ここではもう沈んでしまった太陽が
振り返ると遥か高みの
さっきまでいた頂きを照らしている
あそこには安らぎがある
とでも言うように
天国に近く
優しく暖かく
だが 幻惑されてはいけない
もういちどあそこまで登って行こう
などと思ってはいけない
あそこは間もなく
極寒の闇に包まれる
人間の住めない場所になる
ぼくはこの薄暗い道を
歩いていかなければいけない
灯りのあるところまで
人の温もりのあるところまで
もう少しの間
生きて行くつもりなら
ここではもう沈んでしまった太陽が
振り返ると遥か高みの
さっきまでいた頂きを照らしている
あそこには安らぎがある
とでも言うように
天国に近く
優しく暖かく
だが 幻惑されてはいけない
もういちどあそこまで登って行こう
などと思ってはいけない
あそこは間もなく
極寒の闇に包まれる
人間の住めない場所になる
ぼくはこの薄暗い道を
歩いていかなければいけない
灯りのあるところまで
人の温もりのあるところまで
もう少しの間
生きて行くつもりなら
山道を行く時
たびたび前を歩いていたあの娘
声をかけるにはやや遠く
見え隠れしながら歩いていた娘
ザックも背負わぬ軽い姿で
しかし薄物をまとってとか
裸足でとかでなく
つまり霊魂とか幻とかでなく
どこか異界に導くという風でなく
振り返ることも無く
ただ黙って前を歩いていたあの娘
この頃 あの娘を見かけない
道は緩やかな登り坂
葉を落としかけたブナやミズナラの林
降り注ぐ朝の陽射し
坂道の先 小ピークの先に
深い空の淵
冬のまぶしい太陽
あの娘は
どんどん先に行って
光に溶けてしまったろうか
老いたぼくを
地上に残して