11日(木).昨日の日経朝刊に「バイオリン・また無償返還・独の税関当局」という記事が載りました朝日にも同じ記事が載っていました。両紙を要約すると、
「ドイツ在住のヴァイオリニスト有希・マヌエラ・ヤンケさんが、フランクフルト国際空港で税関当局に差し押さえられていたヴァイオリンの名器ストラディヴァリスが9日、無償で返還された。関係者によると、欧州債務危機の影響もあり、税収増のため課税検査が強化されているという」
何はともあれヴァイオリンが本人の手元に戻って何よりです なにせ評価額6億円の19%にあたる1億2千万円の輸入税を要求されていたというのですからたまりません 税収増が必要な”欧州危機”と言いますが,音楽家にとっては”押収危機”ですよね・・・・・・座布団取っちまえ・・・・・・・
閑話休題
昨日の朝日朝刊に、転倒予防医学研究会などによる「10月10日は転(テン)倒(トウ)予防の日」という全面広告が載っていました そこに「転倒予防いろはかるた」の一部が紹介されていました。”し”は「四季感じ 歩く楽しみ 目に耳に」、”れ”は「レンコンの ようにならない 骨づくり」と、極めてマットウな句が紹介されています
一方、同じ朝日の社会面に、同じ転倒予防医学研究会が募集していた”転倒予防川柳”の優秀作が決まったという記事が載っていました。優秀賞は「コケるのは ギャグだけにして お父さん」。これを見て本末という人が笑い転げたら”本末転倒”です・・・・・・・か?
再び、閑話休題
昨日昼休み,いつもブログにコメントを寄せてくれているアメリカ帰りのNさんと10階のレストランでランチしました すでに持っているコンサート・チケットと同じ日のチケットを買ってしまい(ダブルブッキング)困っていたのですが,Nさんが引き受けてくださるというので,お会いして手渡すことにしたのです Nさんは長い間フィラデルフィアで生活されていたので,最近の日本の事情,特にクラシック音楽事情に明るくないとのことで,いろいろ訊かれました.一番困ったのは「最近聴いた中で最も印象に残っているコンサートはなんですか?」という質問です.即答できませんでした 「あまりにも頻繁にコンサートに行ってるんで,すぐには思い浮かばないなぁ」と苦し紛れに答えるのが精いっぱいでした.あとは,オーケストラによって客層が違う話などをしました.Nさんからは「アメリカではいわゆる大ホールはあるけれど,小ホールはほとんどない」という話があり,面白いと思いました 日本では80年代半ばにサントリーホールが出来てから,都内を中心に大ホールが出来,さらに紀尾井ホール,王子ホール,トッパンホール,浜離宮朝日ホール,JTアートホールなど,音響効果の優れた中小のコンサートホールが次々と創られたのですが,アメリカではカーネギーホールの小ホールくらいしか小さなホールはない,あとは教会くらいだということでした 1時間程度しか時間がなかったので多くは話せませんでしたが,クラシック音楽愛好家と話が出来て楽しいひと時を過ごせました.Nさん,ありがとうございました
またしても,閑話休題
昨夕,東京文化会館小ホールで「花房晴美・室内楽シリーズ~パリ・音楽のアトリエ”第5集サン=サーンスの夜会”」を聴きました プログラムは①ワルツ形式の練習曲,②マズルカ第3番,③第五協奏曲のフィナーレによるトッカータ,④ピアノ五重奏曲イ短調,⑤ハバネラ,⑥クラリネットとピアノのためのソナタ変ホ長調,⑦七重奏曲変ホ長調です
午後6時半開場ですが自由席のため早めに会場に行きました 6時15分位には着いたのですが,もう30人以上の列が出来ていました.それでも余裕で1階E列20番と理想的な席が取れました.会場は9割方埋まっている感じです このホールで何度かコンサートを聴きましたが,これほどの聴衆が入っているのを見たのは久しぶりのことです
最初の3曲はピアノ独奏曲です.花房晴美が上半身が黒,下半身がパープルで銀のラメ入りのドレスで登場します 最初の「ワルツ形式の練習曲」は華麗な曲でサロン音楽のようでした この曲が終わると,会場脇の入り口から遅刻した聴衆がどっと入ってきました 花房さんは彼らが席に落ち着くのを待って次のマズルカに入ります.マズルカといえばショパンですが,ショパンを少し残しながら新しい方向に行こうとするような雰囲気の曲でした
続いて演奏される「第五協奏曲のフィナーレによるトッカータ」は,萩原麻未の演奏で初めて聴いて度肝を抜かれた曲です とにかく超絶技巧・超特急の果てしなく演奏困難な曲です.花房晴美は細い身体の全神経をピアノに集中して難曲に対峙します 何度聴いても演奏がチョー難しそうですが,超スピードで弾き切りました
ここで舞台上にマイクが3本立てられます.収録してどこかの放送局でオンエアするのでしょうか
前半最後の「ピアノ五重奏曲イ短調」は,サン=サーンスが20歳の時の作品です.演奏はヴァイオリン=木野雅之(日本フィル・ソロコンマス),加藤えりな,ヴィオラ=大野かおる,チェロ=伊堂寺聡,ピアノ=花房晴美です.初めて聴く曲です.時に抒情的なメロディーが美しく響きます
休憩時にホワイエに出るとN響アワーの司会を務めていた作曲家の西村朗さんの姿がありました チラシの情報によると,来年3月にニューヨークで「西村朗:ピアノ協奏曲”シャーマン”」をアメリカ初演する予定とのこと.その関係で聴きに来られたのでしょう
後半1曲目の「ハバネラ」はピアノの伴奏付のヴァイオリン曲です.どこかで聴いた覚えのある馴染みのメロディーです 多分,グリュミオーのヴァイオリンによるCDで聴いたのだと思います.それにしても木野雅之さんはさすが日本フィルのソロ・コンマスだけあって見事な演奏をします
次の「クラリネットとピアノのためのソナタ」は,サン=サーンスの最後の年に作曲された曲で,ブラームスのような渋い曲想が印象的です クラリネット独奏は1979年生まれのニコラ・バルデイル―です.高音から低音までよくコントロールされた演奏でサン=サーンス晩年の音楽を奏でていました
最後の「七重奏曲変ホ長調」はヴァイオリン=木野,加藤,ヴィオラ=大野,チェロ=伊堂寺,コントラバス=遠藤,ピアノ=花房,トランペット=クリストフォリ(日本フィル客演首席奏者)というメンバーにより演奏されます
この曲は,最近CDで聴いていたのでメロディーがある程度頭に入っていました 弦楽だけの七重奏だとしたら,もっと平坦な曲に聴こえたかもしれませんが,トランペットが1本加わることによって,よりカラフルになり,音楽に深みが増していることが分かります ひと言でいえば楽しい曲です.とくに第3楽章はタンゴのような曲想で面白く聴きました
会場を埋めた聴衆の拍手に,メンバー全員が再登場して一礼します.最後に”主役”の花房晴美が登場して挨拶します
「きょうはお越しいただきありがとうございました.サン=サーンスというと”白鳥”で有名な”動物の謝肉祭”を思い浮かべる人が多いかも知れませんが,今日は,あまり知られていない曲を多く聴いていただきました.アンコールとして,サン=サーンスが7歳の時に作曲した”子守唄”という曲を演奏します」
彼女の手から紡ぎ出される音楽は,とても6歳の子供が作ったとは思えない,まるでモーツアルトのような,やさしい感じの曲でした 彼が”モーツアルトの再来”と言われたのも頷けます
このコンサートはサン=サーンスのあまり知られていない曲を取り上げて演奏する企画でしたが,非常に面白い試みだと思います 次回は来年4月19日(金)午後7時から「パリ・音楽のアトリエ”第6集 フランクの夜会」というテーマでコンサートを開くとのこと.これにも行きたいと思います
サンサーンスって最初にピアノそしてオルガンを勉強していたのではないでしょうか。
アンコールは、定番も多いのですが、こういう珍しい曲が聞けるといいですね。