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今日の筆洗

2021年06月04日 | Weblog
 アフリカのセネガルでは「ブラジルインフルエンザ」、ブラジルでは「ドイツインフル」、ポーランド人はロシアの政治勢力を重ね「ボリシェビキ病」と呼んだそうである。結局、恐ろしい病気の呼称には、起源と無関係らしい国の名がついた。「スペイン風邪」である▼科学ジャーナリストのローラ・スピニーさんの本に教わった。そのスペインでは当初、「ナポリの兵士」と呼ばれたらしい。第一次大戦で中立だったため、他国ほど情報を秘密にせず、感染の印象が国外に伝わった。それが呼称につながったようだ▼「よその国や勢力のせいに」という心理が、感染症の命名には働くものらしい。スペインから、後に不当だという声もあがったが、百年を経て定着している▼新型ウイルスを「中国ウイルス」とトランプ前米大統領が言い、罪のないアジア系市民が憎悪の的になる事態が生まれたコロナ禍である。世界保健機関(WHO)がその変異株の呼称をギリシャ文字のアルファベットに切り替えたのも、特定の国に風評被害などが起きないためだ▼英国株、インド株はアルファ株とデルタ株と呼ぶ。うなずける変更だが、いきなり切り替える不都合や混乱はあるはずで、定着に時間が必要かもしれない▼ちなみに、よく研究した国の名を冠した感染症もある。「日本脳炎」はその一つだそうだ。日本人の貢献を再認識する。