今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

今年最初のFTが難儀やなぁ・・・

2013年01月12日 23時10分28秒 | インポート

Dscf035004 今年最初のPEN-FT #1053XX オッと、極初期型になりますけどね。状態は不動。レンズがロックできない。駒数計の復帰不良。などをお訴えですが、他にも色々ありますよ。オーナーさんは女性の方だと思いますけど、「ゆずり受ける前にO/H済み」との事だったようですが、状態から、嘘も休み休み言えという感じです。知識の無い方を騙す行為は腹だたしいです。

で、ご指摘には無いのですが、そもそもこのレンズは、シボリが開放のままですよ。この状態で撮影されていたのでしょうか? でしょうね。現状から見れば・・レンズ自体も曇りが多いので果たして使えるのかは分かりませんが、マウントプレートを分解されており、絞り連動のレバーが定位置にセットされておらず、無理にネジを締め込んだため、変形して固着しています。これでは、100年待っても絞り羽根は動きません。

Dscf035102 シボ革がアルコール系の両面テープで貼られており、アルコールを塗布すると粘々で鳥餅のようです。俺はセミじゃねぇ~やい。

Dscf035202 当然、露出計は作動しないのですが、分解してみると、あっ、バラバラになってる。樹脂のブラインドがありませんね。

Dscf035402 この部分を拡大するとね。くもの巣城だね。どこがオーバーホールなんだよ。今日は機嫌が悪いんだ!!

Dscf035502 PEN-FTの製造開始は1965年4月ということですから、1966年10月製のこの個体は、一年半が経過した頃の製造で、すでに46年も前の製品なんですね。長旅の汚れをすべて洗浄して落としたところ。

Dscf035601 露出計を作動させる予定で、電池室からの配線を新設しておきます。巻上げ関係は組立終了。シャッターユニットですが、お訴えにはありませんでしたが、そもそも、この改良前のユニットはスローが全く利いていません。アンクル機構部分が固着しているからです。すべて改善してあります。

Dscf035701 シャッターユニットは組み込み済み。リターンミラー、プリズムのO/Hを終えてドッキングします。プリズムは意外に状態が良いのが分かりますね。

Dscf035801 光学系を組んで行きます。接眼プリズムは激しく汚れていましたが、清掃のところ、こちらも意外にきれいになりましたね。取り去られていたモルトを貼ってあります。

Dscf035901

露出計ユニットのCds部分ですが、左のブラインドが取り去られて欠落していました。感度が低下していたので、感度を上げる処置ではないか?と思われます。しらないけど。今回は、感度は無視して、ハーフミラーを取付けるために、ブラインドを追加しておきます。

Dscf036001 側面の、ハーフミラーを保持するためのツメも取り去られていますので追加しておきます。

Dscf036101 この個体の露出計ユニットと中期以後のユニットの比較。基板が異なります。今回は、予算の関係で交換はしないことにします。

Dscf036201 あちぁ~、接眼のアイピース枠も欠けていましたね。交換をご希望ですので、それでは交換とします。

Dscf036302 作動チェックをしていましたら問題発生です。低速時にシャッター幕が閉じる前にリターンミラーが復帰してしまう。シャッター単体の時は正常な作動を確認しているので、問題はリターンミラーユニットです。のレバーは、シャッター幕が閉じた切っ掛けを受ける部分。このレバーが上のプリズムホルダーと接触しています。リターンミラーは過去に分離された形跡はありませんので、これは工場で組んだ時からの状態です。今までは、低速シャッター自体が切れていませんでしたので、不具合に気が付かなかったのでしょう。

Dscf036701 前板のリターンミラーユニットの取り付け座を点検します。ははぁ、左側の方が約0.2mmほど低いです。この状態でミラーユニットを取り付ければ、当然斜めに傾いて、設計上のクリアランスが確保出来なくなって接触をしたのです。生産初期の部品の加工精度不良が原因ですが、それに気が付かず、そのまま組み立てられたのでしょう。

Dscf036801

ということで、いろいろありましたが完成しています。初期の個体は、古いほかに、部品の精度不良などもありますから、非常に厄介な個体が多いのです。まぁ、初期型でも立派に生き残って来たのですから、大切にしてくださいね。あとは38mmのレンズですね。

Dscf036902 で、終ったと思ったでしょ。じつは、完成テストで問題が発生です。稀にチャージをしてもリターンミラーユニットのロックが外れてシャッターが切れない。という問題。手を焼かせる個体はとことんダメですね。ロックする爪の磨耗ですが、このユニットは分解不能ですので、適合するユニットに交換することになります。で、在庫から探してきました。

Dscf036903 リターンミラーユニットは、前期と中後期以降では設計変更を受けており、スプリングの条数を増して、強度、耐久性を向上させていますが、この個体の最初期のユニットは、作動に難のあるものが多いのです。結局、実用優先としてこの個体に適合するユニットは諦め、変更後の良品を組み込んでいます。よって、関連するリンケージもセットで交換です。一般的に、巻上げのスムーズさは巻上げ関係が原因と思われている方が多いと思いますが、実際には、シャッターユニットと、このミラーユニットが半々で影響しています。交換後は、軽くスムーズな巻上げ感となり、レンズの作動トルクも大幅にUPしています。42mmなどの大径レンズを使用される方は変更後のユニットが搭載されている個体がよろしいように思います。私は、このカメラで一番重要な部品は、このユニットだと思っています。再生産をしてくれたら、ジャンクから生き返る個体が相当数あるのです。露出計は作動状態に復元してあります。

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Seiko Sportsmatic 5 DX ブラック文字盤仕様の製作

2013年01月10日 19時40分08秒 | インポート

Dscf034503 北海道のINOBOOさんから新しい指令が来ました。セイコースポーツマチック5DX 25石の文字盤ブラック仕様を作ります。送られて来た個体は7619-9010 1966-9月製のモデルです。外観は、年代相応の使用キズは多いですが、致命的なダメージはありません。風防は黄ばんでキズが多いですね。機械は、作動はしていますが、マイナス165秒/日で、テンプの振り角や片振りのデータが変です。脱進機などに問題がありそうです。

Dscf034602 裏蓋を開けてみます。手垢汚れは付着していますが、それほど多くはないレベルです。パッキンゴムは硬化してカチカチの個体もありますが、弾性は残っています。ケースから機械を取り出します。

Dscf034803 全て分解をして、超音波洗浄をしてあります。この個体は、ハック機能が付いているタイプです。

Dscf034902 輪列を組んで行きます。ピンセット先のガンギ車とアンクルが微妙に変形しているようです。念のため輪列の歯車はすべて交換して組んで行きます。

Dscf035002 さぁっと飛ばしていますよ。カレンダーの日車、曜車を組んで、デッドストック新品のブラック文字盤で組んでいます。隣はオリジナルのシルバー文字盤。ケースは、簡単に研磨してから洗浄をして、日送りボタンを組み込んであります。

Dscf035101 う~ん、こんなところですかね。片振りなしのブラス4秒/日。姿勢差も出ますので、少し進み気味に調整をしておきましょう。

Dscf035201 自動巻き機構と回転錘を取付けたところ。キャリバー7619Aは、回転錘のベアリングは磨耗は少なく、地板に接触はしていません。後は、風防を新品に交換してケーシング完了としますが、風防が到着していませんので今日はここまでです。

Dscf035301 リューターで研磨をしたケースにインナーリングと新しい風防をセットして、ベセルリングを圧入して留めます。

Dscf035401 完成したケースに文字盤に傷が付着しないように注意をしながら、機械をセットしています。新しい防水パッキンをシリコンオイルを塗布して溝にセットします。接合面の腐食は少ないですから、ある程度の防水性は確保できると思います。

Dscf035501

これで完成ですね。となりは先週仕上げた私の普段使いのスポーツマチックです。どちらも搭載している機械は7619Aですが、このシリーズは、ケースや文字盤などの違いにより、多くのモデルが存在します。ブラック文字盤は精悍なイメージでなかなか良いですね。風防は、純正と汎用品ともすでに入手不能のため他機種の流用品を使用しました。計測寸法は微妙に差がありましたが、何とか使用することが出来ました。本来は、文字盤外周のリングは磨きでは無く、ブラック仕上げの可能性が高いですが、今回はシルバー文字盤仕様をそのまま使用しています。PENが作られていた60年代の機械式時計が欲しい方はお問合せ頂ければ製作致します。

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初詣に行って仕事始め・・

2013年01月04日 17時45分57秒 | インポート

Img_2161今年の正月三が日は関東地方は晴天に恵まれましたが、寒いです。元日の初詣は込み合いますから、今日、氏神様に初詣に行って来ました。しかし、今日でも参拝の人々が列を作っています。昔はこんなに人出は無かったように思いましたが・・とにかく、寒いので一年の無事に感謝をして終了。

Img_2154 このプレートは、社殿を新築した時に寄付をした方の芳名録。毎年自分の名前を見つけてみます。腕にしている時計は、昨日オーバーホールをした56キングセイコーですよ。なんと日差1秒で作動しています。揺動レバーが不調ですので、そのうち交換しなければなりません。作業で頻繁に手を洗うので、肌が荒れちゃったこと・・・

Dscf033005 で、ボチボチ作業を始めています。PEN-S3.5ですが、トップカバーの状態はあまり良くありませんね。リペイントをご希望らしいですよ・・・

Dscf033203 この個体はPEN-S 3.5にしては、ボディーとカバーの状態が良くありません。すでに、紙やすりで研磨した形跡がありますが、真鍮の腐食が浮き上がって来ていたのでしょう。

Dscf033402 ダイカスト本体の方も、腐食が進行している部分が多いですね。塗膜を剥離しても、すでにダイカストの中まで腐食しているのです。

Dscf033504 湿気による腐食があるカバーは、メッキの剥離でもきれいに剥離してくれないことが多いのです。この状態とするまで3時間冷たい水に手を入れたままです。ますます手が荒れてしまいますので、厳寒期のリペイントは非常にきびしい作業です。

Dscf033602 シャッターユニットは、予めオーバーホールをしてあります。特に問題はありません。

Dscf033802 後期生産の3.5にしては、保存は良くありませんので、修正をしながらの塗装となり丸一日掛かってしまいました。寒くて体力の限界なのでコメントはなし。

Dscf0339041 昨夜はあれから調子が悪くってね。ちょっと頑張り過ぎたみたいです。真冬にリペイントはきつい。で、今日は新年の挨拶回りで出かけましたけど、しかし、あっちこっちで片側通行の工事をやってましたね。暮れに間に合わなかったのでしょうね。で、戻ってからの作業でしたので、あまり進んでいませんよ。とは言っても本体の組立はシボ革を除いて終了。トップカバーの色入れと吊り環をつけたところまでです。今夜中に新品の駒数ガラスを接着しておきます。明日は、意外に面倒な裏蓋の製作です。リベットカシメやシボ革の接着があります。何とか完成させたいですね。

Dscf0340021 本体側のレンズ組立とトップカバーにファインダーをセットしてASSY完成しています。

Dscf034103 最後は裏蓋の製作をします。まず背部と低部をリベットでカシメます。

Dscf034203 開閉鍵と巻き戻しボタンを取付けた後にシボ革を貼っています。ちょっと気になったのは、本体前面側のシボ革と裏蓋のシボ革の光沢と劣化具合が微妙に異なっています。工場での部分的なロットの時間差も考えられますが、もしかすると裏蓋は別個体(2.8用)と交換された可能性もありますね。

Dscf034302 内側です。遮光フェルトを貼って、リベット頭部分に黒で化粧ペイントをしておきます。圧板を取付けて完成。

Dscf0344011 ふぅ、やっと完成しましたね。ご常連さんからは、「PEN-S3.5のブラックは初めてでは?」とのご指摘を頂いていますが、そうかなぁ? 忘れちゃいました。確かに、オリジナルで存在するブラックモデルはPEN-S 2.8がベースですね。調子は最高に良いと思います。実用機としてどんどん使ってあげて欲しいですね。

Dscf1683 以前にもUPしたことがありますが、オリンパスさんの展示ケースの画像を載せておきましょう。塗料の劣化や使用過程もありますが、それほど上質な塗装には見えません。この個体では、シューのレール上面も塗装を施されていることが分かります。

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新年はコダック・シグネット35から

2013年01月02日 11時29分55秒 | インポート

Dscf032805_2 みなさん、新年おめでとうございます。今年もよろしくお付き合いのほどお願いいたします。今年は正月休みが長く取れることから、帰省や旅行に行かれたいる方も多いことでしょう。私はと言えば、特に予定も無く、初詣は人波が収まってからと思い、大晦日から珍しいカメラを手掛けておりましたよ。最近、PENが少なくなって、こういう機種が良く来ますね。PENファンは頑張ってもらわないと。。で、コダックのシグネット35と言うカメラで、ミッキーマウスとの愛称もあるようですが、PENに慣れている目には、なんとも異質な文化を感じさせるデザインでした。コダックがフィルムの拡販目的で製造したような印象もありますが、純アメリカ製のカメラだそうです。しかし、この軽合金の質感はどこかで見たような? あっそうだ。アメリカの古いコルゲートのステンレスバスのような、コーラの自動販売機のような・・シャッターも良いなぁ、アメリカ的というか、大らかで、絶対に故障しない気がします。PEN-Sの繊細なシャッターと比べたら、あぁ、こんなのでも機能は果すんだという見本みたいな機械。下部のレバーは二重露光レバー。

Dscf032904 おぉ、このダイカストのトップカバーはすごいね。厚いところで2.5mmあります。クラシックカーのタペットカバーみたいだ。機構も簡略的ではあるが、ちゃんと距離計連動ファインダーです。三角形のフレームがお洒落。ハーフミラーが不良の個体が多いようですが、この個体はきれいです。途中で入換えられたのでしようか?

Dscf033004 アンダーカバーは黒の樹脂製です。底部のリンケージも簡単な構造ですが、作動は良く考えられたギミックで興味深い機構です。

Dscf033103 面白くて分解している間に画像を撮り忘れちゃいました。全体にコンディションの良い個体ですが、軽合金のヘリコイドはグリスが完全に抜けて、鏡胴がグラグラの状態でした。グリスアップで滑らかになっています。シャッターはアンクルやガンギ車の軸が磨耗ぎみです。洗浄メンテナンスをしてあります。ミッキーの耳に相当する大きなダイヤルはこれが非常に操作性が良いですね。トップカバーをラフにセットすると、中央のカウンターギヤが噛み合わず、作動しないので、私は糸で引っ張りながらカバーをセットしました。レンズはシャープな写りの銘玉エクターで、製造番号の頭がREですので、1954年製ということでしょう。写っている腕時計の方が、ちょっとお兄さんですよ。

Dscf033202 画像が少ないので・・この軽金属の素肌感は無塗装のマスタングみたいだな。

Dscf033302 で、元日は、自分用のセイコースポーツマチックを組んでいました。なかなか素性の良いユニットです。風防ガラスを交換したくて、現在、部品屋さんに手配中ですけど、まだお休み中ですね。因みに、この時計は1964年製ですから、10年の差があります。シグネットは玉数も多く、市場価格もこなれているようですから、1台は所有してみたいカメラでした。飾っておいても良い雰囲気ですね。

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