すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

「私の好い人」(愛の追憶)

2023-08-16 14:06:02 | 音楽の楽しみー歌

              Michaële詞:樋口悟訳
娘は彼を“マイン・リーバー・ヘア”(私の好い人)と呼んでい
 た
幾夜も夜通し愛し合った屋根裏部屋で
彼の瞳のなかに 娘はふたたび見出したのだ
戦争前の 父の微笑む姿を 母の歌う姿を

「ねえ マイン・リーバー・ヘア 
私を救ってくれたのがあなただって知ったら
天国の父と母はどう思うでしょうね
私を置いていかないでね マイン・リーバー・ヘア
わかっているでしょう もう私には
この世にあなたしか残されていないってこと」

彼は答えた「もうけっして 
君の心のなかの恐れに耳を貸してはいけない
ほんの少し希望を持つだけで
世界はずっと良くなるはずだ
アオフ・ヴィーダーゼーン・リーベ(さようなら愛しい人)
ぼくはすぐに戻ってくるよ ベルリンからパリへ
戦争は終わるだろう 樹々は花咲き
人々は優しい心を取り戻すだろう
約束する 必ずぼくは戻ってくると
アオフ・ヴィーダーゼーン・リーベ」

娘は彼をマイン・リーバー・ヘアと呼んでいた
二人の語り合うのは素晴らしい勝利の日々だった
娘は聞いていた マイン・リーバー・ヘアが話すのを
いつか二人で叶えるだろう夢の数々を
「イルミネーションに輝く街を一緒に歩こう
カフェのテラスで食事をしよう
アオフ・ヴィーダーゼーン・リーベ
ぼくはすぐに戻ってくるよ ベルリンからパリへ
戦争は終わるだろう 樹々は花咲き
人々は優しい心を取り戻すだろう
約束する 必ずぼくは戻ってくると
アオフ・ヴィーダーゼーン・リーベ」

娘は彼を待っていた 来る日も来る日も
地獄のような叫びと沈黙の中で
暖炉の暖かな火のかたわらに坐っても
娘は自分の周りにだけ張りめぐらせてしまった
凍りつくような冬の夜を
そして・・・

  「連合軍がノルマンディーに上陸したぞ!」
  「鐘だ! 鐘が鳴っている! パリは開放されたんだ!」
 
・・・彼女はもうマイン・リーバー・ヘアと口にしなかった
冬の眼をした 子どものままのその老婆は
人々が呼びかけても答えなかった
昔戦争があったことさえ もう憶えてはいなかった

けれど時々 記憶のよみがえる夜があり
すると彼女の瞳は急に輝き 
語り始めるのだった かつての愛の物語を
アオフ・ヴィーダーゼーン・リーベ
ぼくはすぐに戻ってくるよ ベルリンからパリへ
戦争は終わるだろう 樹々は花咲き
人々は優しい心を取り戻すだろう
約束する 必ずぼくは戻ってくると
アオフ・ヴィーダーゼーン・リーベ
 アオフ・ヴィーダーゼーン・リーベ
 ぼくはすぐに戻ってくるよ ベルリンからパリへ
 戦争は終わるだろう 樹々は花咲き
 人々は優しい心を取り戻すだろう
 約束する 必ずぼくは戻ってくると
 アオフ・ヴィーダー・ゼーンリーベ
 ・・・・・・・・・

 ずいぶん前に訳したものだが、今回ドイツ語の片仮名表記を大きく、その他を幾らか、手直しした。
 題名も、娘が彼に直接呼びかける言葉だから「愛しいあなた」ぐらいのほうが良いかな、と思ったのだが、この娘のドイツ語は若干ぎこちないところがあると考えられる(ドイツ語では手紙は別として、通常、呼びかけにMein Lieber Herrとは言わないはずだ)ので、そのままにした。なお、この二人は呼びかけ以外はフランス語で会話している。
 また、ぼくはなるべく直訳を心掛けているが、ここではいくらか自由訳をしているところがある。
 この詞については、明日か、たぶんそれ以降、グダグダと長いコメントを書くつもりでいる。

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