リバイバル公演の最終日は、原点に戻ってA1『PARTYが始まるよ』。
出演メンバーは、前田、高橋、小嶋、篠田、板野、峯岸、平嶋、浦野、佐藤由の1期生9名に、2期生から大島、河西、宮澤、秋元、増田、梅田、松原の7名を加えた構成。
2期生で現役メンバーの佐藤夏、小林が漏れている。現SDNの野呂、大堀も。
浦野、佐藤由の代わりに、佐藤夏、小林を入れて、「AKB現役の1期・2期生」という構成も考えられる所だったろうが、やはり浦野、佐藤由は外せないだろう。
1曲目『Partyがはじまるよ』冒頭は、まさかの浦野がセンターに。リラックスした和み感が画面からも伝わる。振付も激しくなく、余裕を感じさせる。メンバーたちも全員若返ったようで、楽しそうな雰囲気に満ちている。
『Dear my teacher』は、このセットリストでは「ダンサブルナンバー」(平嶋談)。反射的におニャン子クラブの『およしになってteacher』を連想してしまうが、意外なことに、この後、先生と生徒の恋愛を歌った曲は出ていない
(『恋を語る詩人になれなくて』は教師視点の詞とも取れるが)。
『毒リンゴを食べさせて』。「お腹とか痛くなっても平気」という所の、お腹を手で叩く振りでは、平嶋が思いっきり叩いている。力士が回しを叩くように(他意はない。可愛らしいという意味です)。このメンバーの中では、しっかり者のなっちゃんではなく、無邪気な妹として、安心してはしゃいでいる。
ユニット曲に移り、『スカート、ひらり』(前田、大島、高橋、板野、小嶋)。豪華メンバーが揃った。いわゆる神7で出演しているのは、あと篠田だが、まあこの5人で正解だろう。
大島のスカートの「ひらり」度合いが半端じゃない。黒いブルマの一番上まで見える大サービスだ。
『クラスメイト』(河西、宮澤、梅田、松原)。それぞれのソロを結構聴かせる。「通学路」「自転車」「十字路」「遠回り」「(今は)友達」の語彙は
、『偶然の十字路』『柊の通学路』という姉妹曲の原点だ。
『あなたとクリスマスイヴ』(秋元、増田)。同行した娘によれば、この曲だけが生歌だったというが、熱唱なるも、ハモリ部分があまり綺麗には決まっていなかった。後でCDを聴くと、副旋律は控えめに収録されており、元々難しいハモリなのだろう。
『キスはダメよ』(篠田、佐藤由、浦野)。アダルトな3人による歌唱。曲調や大人っぽい衣装で錯覚するが、改めて歌詞をよく聴くと「制服のままじゃダメ」と言っており、女子高生の歌なのだ。最初は人前でのキスを拒んでいるが、2番では「それはだめよ 伸ばした手を引っ込めなさい」とエスカレート。手はどこを触っていたのだろうか。
『星の温度』(平嶋、峯岸、河西、高橋)。クラスの人気者を、遠くから見ているだけの片思い。これは『Choose me』と同じ構図。天体望遠鏡で未来や心を覗くのは『☆の向こう側』と共通。平嶋が、5度目にして歌詞を間違えずに歌えたと満足げだった。
再び全体曲で『桜の花びらたち』。彼女たちの原点とも言える曲。淡々としたメロディ、シンプルな振り付けながら、サビの繰り返しでどんどん盛り上がっていく構成は見事。
楽しい時間は短く感じる。実際、曲数も少なくて短いのだが、それ以上に早く感じる。
ところが、この辺りから、前田の様子が急におかしくなる。涙ぐんでいるように見えるが、表情が硬く、不貞腐れているようにも見える。映画館ではどんどん切り替わっていく他のメンバーの表情が、どれも生き生きと輝いている中で、本来その中心であるはずの前田の表情が、(映っている範囲では)常に曇っているように見えた。それは異様な感じさえした。今公演はきっとDVDとして残ることになるだろうから、そういう表情が残ってしまうことは残念だ。
ホールや映画館で見ていた方は、どう感じただろうか。
懐かしさで感無量になったのか、パーティが終る寂しさで感傷的になったのか。それとも、公演の最後に、何か重大な発表があることを知らされた(または予感した)せいなのか。
『青空のそばにいて』。移ろい行く時間や気持ちの切なさは、その後も何回も歌われたテーマだ。「風に流されたのは雲じゃなく僕たちの方さ」とは、『ひこうき雲』にも繋がるフレーズ。
間奏の振り付けが、お遊戯みたいで可愛らしい。
そしてアンコール。
Tシャツとジーンズというラフな衣装で、『AKB48』、全員で再び『スカート、ひらり』。
本来アンコールとは、こういうものだと思う。アンコールがあることを前提に、セットリストの一部を組み込んでおくというのは、もはやアンコールではない。
『Everyday、カチューシャ』。この曲にはじめて参加する浦野も、しっかり踊っている。相変わらずきょとんとした表情で、年齢を感じさせない。全然イケている。
そして最後にもう一度『桜の花びらたち』。
『PARTYが始まるよ』公演の最後に、もう卒業ソングというのは、よく考えればおかしいが、むしろこれは「旅立ちの歌」と解釈するべきなのだろう。
心配していた重大発表はなく、公演は平穏に終了した。
前田の変調の原因は不明のまま。色々なことがあり、感情の起伏が激しくなっているのは確かだと思う。
最後は笑顔を見せており、安心した。
『PARTYが始まるよ』公演は、曲数も少なく、発展途上という風情だが、後々の曲のモチーフが既に様々盛り込まれており、まさに原点と言える公演だと再認識した。