今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO サードダイバーのミステリー?の巻

2018年05月10日 19時15分38秒 | ブログ

腕時計を続けちゃいますね。セイコー・サードダイバーの6309-7040不動の修理ご依頼です。オーナーさんのお父様が時計屋さんで、店にあったタグ付き新品を使い続けていらしたとのことですが、このモデル輸出向けだと思うのですが、国内にも流通していたのでしょうかね?なんでもガラスの内側が水滴で曇ったので、ドライヤーで乾かしたら動かなくなった(お~怖)とのことですが、観察すると、ヒゲゼンマイが伸ばされています。これでは動きません。しかし、まだ問題があったのでした。

 水の侵入以外にもカレンダーが動かないなど色々な不具合がありますので、まずは修理可能か分解をしてみることにします。竜頭はネジ式ですが、ケース側のネジは磨滅して無くなっています。私もこれが心配で、使用する時は止まっている時間になったら時計を振って動かすようにして竜頭のネジは緩めません。

軽く引っ張っても抜けないぐらい錆びて固着していました。竜頭部分からも水が侵入しています。ネジ式ですからバネによって伸縮するダイバー専用の巻芯は曲がっていますね。曲がりを直すと折れる危険性がありますのでこのまま使います。

 

テンプを取り出しました。ヒゲゼンマイがビョ~ンと伸びています。天輪も歪んでいますよ。ドライヤーだけでなく、何かで突いたと思います。

 

機械の状態はあまり良くありません。香箱真孔が摩耗拡大をして受ケと接触をしていますが、過去に拡大孔の修正をしてあります。

 

これはすごいね。

 

 

巻芯周辺は錆が出ていますが、洗浄で使えないことも無いと思います。

 

 

超音波洗浄の液が茶黒色になって数回洗浄を繰り返してやっときれいになりました。

 

地板もピカピカになりました。香箱、輪列を組んで行きます。このキャリバーは三番車のホゾが入れにくいので好きではありません。

 

ヒゲゼンマイは修正をしましたが、天輪の歪が大きく、地板に接触するほどです。本来は交換ですが、オーナーさんのご希望で修正をして再使用とします。

 

カレンダーが動かない原因。中間車の歯が破損しています。

 

 

錆びて固着をした状態で無理に竜頭を回したか、カレンダー修正禁止時間帯でカレンダー修正をしたか? これは修正できませんので交換します。

 

こんどは日車が回転しない。原因は6時位置の歯が曲がっています。これは修正をしておきます。

 

ヤレヤレ、やっとカレンダーは正常に作動するようになりました。文字盤と針を付けます。

 

ここでまた問題。組立前に修正をしておくのでした。この機械は文字盤とインナーベゼルとの位置合わせ用の爪が出ていますが、前回の修理の時にそれを無視(気が付かない?)して爪を潰してしまっています。文字盤は意外に硬いのでこの状態で修正は難儀ですがやりました。塗装ハゲは修正しました。

機械をケーシングしました。巻芯曲がってるね。自動巻き機構を取り付けます。

 

 

最後にローターを取り付けて組み立て終了。

 

 

残念なことに回転ベゼルは紛失してしまったとのことです。香港製のリプロベゼルでも付けておいた方が良いですね。左は私が愛用中の国内用6306-7001でキャリバーは6306A。右の輸出向け6309Aとの違いは石数(21石➡17石とハック機能なしかな) 取りあえず復活しましたが、テンプASSY交換と回転ベゼルは今後の課題ですね。

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BROVA ミリタリー 11AFCの巻

2018年05月07日 21時56分04秒 | ブログ

ご常連さんからPEN-FVと一緒にミリタリー時計が来ましたので先にやりたいと思います。ブローバのミリタリーウォッチMIL-W-3818Aと言うモデル。キャリバーは11AFCのSweep Secondです。竜頭が抜けたとのことで、オシドリの緩みかと思いましたが竜頭から巻き芯が抜けていました。「抜ける?」巻き芯側にはネジは切られていません。竜頭側はネジの痕はありますが削られているようです。オリジナルの構造は知りませんが、竜頭側に欠けた部分もありますから過去に修理をされたものかも知れません。ただ差し込んであっただけ?

ネジがありませんので接着と思いましたが、それでは強度が足りないと判断して半田を流して固定しました。

 

ケースパイプに通して様子を見ましたが、じつは完全に巻き芯を押し込んだ状態ですと、少し長さが足りなかったです。

 

機械にセットして具合を見ます。強度は大丈夫のようです。Cal.11AFCは手巻きの秒針は出車ですから1950年代後半の機械でしょうか。

 

短針が押し込まれ過ぎの感じがします。夜光の劣化具合がよい味です。文字盤は年代からするときれいですがリダンでしょうか。

 

O/H済みとして購入されたそうですが、機械内部に繊維片が付着しています。

 

 

こちらにも。

 

 

ガンギ車にも長いやつが絡まっています。少し動くと止まるので原因は繊維片かとも思いましたが・・

 

こちらが原因でした。裏押エのネジを締め込むと下の日ノ裏車と接触をして抵抗となっていたものです。

 

 

今年の連休中は好天に恵まれましたが、連休が終わると雨がちで急に寒くなってきましたね。昨日は浅草へ行っておりました。浅草寺の仲見世は、ほぼ外国人観光客で埋め尽くされています。

浅草寺をお参りしました。東南アジアの方たちは冬の身なりで寒さに震えている様子。私も薄着なので風邪を引くといけないですから芋羊羹を買って帰宅しました。

 

そんなことで作業再開。裏押エと日ノ裏車のクリアランス調整をして針座をセットしようとしましたが、これ大きすぎますね。他の機械のものでしょう。観察すると針座と日ノ裏車が接触をしていて(文字盤とサンドイッチ)変形した部分があります。これ歩度に影響があったと思います。スーパーのものと交換しておきます。

文字盤と針を取り付けました。短針は24時間で一周します。

 

 

片振りが大きいですけど歩度は合わせてあるようです。

 

 

ケースにセットして竜頭を取り付けました。巻芯の長さはちょうど良かったようです。本来はO/Hをしたいところですが、今回はこれで完了としておきます。

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35万台のPEN-FTだと ?の巻

2018年05月03日 12時58分23秒 | ブログ

ご常連のFTファンの方がカメラ店で購入されて来た個体です。露出計不動、巻上げゴリツキがひどい。#3569XX とのことですが、ほんとかなぁ? 裏蓋の圧板が4点留めになっていますよね。35万台でしたらの「後期生産のPEN-FT」でやりました個体のように2点留めでないと変です。勿論、多少のシリアル№の前後はありますけどね。

この画像から分かることは、接眼プリズムを押えるプリズムホルダーの材質がアルミ製になっていますけど、この頃でしたら真鍮製の2点留めになっていなければ変です。また、セルフタイマーと接するダイカストの巻き戻し軸部の形状も異なっています。露出計ユニットは分解されていますので、ハーフミラーを入れ替えたのか、ユニットごと交換されたのか? それならなんで露出計が動かない??

 

底部を見ます。右端のボトムキャップがアルミの蓋になっていますが、35万台ですとビニールシート張りとなります。総合的に判断してトップカバーの付替機で、本体は1968年7月ぐらいに製造となった23万台付近の個体と判断します。35万台のトップカバーの程度は良いのに、なんで本体を変えなければならなかったのか。本体が故障であっても修理をすれば戸籍詐称にならずに済んだものを・・当方ストックの35万台の本体と合わせた方が良いかもね。まぁ、手慣れたプロがまとめた個体と言う印象です。

ははぁ、シャッターユニットも本体から分離されていますね。フィルムレールの上2点、下1点にシャッターユニットの留めビス孔がありますが、ここは工場出荷時は緩み止めが塗布されていますが、それが壊されていますね。修理のためにシャッターを分離することは必然で悪いことではありませんが、過去の履歴を推測する手がかりになります。品定めする時は覚えておいてください。

では、本体洗浄のうえモルトを貼って組み立てて行きます。スプロケットのクラッチ部の摩耗は全くありませんね。本体自体も消耗は少ない悪い個体ではないようです。カバーに当りでもあったのでしょうかね?

 

シャッターユニットのテンション(バネ)は通常の1つ緩めに組まれていました。工場の調整なのでそのまま組みます。チャージギヤ軸に軽微な摩耗があります。

 

プーリーはコントロールレバーと共締めで緩みやすいのでダブルナットになっていますが、若干緩み気味です。ここが緩むとコントロールレバーの作動が不正確となってシャッタースピードに影響があります。

 

後は同じなので割愛します。リターンミラーユニットも改良後のタイプですから実質的には35万台と違いはありません。

 

露出メーターユニットは、また別の個体のものでしょう。本体よりも後に製造されています。不動は基板のパターンがひどく腐食しているため、なんとか修復して作動としましたので、急いで電池室からのリード線を新製しておきます。

 

ハーフミラーは見にくい腐食はありませんが、オーナーさんのご希望で新品を使います。

 

しまった。特に考えないで電池室のリード線を黒で作ったら、シンクロのリード線も黒だった・・まっ、いっか。

 

メカの組立はほぼ終了。後は調整と検査をして行きます。セルフタイマーのレバーが水平になっていませんね。これはブラック用のレバーと交換した時に水平を調整していないためです。こういうところからも分かっちゃうんだなぁ・・

 

FTは完成。露出計も復活し、巻上げもスムーズな良い個体となっています。問題はレンズです。42mmは「難あり」として購入されたそうですが。持病の前群クモリがありますが比較的軽微です。絞り羽根に油が回って復帰しないと・・

 

貴重な42mmをこういうネジの開け方をするとは良い度胸だこと・・

 

 

鏡胴を振るとカタカタと音がするので原因を調べてみると・・後群が緩んでいました。レンズの無限遠がズレているのは、レンズが緩んでいる状態でピントリングをいじった可能性がありますね。また、ヘリコイドグリスが抜けていますので交換しておきます。

後玉は比較的きれいですが、8時周辺にカビが発生しています。

 

 

画像だと良く写らないのですけど前玉の後ろが曇っています。

 

 

本当に「難大あり」の42mmでした。FT本体のシャッターテンションが弱めの個体は42mm装着時フリーズする危険性がありますが、このセットは非常に軽快に作動しています。トップカバーは付け替えですが、本体は素性の良い個体です。35万台のジャンクを探さなくても良いかなぁ・・・

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