人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

佐藤正午著「 Y 」を読む ~ 文字「 Y 」は人生の分岐点を表す:先が2つの道に分かれる両方の人生を生きた男の物語

2024年05月08日 00時28分41秒 | 日記

8日(水)。わが家に来てから今日で3403日目を迎え、米軍は6日、在韓米軍所属の2等軍曹が旅行中にロシアのウラジオストクでロシア当局に逮捕されたと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     昨年3月には米ジャーナリストが逮捕された ロシア旅行は控えた方がいいんじゃね?

 

         

 

昨日、夕食に「鮭のムニエル」「生野菜とアボカドのサラダ」「サヤインゲンの味噌汁」を作り、「タコの刺し身」と一緒にいただきました 和食はヘルシーで美味しいです

 

     

 

         

 

佐藤正午著「 Y 」(ハルキ文庫)を読み終わりました 佐藤正午は1955年 長崎県佐世保市生まれ。北海道大学文学部中退。1983年に「永遠の1/2」で、すばる文学賞を受賞しデビュー 2015年「鳩の撃退法」で山田風太郎賞を、2017年「月の満ち欠け」で直木賞を受賞 「身の上話」「アンダーリポート」「リボルバー」など著書多数

 

     

 

1998年。出版社に勤める秋間文夫に、ある晩1本の奇妙な電話がかかってきた 相手は秋間の高校時代の同級生・北川健を名乗り、親友だったと言うが、秋間には全く覚えがなかった その数日後、北川の秘書を通じて貸金庫に預けられていた1枚のフロッピーディスクと、500万円を受け取ることになる 秘書はフロッピーディスクに収録された北川の書いた”物語”を読めば、なぜ彼がそれを受け取ることになったのかが分かると言う 秋間はその物語を読み進めていくうちに、北川を思い出し、1980年9月6日に起きた京王・井の頭線の下北沢駅プラットホームで起きた出来事をかすかに思い出す その日、ある青年がかねてから思いを寄せていた娘と知り合うきっかけを作ろうとしていた 一緒に乗っていた電車が下北沢駅に着いた時、彼は彼女に接近するチャンスを得るが、偶然の出来事が重なり彼の方だけが下車し、娘を乗せた電車はそのまま発車し、数分後に悲惨な事故に見舞われる 青年はその時の運命のいたずらを呪い、そのわずかな時間を取り戻せれば、過去に起きた事実を別の形に置き換えることが出来れば、と本気で願い続ける

本書は「もしあの時、ああしていれば(あるいは、ああしていなければ)今が違った人生になっていたはず」という、誰もが抱く「あったかもしれない別の人生」を描いています。物語は1980年と1998年の間を行き来します。北川はその18年間を2度生きることになります 1度は1980年の事実がそのまま延長された人生、つまり、娘は事故に遭い自分は助かるという人生。もう1度は、18年前にタイムスリップして、娘を説得して電車から下ろし、自分が電車に取り残されて事故に遭い怪我を負うという人生です 当然、北川に関りを持った人たちのそれぞれの人生も変わってくることになります 北川がタイムスリップする時の鍵となるのは「アイリス・アウト/アイリス・イン」という言葉です これはフランソワ・トリュフォーの映画でよく使われた撮影方法の一つで「フェイド・アウト/フェイド・イン」のことです 画面が周りから中心部に向かって次第に小さな円になりながら消えていくのが「アイリス・アウト=フェイド・アウト」で、その反対に画面が中心部から周囲に向かって次第に大きな円になるのが「アイリス・イン=フェイド・イン」です 著者はフランソワ・トリュフォーが相当好きなようで、本作には「大人は判ってくれない」をはじめ多くの作品が登場します

本書はストーリーが時空を超え、人間関係も複雑になるので、最初のうちは読んでいて戸惑うところも少なくありませんが、慣れてくると物語がスムーズに頭に入ってきます 筒井康隆「時をかける少女」のようなミステリーのようでもあり、恋愛小説のようでもある、多面的な魅力を持った作品です

著者は北川の言葉を借りて、1980年から1998年までの18年間に世界で何が起こったかを25行もかけて列挙しています(235~236ページ)が、「エイズ」「日航ジャンポ機墜落事故」「昭和から平成へ」「ベルリンの壁崩壊」「地下鉄サリン事件」などの言葉に接すると、秋間と北川が、そして読者のわれわれが生きたのは激動の時代だったのだな、とあらためて思います


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