「よいニュースと悪いニュースがある」。この文句で始まるジョークの形式はおなじみだろう▼「よいニュースと悪いニュースがある」「よい方は何?」「エアバッグはちゃんと作動した」。車をぶつけたか▼「よいニュースと悪いニュースがある。よいニュースは独裁者が辞めた」「悪い方は?」「誤報だった」。ナンセンスが面白い。こういうジョークはだいたい、よいニュースの「幸」よりも悪いニュースの「不幸」の方が上回り、そこに皮肉や悲しい笑いが生まれる▼この手の冗談としては最悪の部類か。「よいニュースは?」「プーチン大統領がウクライナとの和平交渉開始の条件を示した」「悪い方は?」「絶対にまとまらない」。笑いはなく、ただ、中っ腹になる▼プーチン大統領が示した和平交渉開始の条件はこうだ。ロシアが一方的に併合を宣言した4州からのウクライナ軍の完全撤退に加え、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念すること。これではウクライナに降伏を迫っているにすぎず、交渉のとば口にはおよそなるまい▼もう一つ軽口を。よいニュースはウクライナ和平のための国際会議「平和サミット」の開催。悪い方はロシアに配慮するインドなどが共同声明に加わらず、国際社会が十分に結束できなかった。中国は出席さえしていない。「よいニュース」が聞きたい。掛け値なしの。