今年最初のPEN-FT #1053XX オッと、極初期型になりますけどね。状態は不動。レンズがロックできない。駒数計の復帰不良。などをお訴えですが、他にも色々ありますよ。オーナーさんは女性の方だと思いますけど、「ゆずり受ける前にO/H済み」との事だったようですが、状態から、嘘も休み休み言えという感じです。知識の無い方を騙す行為は腹だたしいです。
で、ご指摘には無いのですが、そもそもこのレンズは、シボリが開放のままですよ。この状態で撮影されていたのでしょうか? でしょうね。現状から見れば・・レンズ自体も曇りが多いので果たして使えるのかは分かりませんが、マウントプレートを分解されており、絞り連動のレバーが定位置にセットされておらず、無理にネジを締め込んだため、変形して固着しています。これでは、100年待っても絞り羽根は動きません。
シボ革がアルコール系の両面テープで貼られており、アルコールを塗布すると粘々で鳥餅のようです。俺はセミじゃねぇ~やい。
当然、露出計は作動しないのですが、分解してみると、あっ、バラバラになってる。樹脂のブラインドがありませんね。
この部分を拡大するとね。くもの巣城だね。どこがオーバーホールなんだよ。今日は機嫌が悪いんだ!!
PEN-FTの製造開始は1965年4月ということですから、1966年10月製のこの個体は、一年半が経過した頃の製造で、すでに46年も前の製品なんですね。長旅の汚れをすべて洗浄して落としたところ。
露出計を作動させる予定で、電池室からの配線を新設しておきます。巻上げ関係は組立終了。シャッターユニットですが、お訴えにはありませんでしたが、そもそも、この改良前のユニットはスローが全く利いていません。アンクル機構部分が固着しているからです。すべて改善してあります。
シャッターユニットは組み込み済み。リターンミラー、プリズムのO/Hを終えてドッキングします。プリズムは意外に状態が良いのが分かりますね。
光学系を組んで行きます。接眼プリズムは激しく汚れていましたが、清掃のところ、こちらも意外にきれいになりましたね。取り去られていたモルトを貼ってあります。
露出計ユニットのCds部分ですが、左のブラインドが取り去られて欠落していました。感度が低下していたので、感度を上げる処置ではないか?と思われます。しらないけど。今回は、感度は無視して、ハーフミラーを取付けるために、ブラインドを追加しておきます。
側面の、ハーフミラーを保持するためのツメも取り去られていますので追加しておきます。
この個体の露出計ユニットと中期以後のユニットの比較。基板が異なります。今回は、予算の関係で交換はしないことにします。
あちぁ~、接眼のアイピース枠も欠けていましたね。交換をご希望ですので、それでは交換とします。
作動チェックをしていましたら問題発生です。低速時にシャッター幕が閉じる前にリターンミラーが復帰してしまう。シャッター単体の時は正常な作動を確認しているので、問題はリターンミラーユニットです。→のレバーは、シャッター幕が閉じた切っ掛けを受ける部分。このレバーが上のプリズムホルダーと接触しています。リターンミラーは過去に分離された形跡はありませんので、これは工場で組んだ時からの状態です。今までは、低速シャッター自体が切れていませんでしたので、不具合に気が付かなかったのでしょう。
前板のリターンミラーユニットの取り付け座を点検します。ははぁ、左側の方が約0.2mmほど低いです。この状態でミラーユニットを取り付ければ、当然斜めに傾いて、設計上のクリアランスが確保出来なくなって接触をしたのです。生産初期の部品の加工精度不良が原因ですが、それに気が付かず、そのまま組み立てられたのでしょう。
ということで、いろいろありましたが完成しています。初期の個体は、古いほかに、部品の精度不良などもありますから、非常に厄介な個体が多いのです。まぁ、初期型でも立派に生き残って来たのですから、大切にしてくださいね。あとは38mmのレンズですね。
で、終ったと思ったでしょ。じつは、完成テストで問題が発生です。稀にチャージをしてもリターンミラーユニットのロックが外れてシャッターが切れない。という問題。手を焼かせる個体はとことんダメですね。ロックする爪の磨耗ですが、このユニットは分解不能ですので、適合するユニットに交換することになります。で、在庫から探してきました。
リターンミラーユニットは、前期と中後期以降では設計変更を受けており、スプリングの条数を増して、強度、耐久性を向上させていますが、この個体の最初期のユニットは、作動に難のあるものが多いのです。結局、実用優先としてこの個体に適合するユニットは諦め、変更後の良品を組み込んでいます。よって、関連するリンケージもセットで交換です。一般的に、巻上げのスムーズさは巻上げ関係が原因と思われている方が多いと思いますが、実際には、シャッターユニットと、このミラーユニットが半々で影響しています。交換後は、軽くスムーズな巻上げ感となり、レンズの作動トルクも大幅にUPしています。42mmなどの大径レンズを使用される方は変更後のユニットが搭載されている個体がよろしいように思います。私は、このカメラで一番重要な部品は、このユニットだと思っています。再生産をしてくれたら、ジャンクから生き返る個体が相当数あるのです。露出計は作動状態に復元してあります。