すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

氷の花

2023-08-11 10:07:37 | つぶやき

1万5千発も2万発も
つづけざまに
雑踏と叫喚と熱気の中で
見なくても良い

むしろ
君と二人

たったひとつ音もなくひろがる
光の花を見よう
暗い空を見よう

2万発は束の間だが
たったひとつは
永遠に消えない

ぼくと君の
まぶたの中に
脳の中に

ぼくと君が消えてしまった後も
凍る夜空に
架かり続ける

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2022-12-21 10:37:03 | つぶやき

空が吸い込まれそうに深い
この青はそのまま
宇宙の沈黙の暗闇に
続いている

「言葉はもういらない」と言った詩人は
誰だったろう?
その言葉にひどく反発した
こともあったが
今なら分かる気がする

仮そめの人の形をしてきたが
この形ももういらない
もうまもなく
この陽射しに溶けて

空に帰る

 

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9ガツ30ニチ ヨル

2022-10-02 20:37:17 | つぶやき

オオ人間タチヨ
モウイチド
考エ直シテハクレマイカ
私ニオマエタチヲ
見限ラセナイデクレ
デキルコトナラ私モ
オマエタチトイッシヨニ
コノ星デ歳ヲ重ネテユキタイト
思ッテイタノダ

(マア実サイニハ
私ハコノ星ノスベテヲ
見下ロシテイルダケナノダガ
ソレデモ)
私ノツクッタモノタチガ
争イモナク幸福ニ
暮ラシテユクノガ
私ノ喜ビデモアッタノダ

私ガ手ヲ下サズトモ
オマエタチハ自ラノ上ニ
火ト硫黄ヲ注ゴウトシテイル

人間タチヨ
モウイチド
考エ直シテハクレマイカ
コンナ事ハモウ
終ワリニシヨウ

 これはまあ、02/27の「ヒルサガリ」の続きと言っていい。あの後にメモしたものを投げ出しておいたのだが、先夜のニュースを見ているうちにまた取り上げてみる気になったものだ(私ハコンナモノヲ/書キタクハナカッタノダガ)。
 前のものは地球の環境危機を念頭に置いていたのだが、今回は、ロシアの留まるところを知らない暴挙に心を絞めつけられている。

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羽化

2022-09-08 21:18:29 | つぶやき

朝早く
まだ薄暗い巣の中で
また意識を取り戻す
また
羽化の時を耐えねばならない

あたりは白い靄に閉ざされている
体はだるく
記憶は途切れたまま
どろりとした緑色の液体が詰まっただけの
白い袋の残骸を
体にくっつけたまま

もう少しこのまま待てば
きっと 体に力が戻り
頭もはっきりするだろう
それまで 反転しながら
待たねばならない

光が甦り
靄が晴れ
鳥が囀り
新鮮な風が吹くだろう

風こそが救いだ

そう思って幾度
目覚めたことか
幾度
朝を繰り返したか

皮膚がねばねばと
白い糸を引いている
その糸に逆らって
上体を起こそうとする
そしてまた崩れる

もうとっくの昔に
繭は褐変し
縮んで乾涸びているのに

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ホーム

2022-07-12 14:04:15 | つぶやき

いま確かに 視野の端の
天空に架かる橋を
白いものが通って行った

人の魂か
天使か
幻か

急いで振り向いたが
渓谷に橋は無かった

秘境の駅のホーム
夏空を見上げて
ぼくは茫然と立ち竦む

ここから先には行けない

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草の丘

2022-06-09 13:43:24 | つぶやき

サクラの狂騒曲の終わった後
アメリカハナミズキが
花嫁のドレスのように
新緑の中に清々しい
まだケヤキの林は
柔らかな若葉が広がり始めたばかりなのに
今朝の光は
黄金の秋のように
心に優しい

ゆるやかな芝草の丘を
黄色い髪の若い女が
ゆっくりと駆け上ってくる
ここは北欧の
小都市の外れの広場なのだ
と思ってみる
歩くと何日も続く
広大な湖と森の入り口

もう取り戻せないものはある
決して手に入らないものもある
それはそれで良い
これから始まるものもある
新しい発見もある
このごろどうした訳か
右目だけひどく涙が出る

そうだぼくは
遠い旅に出よう
「いい日旅立ち」なんか口ずさみながら
            (4月末)

 

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桃源

2022-05-16 14:09:44 | つぶやき

笹子の長いトンネルはいつも
故郷という異郷への入り口だ
スイッチバックの引き込み線跡の
遊歩道は葉桜の並木
眼下に広がる桃の花の霞
その中に点々と混じる緋色は花桃か
盆地を囲む陰の山並の向こう
前方高く南アルプスの白雪の連嶺
父に連れられて
子供には訳のわからない出郷をして65年
あの白い輝きが悔恨や穢れを
拭い去ってくれるとは思わないが

いつかはここと似た眺望の
峠を探さねばならぬ
そこを歩いて登り
そこで憩い
下らねばならぬ
桃源に本当に戻るためには

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あいつ

2022-05-13 09:56:50 | つぶやき

そうだ久しぶりに
向うにいるあいつと
話ししたいな
あの低い優しい
歌できたえた声が聞きたい

そっちはどうだい?
病期は治ったのかい?
メシは美味いかい?
本なんかいっぱいあるのかい?
歌っているかい?
良いピアニストは見つかったかい?
仲間はできたかい?
退屈してないかい?

そっちはいつも晴れで
いつでも昼なのかい?

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白い花

2022-03-06 21:00:08 | つぶやき

しゃがみ込んで見上げると
空が青い
人は去って行った
君の唇の端を一瞬だけ
微笑みの素描が過り
それを打ち消すように
君は軽く首を振り
そして
ゆっくりと立ち上がる
自らを嘲るのは
まだ早い
終りまで歩き通すべき
残りの道がある
そいつは
そう悪いことでもない
木の花が白い

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ヒルサガリ

2022-02-27 20:04:13 | つぶやき

ワタシハ
ハジメカラズット
オマエタチヲミテイタノダ
アワレナ
ニンゲンタチヨ
ホロビユクニンゲンタチヨ
ナンベンクリカエシテモ
マタオナジアヤマチヲオカス
オロカナ ニンゲンタチヨ
アシタノウンメイヲ
シルコトノデキナイ
アワレナ
イトシイ
ニンゲンタチヨ
ワタシハオマエタチガ
モットナガクユルヤカニ
イキツヅケテユクモノト
オモッテイタノダ
ダガモウ
オマエタチニキタイスルノハヤメヨウ

オマエタチガイナクナッタラ
ハグルマノクルッタコノホシヲ
ワタシハカイシュウシヨウ
マタベツノニンゲンタチヲ
ココニスマワセルカドウカハ
ワカラナイ

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ノアの船

2022-02-17 10:03:00 | つぶやき

波は大きく盛り上がり
やや静まったかと思うと
さらに大きく盛り上がり
空は暗く
水は黒く
飛沫(しぶき)は苦い

だがぼくたちは知っている
やがて海は凪ぎ
朝の輝かしい陽が昇る

ぼくたちの船は
どこかの高い山の
中腹に停まるだろう
そこから今度こそは
新しい生活を始めよう

種を蒔き 耕し
自然の中で
子供を育てる生活
子供たちにとっては
すべてが冒険と発見の日々

渦巻く黒い水と闘いながら
朝日の入り江を
想像しよう

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白い鳥

2022-02-12 17:24:41 | つぶやき

むやみに歩き回るほかに
ぼくにできることは無い
そうして迷い込んだ路地で 
真白い鳩を見た
数メートル先の地面から
ぼくの左手をかすめるように
飛び立っていった

若い頃 ぼくの彼女は
白い鳥になったのだと
それを彼女自身が
知らせに来たのだと
ぼくは信じていた

今のぼくは
魂の存在を信じてはいないが
だからこそ この世の
命は限りなく大切だ

だがなんてことだ
ぼくはさっき 白い鳩を見て
昔の恋人を思い出し
魂のことなどを考え
いま闘っている君のことを考えた

なんてことだ!

君は決して 
白い鳥になるな

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2022-02-07 08:42:06 | つぶやき

ジャンプの選手が
向かい風がなければ失速してしまうように
鳥も
風に向かって飛ぶ
だから
遥かな高みを
ゆっくりと舞っているように
見える時
鳥は体の力のすべてを
意志のすべてを使って
前に進もうとしているのだ

飛び続けろ!

力の尽きる前に
次の休み場所に着くと
ぼくは信じている

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悲しみ

2022-02-06 09:14:39 | つぶやき

(ぼくはもう 空を飛ぶすべを
 身につける事はないだろう…)

飛べない悲しみと
飛び続けねばならない悲しみは
どっちが重い?

空を探しても
答えは見つからない

君は今 この瞬間
いのちの瀬戸際にいる

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今この瞬間も

2021-12-17 09:53:48 | つぶやき

山から帰ってくると
体は疲れているのに
もう次の山に行くことばかり
考えている

歌もフランス語も
遠い昔のことになってしまった

地図やガイドブックを広げ
所要時間を計算し
「若い時ならともかく
今の体力では無理だな」
と溜め息をつき
「そうだ体を鍛え直さなきゃ」
と運動を始め
すぐに息が上がり

朝からこんな雨の日
枯れた林の上の青空を思って
鬱々と過ごす
家族に呆れられながら

山を歩いているか
山を夢想しているか

それなのに夜は
辿り着けない夢
帰り着けない夢ばかり見ている

今この瞬間も世界のあちこちで
無抵抗の人々を
軍隊が跪かせているというのに

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