すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

帰郷

2021-05-29 21:06:10 | 老いを生きる

まだ若いカエデの葉を
小刻みに震わせながら
林の道はひっそりと続いている

この道はいつか来た道
季節もたしか今頃

浅い谷に透明な水が流れ
道の辺に
ガクウツギやクサイチゴが
先へ先へと招いている

花の白は
安らぎと
無垢

それが不可能な願いならば
せめて
浄化

思い出そうとして思い出せないことは
起こったのではないことだ

忘れてしまいたいことは
忘れてしまうほうが良い

白い花に招かれるままに行ったら
この道の果てに
母が待っている?
幼年のぼくに会える?

それとも道は
さらにその先
暗い峠を越えて
生まれる前に続いている?

 それともぼくは歩きながら
 別の時間の入り口を
 探しているのだろうか?

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林道の曲がり角

2021-05-25 08:42:17 | 山歩き

林道の曲がり角
急峻な小沢から滲み出した水が
道をぬかるませている
一昨年の台風で崩れた跡だ
谷側は大きくえぐれて
倒木や岩が無惨に絡み合っている

小沢は険しいが良い手掛かりがあって
何とか登っていけそうだ

もちろん行ってはいけないのだろうが
ここは小一時間も登れば
尾根道に出るはずだ

とつぜんの渇望に鷲掴みされる
周囲を見回す

人はいない

ストックをしまい軍手を脱ぎ
一歩踏み出して

思いなおす

いやいや この御時世にこんなところで
救助を待つような羽目は
あってはならない

大きくゆっくりと呼吸して
気持ちを整える

魔の刻は過ぎて行った

そのうち
世の中が平穏になったら
また来よう

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小下沢林道

2021-05-24 19:30:05 | 山歩き

この頃ぼくは考えること・思うこと、が暗くて記事にするには向いていないので、写真のみを揚げる。山を歩いている時だけ、気分が いくらかは晴れる。

黄色い実はモミジイチゴ。高さ1m足らずの灌木で下向きに白い花をつけて群生する。割とどこにでもある。花の群生を見かけたら、一月ぐらい後にもういちど行ってみる。これを味わうのもこの時期の山歩きの楽しみ。

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2021-05-15 19:51:59 | 魂について

顔を近づけて話してはいけない
手をつないではいけない
抱き合うなんてとんでもない

それならば 君と二人
この堤防に並んで坐って
黙って風に吹かれながら
海を見よう

あれが大島
あれが房総などと
指呼する必要はない

ぼくたちの目の前にあるのは
無限の中のひとかけら
風が運んでくるのは
永遠の中のひと時なのだ

このひと時は
永遠につながっている
この光景は
無限につながっている

それならば
並んで黙って坐るのが
最高の方法なのだ
ぼくたちがひとつになるために

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多元宇宙論

2021-05-14 09:27:23 | つぶやき

苦しい夢から覚めると
激しい雨風の音
夢の中で騒いでいたのは
これだったのか

この雨風を突き抜けて行けば
ここではない土地があるのか
地球の上のどこかでは
明るい日の光が
木々の柔らかな葉に降り注いでいるのか

それとも世界中が
雨に覆われているのか

この世界のどこかには
光満ちた窓を開ける
ぼくよりは幸福な人がいるのか
ぼくよりは安らかな朝を迎えた
もう一人のぼくがいるのか

或る物理学の説によれば
この世界のすべての場所
すべての瞬間に
この世界と重なっているが異なる
別の世界が生まれているのだという

この説を本当だとは思えないが
慰めにはなるかも知れない

このぼくと重なるもう一人のぼく
あるいは たくさんのぼく
あるいは ぼくの分身

ちょうど今
幸福な目覚めを迎えた君に
会えることはないのだろうか?
君が幸福でいることを
知るすべはないのだろうか?

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グリーンスリーヴズ

2021-05-13 09:14:34 | 自然・季節

広い静かな水の広がりの
向こうの緑を見ていると
ぼくの眠るべき場所が
あのどこかにあるような
気がしてくる

もうぼくの目は茫々として
森と草地との境いさえも
よく分からないのだが
あの草地の奥
森に少し入りこんだあたりに
ぼくの帰還を待っている
人がいるような
気がしてくる

古風な音の笛が
微かにイギリス古謡を
奏でている
この季節に風に乗って
流れてくるあれは
何か人外のものが
吹いているに違いない

忘れていたことを
ぼくに思い出させるために

ぼくはもう半分ほどは
ここにいない存在に
変ってしまったようだ

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飛行機事故

2021-05-05 08:26:39 | 夢の記

 飛行機に乗っている。修学旅行中らしい。仲間がおおぜいいる。ぼくはそのうちの一人であり、同時に飛行機の乗員でもある。
 飛行機は機内に燃料タンクがあり、ぼくはエンジンに付属する小タンクに大きなタンクからガソリンを、と言うよりもシンナーのような透明な冷たい液体を移す作業をする。大きなタンクは小タンク4回分の容量があり、途中の中継地に停まっている間にすでに2回目を移した。目的地まで足りるかどうか分からない。あと一回寄港するから補充できるかもしれないが、ここと同じようにできないかもしれない。そうなると計算上は足りなくなって墜落する危険がある。
 不安になって仲間に「急いで先生を呼んできてくれ」と頼む。先生はなかなか来ない。飛行機は離陸の準備を始めた。
 やっと先生がやってくる。話を聞き、点検して、「大丈夫、足りるよ。出発して構わない」と言う。うれしくなって「出発だー」と叫ぶ。
 ゆっくりと動き出した飛行機の窓から外を見ると、デッキに仲間の生徒が一人いる。必死に手を振っている。彼はお調子者で、有頂天になって出発を知らせに外に出たらしい。
 「大変だ。一人外にいる。飛行機を止めて。止めて」と叫ぶのだが、誰も聞いてくれない。「誰々ちゃんが乗っていない」と言いたいのだが、その仲間の名前を度忘れしてしまって出てこない。「止めて止めて」と泣き喚きながら暴れていると、「気が狂ったんじゃないか」と思われたらしく、みんながぼくを押さえつけようとする。
 飛行機は速度を上げてゆく。もうすぐ離陸だ。押さえつけられながら「友達を置きざりにしていく罰に、事故が起きるぞ」と思う。ほどなく、離陸した飛行機は大爆発を起こして空中分解した。
 

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2021-05-02 09:28:11 | つぶやき

地平線の上
暗くなり始めた空が
痙攣して
次々に白む

見えないあの向こうは
雷雨だろうか
(それともあれは戦闘だろうか?)

ここには
何の音も聞こえない
だがその痙攣のたびに
神経が痛む

見続けていると
光は少しづつ
南から北に移ってゆく
ここから遠くを
嵐が通ってゆくのだ
いつも
ぼくから遠くを

ここへ来い
稲妻
ぼくの真上を通れ
地面にたたきつけろ
息も詰まる雨
この体をを引き裂け
錐揉みする風
魂を持って行け

ぼくはもう長い間
待っている

ぼくの生は退屈すぎる

 

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