東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2021年06月24日 | Weblog
 ある地質学者をインタビューした時のことだそうだ。インタビューが成功するかどうかはその準備にかかっている。質問を五十ほど用意していった。インタビューのための質問なら十分な数だろう▼しかし、相手の学者は予想以上の「強敵」でその質問の内容を細かく問い詰めてくる。「キミ、それどういう意味? こういう意味? それとも?」。答えられないでまごまごしていると怒られた。「キミ、そんなことじゃダメだよ」▼記者にとってインタビュー相手から勉強不足を指摘されることほど情けないものはないが、その人にもそんな経験があったとは。ジャーナリストで評論家の立花隆さんが亡くなった。八十歳。『田中角栄研究−その金脈と人脈』(一九七四年)、『宇宙からの帰還』(八三年)など幅広い分野で優れたノンフィクション作品や評論を数多く残した▼若き日に叱ってくれた学者を立花さんはずっと大切な先生と思っていたそうだ。取材で最も必要なのは質問力。インタビューでは聞き手の知性も試されている。もっともっと準備しなければ。その決意と旺盛な探求心が「知の巨人」をこしらえたのだろう▼粘りの人でもあった。田中元首相を長い間追い続けたのも「あんなやつらに負けてたまるか」という気持ちからだったと書いている▼天国の扉の前で、門番にしつこく質問しているその人が見える。