ご常連さんから、暖かくなったのでカメラの整備ということで、PEN-FV #1301XXが来ていますが殆どフィルムを通していないのでは? という美品です。作動に問題はなく、特に不具合はありませんが、巻上げのゴリツキは出て来ている感じです。では、O/Hをして行きますが、特に取り上げることも無いと思いますね。
本体を洗浄して組み立てて行きます。スプロケット軸の上側にウェーブワッシャーが入りますが、これは初期型には入っていません。スプロケットの位置を安定させるための変更でしょう。以前に、初期と後期の個体2台のO/Hを同時にご依頼頂きましたら、「片方にワッシャーが入れ忘れている、TOMYとしたことが」のようなクレームを頂戴したことがありましたが、残念でした。最初から入っていないのです。
当然ながら、シャッターユニットに問題はありません。ピンセット先のコントロールレバーはシャッタースピードを制御する重要な部分ですが、機械的なストレスが大きく、PEN-Fでは長さがFTよりも長いために、折れる故障が多くありました。FTでは改設計により長さが短くなって折れにくくはなりましたが、稀には折れてシャッタースピードが変わらないという個体がありますね。先日、早田カメラの早田様から、製品開発当時の貴重なお話をお聞かせ頂きました。
完成したシャッターユニット。
前板プリズムのコーティングも完全です。かなり保管が良かったと思います。
レバーカバーはFTと違う形状のFV専用部品です。
組立完成。
巻上げは軽くスムーズになりました。これはFV最高クラスの個体です。1969年5月製。
しかし、一緒に来ている20mmは問題大ありですね。このレンズは中玉が曇るのが持病ですが、かなり曇っていてこれでは実用は出来ません。
過去に分解を受けていますね。かなり乱暴ですけど。
あら、ピンボケだ。AF性能が悪いのです。
中玉だけ何故曇るのか? 新種ガラスなど成分的な問題もあるかと思いますが、曇っていない健康な個体も存在します。レンズ製造上のロット間の差や湿気などによる環境の差もあるのでしょう。
そもそも、このレンズは過去に再研磨を受けているようです。周辺の遮光塗装をやり直していますが、あまり良くありません。さてどうしますかね?
で、「何とかせよ」とのご指示なのでこうしておきました・・
こちらも曇り始めています。
まぁ、曇るレンズというのは何とも残念ですよね。メーカーさんとしては、充分に持ったということでしょうけどね。このFVはオーナーさんの家で新品で購入されたものだそうで、やはり、人の手を転々と渡っていない個体は、無駄な傷などがなくきれいです。腕時計を見ていても感じることですが、所有者の性格や物に対して愛情(労わり)の心が有るか否かでコンデションがまるで違って来ますからね。なぜFTを買わなかったか? 高かったからだそうです。