櫻坂46と日向坂46の新曲は、どちらもグループの特徴がよく出た曲だと思う。
櫻坂46『Start over!』
イントロから腹に響くようなベースの低音。ジャズのビッグバンドっぽいめくるめくサウンドにクールな曲調。
歌詞の内容は、タイトル通り「やり直せ」。忘れかけた夢、諦めかけた人生を取り戻し、やり直すのは今しかないという啓発ソングだ。欅坂時代から歌い続けていた反抗ソングの系列ではあるのだが、社会や大人への反発というより、自分自身の劣化、鈍化に対して抗おうとしている。
「深夜のコンビニのレンジで弁当温め どんな奇跡を待っているのか」というフレーズが刺さる。その後にも「自動ドア出た瞬間に別人にもなれる」「防犯カメラに守られるより自由がほしい」と、コンビニのイメージを持続させながら心情を重ねていく手法は見事だ。
歌われているとおり、何かを始めるのに遅すぎるということはない。60歳を過ぎて芥川賞を取った作家もいる。80歳を過ぎてゲームを作ったプログラマーがいる。私も59歳でようやく初めての長編小説を書き上げた(ただ、次回作がなかなか書けずにいる)。
ましてや、以前からずっと忘れていない夢ならば、これまで始めなかったのは熟成期間だったのであって、ようやく今始めるべき時が来たのだと思えばいい。これまでが怠惰だったとか、臆病だったとか反省しても何の益もない。でも、まさに今、その時が来たと自覚したのに何もしないのは怠惰だ。そんな厳しい歌なのだ。
この歌の特徴は、「君」に対して「僕」も、ただ上から目線で発破をかけて啓発するのではなく、自分も安全地帯のぬるま湯から抜け出したいと決意していることだ。この「君」と「僕」は、リスナーと櫻坂46のメンバーとも置き換えられるのだろう。
日向坂46『Am I ready?』
こちらは対照的に、フワフワ、シャラシャラしたつかみどころのないサウンドだ。韓流やNiziUの楽曲にありそうな感じだ。よく言えばお洒落、意地悪に言えば聴き流してしまいそうな楽曲。
歌詞の内容も、ほとんどどうでもいいような内容。久しぶりの恋のときめきを、ノーマークだった幼馴染に感じて、キスの準備はできているの?と自分に問いかけている、そんな感じだ。ありがちな状況を、ありがちな言葉で描いている。
でも、この曲はそれがいいのだろう。何回も聴き流しているうちに、なぜか印象に残り、無意識に口ずさんでいるとか、そういう楽曲なのだろう。もちろんメンバーのファンなら、その子の歌唱やダンスをつぶさに追いかけて楽しむのだろうが。
乃木坂46の『おひとりさま天国』を含めて、3グループはうまく世界観を棲み分けている。それぞれのグループらしい楽曲を歌っている。シャッフルして、別のグループが別の曲を歌っても、何かしっくりこないのではないか。それがグループの個性。
ところが一筋縄では行かないのは、カップリング曲には、そういうグループの個性にはお構いなしに様々なテイストの楽曲が収録されている。櫻坂に日向坂っぽい楽曲があったり、その逆もしかり。考えてみればそれも当たり前だ。ソロアイドル、例えば松田聖子や中森明菜だって、1人で実に多様な楽曲を歌っていたのだから。
櫻坂46『Start over!』
イントロから腹に響くようなベースの低音。ジャズのビッグバンドっぽいめくるめくサウンドにクールな曲調。
歌詞の内容は、タイトル通り「やり直せ」。忘れかけた夢、諦めかけた人生を取り戻し、やり直すのは今しかないという啓発ソングだ。欅坂時代から歌い続けていた反抗ソングの系列ではあるのだが、社会や大人への反発というより、自分自身の劣化、鈍化に対して抗おうとしている。
「深夜のコンビニのレンジで弁当温め どんな奇跡を待っているのか」というフレーズが刺さる。その後にも「自動ドア出た瞬間に別人にもなれる」「防犯カメラに守られるより自由がほしい」と、コンビニのイメージを持続させながら心情を重ねていく手法は見事だ。
歌われているとおり、何かを始めるのに遅すぎるということはない。60歳を過ぎて芥川賞を取った作家もいる。80歳を過ぎてゲームを作ったプログラマーがいる。私も59歳でようやく初めての長編小説を書き上げた(ただ、次回作がなかなか書けずにいる)。
ましてや、以前からずっと忘れていない夢ならば、これまで始めなかったのは熟成期間だったのであって、ようやく今始めるべき時が来たのだと思えばいい。これまでが怠惰だったとか、臆病だったとか反省しても何の益もない。でも、まさに今、その時が来たと自覚したのに何もしないのは怠惰だ。そんな厳しい歌なのだ。
この歌の特徴は、「君」に対して「僕」も、ただ上から目線で発破をかけて啓発するのではなく、自分も安全地帯のぬるま湯から抜け出したいと決意していることだ。この「君」と「僕」は、リスナーと櫻坂46のメンバーとも置き換えられるのだろう。
日向坂46『Am I ready?』
こちらは対照的に、フワフワ、シャラシャラしたつかみどころのないサウンドだ。韓流やNiziUの楽曲にありそうな感じだ。よく言えばお洒落、意地悪に言えば聴き流してしまいそうな楽曲。
歌詞の内容も、ほとんどどうでもいいような内容。久しぶりの恋のときめきを、ノーマークだった幼馴染に感じて、キスの準備はできているの?と自分に問いかけている、そんな感じだ。ありがちな状況を、ありがちな言葉で描いている。
でも、この曲はそれがいいのだろう。何回も聴き流しているうちに、なぜか印象に残り、無意識に口ずさんでいるとか、そういう楽曲なのだろう。もちろんメンバーのファンなら、その子の歌唱やダンスをつぶさに追いかけて楽しむのだろうが。
乃木坂46の『おひとりさま天国』を含めて、3グループはうまく世界観を棲み分けている。それぞれのグループらしい楽曲を歌っている。シャッフルして、別のグループが別の曲を歌っても、何かしっくりこないのではないか。それがグループの個性。
ところが一筋縄では行かないのは、カップリング曲には、そういうグループの個性にはお構いなしに様々なテイストの楽曲が収録されている。櫻坂に日向坂っぽい楽曲があったり、その逆もしかり。考えてみればそれも当たり前だ。ソロアイドル、例えば松田聖子や中森明菜だって、1人で実に多様な楽曲を歌っていたのだから。