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今日の筆洗

2024年06月10日 | Weblog
「ここかしこの道に、あやしきわざをしつつ、御送り迎への人のきぬの裾たへがたく」…。「源氏物語」の「桐壺(きりつぼ)」に出てくる。帝(みかど)の寵愛(ちょうあい)を受け、子を授かった桐壺の更衣は周りからねたみを買い、いやがらせを受ける▼「あやしきわざ」とは何か。高校の古文の授業中、先生から質問の不意打ちを食った同級生の回答を思い出す。「落とし穴をつくった」。なかなかの名答だと思うが、動物の糞(ふん)などの汚物をまき散らしたというのが一般的な解釈である。そんなものをまいて女房たちの裾を汚させるとは悪質極まりない上、子どもっぽい▼千年前の物語の話ではなく、現代の「あやしきわざ」の子どもっぽさにあきれる。北朝鮮が韓国に向けてゴミや汚物などをぶら下げた風船を大量に飛ばしているそうだ。たばこの吸い殻やビニール、動物のふん尿も混じっているとか▼風に乗ってソウル近郊に数百個が到達したと伝えられる。大きな危険はないそうだが、風船の届いた先はいい迷惑だろう。なにより「悪意」でふくらんだ風船が気味悪い▼韓国の市民団体が北朝鮮の体制を批判するビラを飛ばしたことへの報復措置らしい。風船は北からの「誠意ある贈り物」であり「拾い続けろ」とはおだやかではない▼風船が運ぶのはゴミばかりではなかろう。子どもっぽいとはいえ、あやしき風船がさらなる南北の緊張を運ばぬことを願う。