはつつじが咲いているが、楽しんでいる余裕がない。
 帰りは急な坂道だった。逆コースをとっていたら登り切らなかったかもしれない。
駅に戻って海岸に出た。広い石段に腰かけてウイスキーのお湯割りを飲んだ。ウインドサーフィンをしている人たちが大勢いる。あれは気持ちよさそうだが、すごい体力が要るだろうな。子供のころ「ツバメ号とアマゾン号」に出会っていたら、ぼくも山ではなくて海に向かっていただろうかな、と考えた。ヨットは、アルジェリアで少しだけ習ったことがある。
 とりあえず、いまは山登りの体力復活を目指さなければ。このぶんでは夏までにアルプスに行く体力を取り戻すのは大抵のことじゃない。

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2 コメント

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Unknown (ikiikisun)
2021-04-27 20:49:11
「つばめ号とアマゾン号」の話が出ると!私は読まなかったのですが弟がはまって、ヨットに夢中になりました。
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ツバメ号 (樋口悟)
2021-04-28 17:06:41
じつは、津久井浜駅から海に向かう途中(駅のそば)に、「ツバメ号」という名の絵本やさん兼カフェがあたのです。「帰りに寄ってみようね」、と言っていたところ、帰りには「イベント中は入場できません」と言う札が下がって、閉まってい残念!
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