今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

中学生の頃からの憧れPEN-FT

2011年10月26日 18時11分37秒 | インポート

Dscf298967 カメラの合間に、しばらくぶりで時計のオーバーホールをしています。気がつけば56キングセイコーの機械が3つもありますね。56キングセイコーの機械は5626Aと後期の5626Bがありますが、この機械は5626Bで最後期のバナックと言う、カラー文字盤やカットガラス風防を装備した、私的には好きではない末期的な症状のモデルに搭載されていたものです。GSやKSは普通の高級機が良いのです。オークションで、分解されてバラバラ状態のジャンクとして出品されていたもの。組めなくなって手放したようですが、組み方は間違っているし、筒車など数点の部品が欠落していました。また、曜車や日車などのスクリーン印刷されたキズがつきやすい部品と金属部品を一緒くたに袋に入れて送る神経は、そもそも、精密な機械を扱う以前の問題だと思うのですね。で、機械は新しい? ため、磨耗も少なく、欠落していた部品を補って、無事作動しています。画像のマニュアルは、注油の個所と時計油/グリスを指示したもので、私の場合は、1台の時計に3種類の油と2種類のグリスを使い分けています。

Dscf299187 このPEN-FTはうちの在庫機ですが、ご依頼がありまして、O/Hをしてお譲りするものです。この方は、もうすぐ定年の世代でいらっしゃいますが、中学生の時の欲しくても手に入れることが出来なかったFTへの想いを持ち続けておられたとか。それでは、いつも以上に頑張って組まないといけませんね。元々、特に問題のない個体をチョイスしましたので、「今なに」的には書くことは無いかなぁ? とも思いますが、まぁ、はじめましょう。

Dscf298937 最近PEN-FTやったなかったですね。いつものように全て分解洗浄のうえ組立てて行きます。ここから作業をするのは非常に工数が掛かるのですが、私のところはこのスタイルを変えません。ダイカストの状態も非常に良くて、フィルムレールの腐食もありません。スプロケット関係の磨耗も殆どありませんね。あまり使われなかった個体ということです。

Dscf299024 シャッターユニットを分解洗浄して点検しています。使い込まれた個体に発生する巻上げギヤと軸にも磨耗は皆無です。テンションシャフトのメッキも剥離はありませんね。不良個所は皆無ですので、このままグリスUPで組立てます。

Dscf299133 「今なに」泣かせの個体です。何の問題も無くここまで組み上がっています。光学系のフレネルレンズやプリズムもほぼ完全な状態でした。レンズマウントには全く装着のキズがありません。標準レンズを装着したまま、ごく短期間に使用されただけなのかも知れませんね。後は、検査をしながらカバー類を取り付けて完成させます。

Dscf299267 何の問題も無くトップカバーを取り付けて完成、と思ったのですが、最後に一つありましたね。大したことではありません。シンクロソケットの中心の樹脂部分が抜けて来ました。これは非常に多いトラブルで、カシメが非常に浅いために、ソケットの差し込み方(斜めに差し込んだような場合)によってはカシメが抜けてしまうことがあります。再カシメと接着を併用して補修しておきます。これで本体は完成です。あとは、おまけの38mmレンズの清掃をしておきます。

Dscf299373過去に分解歴のあるレンズでしたが、清掃とヘリコイドグリスの交換をしてあります。美品ではありませんが、使用に問題の無いレンズとしてあります。まぁ、おまけなので・・本体は目立つキズもなく、丁寧に扱われていたと思われる個体です。ご依頼のオーナーさんは、まもなく定年を迎えられるとのことです。リタイヤ後は中学生の頃に夢見たPEN-FTと楽しい時間をお過ごし頂ければと思います。取扱説明書のコピーもお付けしておきます。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/