AKB48 チームBのファンより

鈴木紫帆里さんを中心にAKB48 チームB について語るサイトです。

作詞家三浦徳子を偲んで。初期松田聖子の作品を回想。(ときめき研究家)

2023-11-23 17:32:06 | ときめき研究家
ミュージシャンや音楽関係者の訃報が相次いだ。自分との年齢も近く、自分が好きで聴いてきた音楽の作り手たちの逝去は、他人事とは思えない。
三浦徳子の最大の業績と言えば、やはり松田聖子を世に出したことだろう。
デビュー曲の『裸足の季節』から『青い珊瑚礁』『風は秋色』『チェリーブラッサム』『夏の扉』までのシングルと、アルバム『SQUALL』『North Wind』の全曲と『シルエット』のほとんどの楽曲を作詞した。トップアイドルとしての地位を獲得するまでを支えたと言える。
6枚目のシングル『白いパラソル』以降は、松本隆にバトンタッチされた。その後の多彩な楽曲により、松田聖子は既存アイドルの枠を超えた存在になった。なので松田聖子といえば松本隆という印象が強いが、デビュー後約1年半の三浦徳子による基礎があってこその、松本隆の応用・発展だったと考えている。強引に例えるなら、三浦徳子作品で160キロのストレートを投げられるようになり、その後松本隆作品で七色の変化球を身に付けた、そんな感じだ。

三浦徳子の歌詞は、しかし王道アイドルの正統的な歌詞かと言えば、そうでもない。どこか引っ掛かりのある、おかしなところもある歌詞なのだ。
『裸足の季節』では、出だしの「白いヨットの影」の「ヨット」が早口で妙に耳に残る。サビは「えくぼの秘密あげたいわ」という伸びやかな歌唱が印象的だが、「えくぼの秘密」とは何か? 洗顔フォームの商品名を強引に歌い込んでいるのは分かるが、謎めいた歌詞だ。
『青い珊瑚礁』では、冒頭サビ部分「あー私の恋は」が強烈に印象的だが、直後に「南の風に乗って走るわ」「青い風切って走れ」と、「恋」を擬人化し、かつ「風に乗れ」「風を切れ」と2つの違う命令をしていて混乱する。語感はとても良いし、意味よりもメロディーに合っていることを優先した歌詞なのだ。
アルバム『SQUALL』収録の『9月の夕暮れ』には、「銀杏並木 鮮やかな色」という歌詞があるが、銀杏の葉が色づくのは通常11月だから不正確だ。これもイメージ重視の歌詞と言える。
もう1つ。アルバム『North Wind』収録の『North Wind』には、そっけない彼の態度に「そうよそんなところも好きになった原因だから」という歌詞があり、「原因」という言葉に違和感があった。普通なら「理由」だろうが、メロディーには「原因」の方が合っている。
そういう小さな引っ掛かりはありながらも、歌いやすく、聴きやすい、メロディーに良く合った歌詞ばかりだったと思う。

松田聖子の初期楽曲の中で私が一番好きなのは、『チェリーブラッサム』のB面曲『少しずつ春』だ。もちろん作詞は三浦徳子だ。
過去記事でも書いたことがあるが、私が大学生だったころ、FM東京の番組『松田聖子のひとつぶの青春』の「聖子と電話でデート」というコーナーに出演し、3分ほど「デート(お話)」をした後、リクエストした曲だ。松本隆の手がまだ入っていない、基礎ポテンシャルが高いまま、がむしゃらに歌っている感じが素晴らしい。また、「月日はいたずらな子供みたいに冷やかし半分見ている」とか「木立が緑の会話をしはじめる」とか、三浦徳子お得意の擬人化もある。まだ2月なのに「緑の会話」というのも早すぎて、三浦徳子らしい。
ちなみに、3分間の「デート」の中で、カラオケではどんな歌を歌うのかと聖子に尋ねられ、1フレーズ歌わされたのが『君に薔薇薔薇・・・という感じ』だった。その曲も奇しくも三浦徳子作詞だった。

ネットで見つけた「オリコンニュース」の記事から、三浦徳子作詞曲の売り上げトップ15を引用する。ミリオンこそないが、間違いなく80年代を代表するヒットメーカーの一人だった。
1位…杏里「キャッツ・アイ」(1983年8月5日発売) オリコン週間シングルランキング最高1位、累積売上82.0万枚
2位…松田聖子「風は秋色/Eighteen」(1980年10月1日発売) 最高1位、累積売上79.7万枚
3位…松田聖子「チェリーブラッサム」(1981年1月21日発売) 最高1位、累積売上67.5万枚
4位…松田聖子「青い珊瑚礁」(1980年7月1日発売) 最高2位、累積売上60.3万枚
5位…八神純子「みずいろの雨」(1978年9月5日発売) 最高2位、累積売上58.8万枚
6位…松田聖子「夏の扉」(1981年4月21日発売) 最高1位、累積売上56.9万枚
7位…八神純子「パープルタウン」(1980年7月21日発売) 最高2位、累積売上56.4万枚
8位…工藤静香「嵐の素顔」(1989年5月3日発売) 最高1位、累積売上52.4万枚
9位…田原俊彦「君に薔薇薔薇…という感じ」(1982年1月27日発売) 最高3位、累積売上36.5万枚
10位…沢田研二「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」(1981/9/21発売) 最高6位、累積売上36.4万枚
11位…吉川晃司「モニカ」(1984年2月1日発売) 最高4位、累積売上33.9万枚
12位…シブがき隊「ZIGZAGセブンティーン/Gジャンブルース」(1982年10月28日発売) 最高5位、累積売上33.5万枚
13位…松田聖子「裸足の季節」(1980年4月1日発売) 最高12位、累積売上28.3万枚
14位…岩崎宏美「万華鏡」(1979年9月15日発売) 最高10位、累積売上27.8万枚
15位…郷ひろみ「お嫁サンバ」(1981年5月1日発売) 最高6位、累積売上27.3万枚
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NMB48『渚サイコー!』とカップリング曲を聴く。「てんとうむChu!」の思い出も。(ときめき研究家)

2023-11-04 13:16:06 | ときめき研究家
渋谷凪咲がNMB48を卒業するとのこと。この曲は卒業ソングのようだ。
彼女は、2013年に48グループの期待の新人で結成された横断ユニット「てんとうむChu!」のメンバーだった。その7名のメンバーの中で最後までグループに残ったことになる。
小嶋真子、西野美姫、岡田奈々、北川綾巴、田島芽瑠、朝長美桜はすでに卒業している。私の個人的な印象では、個性的なメンバー揃いの中で、渋谷は一番目立っていなかった。あまり自己主張をせずいつもニコニコしている印象だった。そんな彼女が最後までグループに在籍するとは不思議なものだ。

「てんとうむChu!」に関する過去記事は以下。
『君だけにChu!Chu!Chu!』
『選んでレインボー』
『スマイル神隠し』
『初恋のおしべ』
『ダンシは研究対象』
『清純タイアド』

『渚サイコー!』。
タイトルに個人名を堂々と盛り込んでいて、そんな曲は『上からマリコ』以来ではないか。一応海の「渚」と名前の「凪咲」を掛けてはいるが、歌詞の内容は卒業する彼女を絶賛する内容で、彼女がファンやメンバーに愛されていたことがうかがえる。
海で出会った彼女のルックスだけでなく独特のセンスに惹かれ、夢中になったが、別れは突然やって来る。切ないけれど君との思い出は宝物。「渚バイバイ」と笑って見送る。そんな歌詞と、王道のアイドルポップっぽい楽曲。サイコーの卒業ソングだ。

『ジンクスとゲンカツギ』。
ジンクスとは「2年目のジンクス」というように、悪いことが起きる時に使う言葉だ。良いことが起きる「ゲン担ぎ」と混同して使われているが、良いことには使わないのが正しい。そういう事実を教えてくれる歌だ。私も誤解していた。勉強になる。でも、たったそれだけのアイデアで1曲作ってしまう秋元康の力業には、いつもながら恐れ入る。
曲調はサスペンスっぽく、歌詞の内容とのアンバランスさが面白い。

『恋のヘタレ』。
強気の彼女に翻弄される「ヘタレ」男子の歌だ。そして大阪弁で歌われている。
男女の関係性はまちまちだが、この歌のように女性の方が主導権を持ち、男性の方が振り回されるパターンは案外安定しているものだ。それはそれで、その状況を楽しんでいたりもする。この曲もそのパターンで、とても幸福そうだ。そういう世界観に大阪弁はぴったりで、調和している。『恋の意気地なし』だとちょっとニュアンスが違う。過去の大阪弁歌詞の楽曲としては『ホンマにサンキュー』とテイストが似ている。

『職員室に行くべきか』。
授業中の教師の発言に納得できずに、質問をしようとしたらチャイムが鳴って時間切れ。それでもモヤモヤして、職員室に行って話をするべきかと自問し、実際に行くまでの心情を歌っている。珍しい状況を歌っていてユニークな歌詞だ。教師の発言など聴き流したり、納得できなくてもわざわざ対話しようとしない醒めた若者が多数だと思うが、彼は食い下がろうとしている。その姿勢は好ましい。
1つだけ残念なのは、その教師の発言とはどんな内容だったのか一切歌われていないことだ。それによって生徒である「僕」に共感できるかどうかが違ってくる。生徒を差別したり人格を否定するような発言か、それとも大人の価値観を押し付けるような発言か? でもそこはあえて具体的な歌詞にせず、聴き手の想像に任せているのかもしれない。自分が言われて嫌だったことを思い出してほしいという意図か? でも時間が経ち過ぎていて、私は思い出せない。
シリアスな内容とはうらはらな、穏やかなメロディーが心地よい。

『人生は長いんだ』。
フォーク調のしみじみした歌だ。渋谷凪咲のソロバージョンと、お笑い芸人たち(ダイアン、かまいたち、見取り図)と一緒に歌っているバージョンがある。番組での共演者なのだろうか。
この曲も渋谷凪咲の卒業ソングなのだろう。いや、彼女への応援ソングという方が適切か。人生の次のステージに歩き出す彼女に、「人生は長い」から着実に歩いていけばいいと励ましている。人生が長いか短いかは主観的なものだから何とも言えないが、まだ20台の彼女と60過ぎた私では受け止め方が違う。「人生は長い」と悠長なことは言っていられない私は、この曲を聴いて焦りを感じてしまった。
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