菊池桃子の新アルバム『Shadow』を購入し、通勤時や運転時にゴキゲンで聴いている。
全16曲のうち14曲は、アイドル時代のアルバム4枚(『OCEAN SIDE』『TROPIC of CAPRICORN』『ADVENTURE』『ESCAPE FROM DEMENTION』)からピックアップされた楽曲。新曲が2曲、アルバムの最初と最後に入っている。今回の選曲元となっている4枚は、今回の新アルバムをプロデュースしている林哲司が、当時プロデュースした4枚ということだろう。
最近「シティポップ」ブームとやらで、俄かに菊池桃子にも脚光が当たっているようだ。今回の新アルバムもその流れの中でのリリースで、林哲司との共同制作という位置づけとのことだ。
シティポップとは何か?私はよくわかっていない。Wikipediaでも、曖昧な概念であると解説していた。
少なくとも私は、1980年代当時は、菊池桃子を「アイドルポップ」として聴いていた。ただ、アイドルのアルバムとしては、異色を放っていたことは事実だ。「都会的で洗練されたサウンド」重視の楽曲で占められていて、作り手としては「杉山清貴とオメガトライブ」の女性版的な位置づけで作っていたと思う。
ただ、今となってはジャンル分けなどどうでもいい。当時、こだわりを持ったアルバムづくりを貫いていたから、長い年月を経て、思わぬ形で再び脚光を浴びる日が来たのだと言える。それもまた一つの奇跡だろう。
桃子のささやくような歌唱法が、サウンドにマッチしているのだと思う。歌詞を聴くというより、サウンドに溶け込んだ楽器として「音」を聴いている。「声は楽器」というのは、30周年コンサートのトークで本人も言っていたので、そういう意識はあるのだろう。
私は普段アイドルポップの歌詞を中心に聴く方なので、本来はもっと集中して歌詞を聴いているはずだ。しかし、桃子のウイスパーボイスを聴いていると、どうも歌詞が頭に入ってこないというか、意味を理解することを放棄させられてしまうような感覚に陥る。もう、それでいいと思っている。
ただし、『青春のいじわる』『卒業』などのシングル曲は、歌詞の意味が入ってくる。シングル曲とアルバム曲では違った意図を持って作られていたのだろう。
新アルバムの選曲は徹底している。
シングル曲を一切入れていないのが潔い。あくまで「シティポップ」にこだわっているのだ。4枚のアルバムからどの曲を選ぶかは、相当吟味されたのだろう。各アルバムの顔であるA面1曲目からは3曲選ばれているし、セカンドアルバムからはラストの『南回帰線』を収録している。セカンドアルバムだけはラストが顔と言えるだろう(因みに1曲目は『卒業』)。
『Dreamin’ Rider』や『夜明けのバスターミナル』などアップテンポな人気曲も外さずに収録されている。
初夏のゴルフ場へのドライブでは必ず聴く『OCEAN SIDE』。『Blind Curve』の次の曲は『SUMMER EYES』だと耳が憶えているので、新アルバムでの曲順に意外感を覚えるのもまた楽しい体験だ。
新曲2曲の感想を記す。
『Again』。売野雅勇作詞、林哲司作曲・編曲。
いかにもシティポップといった雰囲気で、緊迫感のあるイントロから始まるが、いつもの桃子の歌唱でほっとする。歌詞に重きは置けないが、タイトル通り、もう一度立ち上がれというようなことを歌っている。それは昔の楽曲が再び脚光を浴びて光り輝くことの暗喩でもあるのだろう。そういう意味で、新アルバムの幕開けにふさわしい楽曲と言える。
『奇跡のうた』。吉元由美作詞、林哲司作曲・編曲。
新アルバムの掉尾を飾るのは、一転して穏やかな楽曲だ。生きているだけで奇跡、その奇跡に感謝しようという歌詞で、決して平たんではなかった彼女の人生と重ね合わせても感慨深いものがある。図らずも、ファーストアルバム収録の『I WILL』にも通じるような、宇宙を感じる世界観になっている。
まるで聖母のような歌唱に心が洗われる。このアルバムに出逢えたことに感謝する。
ささやくような桃子の歌唱は全く変わっておらず、当時から高い完成度だったことを再認識する。
しかし、新曲2曲を昔の曲と比べると、当たり前だが少女らしさの中に少しだけ円熟を感じる声になっている。一方、アイドル時代の歌唱にはまだ少し幼さ、拙さが残っている部分が聴き取れ、そういう対比ができるのもまた楽しい。
ところで、今回のアルバムを全く躊躇なく購入したが、後からよく考えると、桃子のアルバムは全て持っているから、新曲2曲だけを配信で購入するという方法もあったはずだ。通常のベストアルバムならきっとそうしたはずだ。
しかしそうではなく、迷わずCD現物を購入したのはなぜだろう。それは、2曲の新曲という以上の付加価値を感じたから。どの曲が選ばれ、どんな順番に収録されているのか、それを車で聴くとどんな感じなのだろう、そう思うとワクワクしたから。趣味とはそういうワクワクを求めるものだろう。
ついでに言えば、バンド「RA MU」名義の『Thanks Giving』、その後ソロに戻った『ミラーレ~鏡の向こうへ~』も持っていて、同じくらい愛聴しているが、その2枚も結構「シティポップ」だと思う。
菊池桃子デビュー30周年アルバム『青春ラブレター』の感想。
菊池桃子デビュー30周年コンサートの感想。
全16曲のうち14曲は、アイドル時代のアルバム4枚(『OCEAN SIDE』『TROPIC of CAPRICORN』『ADVENTURE』『ESCAPE FROM DEMENTION』)からピックアップされた楽曲。新曲が2曲、アルバムの最初と最後に入っている。今回の選曲元となっている4枚は、今回の新アルバムをプロデュースしている林哲司が、当時プロデュースした4枚ということだろう。
最近「シティポップ」ブームとやらで、俄かに菊池桃子にも脚光が当たっているようだ。今回の新アルバムもその流れの中でのリリースで、林哲司との共同制作という位置づけとのことだ。
シティポップとは何か?私はよくわかっていない。Wikipediaでも、曖昧な概念であると解説していた。
少なくとも私は、1980年代当時は、菊池桃子を「アイドルポップ」として聴いていた。ただ、アイドルのアルバムとしては、異色を放っていたことは事実だ。「都会的で洗練されたサウンド」重視の楽曲で占められていて、作り手としては「杉山清貴とオメガトライブ」の女性版的な位置づけで作っていたと思う。
ただ、今となってはジャンル分けなどどうでもいい。当時、こだわりを持ったアルバムづくりを貫いていたから、長い年月を経て、思わぬ形で再び脚光を浴びる日が来たのだと言える。それもまた一つの奇跡だろう。
桃子のささやくような歌唱法が、サウンドにマッチしているのだと思う。歌詞を聴くというより、サウンドに溶け込んだ楽器として「音」を聴いている。「声は楽器」というのは、30周年コンサートのトークで本人も言っていたので、そういう意識はあるのだろう。
私は普段アイドルポップの歌詞を中心に聴く方なので、本来はもっと集中して歌詞を聴いているはずだ。しかし、桃子のウイスパーボイスを聴いていると、どうも歌詞が頭に入ってこないというか、意味を理解することを放棄させられてしまうような感覚に陥る。もう、それでいいと思っている。
ただし、『青春のいじわる』『卒業』などのシングル曲は、歌詞の意味が入ってくる。シングル曲とアルバム曲では違った意図を持って作られていたのだろう。
新アルバムの選曲は徹底している。
シングル曲を一切入れていないのが潔い。あくまで「シティポップ」にこだわっているのだ。4枚のアルバムからどの曲を選ぶかは、相当吟味されたのだろう。各アルバムの顔であるA面1曲目からは3曲選ばれているし、セカンドアルバムからはラストの『南回帰線』を収録している。セカンドアルバムだけはラストが顔と言えるだろう(因みに1曲目は『卒業』)。
『Dreamin’ Rider』や『夜明けのバスターミナル』などアップテンポな人気曲も外さずに収録されている。
初夏のゴルフ場へのドライブでは必ず聴く『OCEAN SIDE』。『Blind Curve』の次の曲は『SUMMER EYES』だと耳が憶えているので、新アルバムでの曲順に意外感を覚えるのもまた楽しい体験だ。
新曲2曲の感想を記す。
『Again』。売野雅勇作詞、林哲司作曲・編曲。
いかにもシティポップといった雰囲気で、緊迫感のあるイントロから始まるが、いつもの桃子の歌唱でほっとする。歌詞に重きは置けないが、タイトル通り、もう一度立ち上がれというようなことを歌っている。それは昔の楽曲が再び脚光を浴びて光り輝くことの暗喩でもあるのだろう。そういう意味で、新アルバムの幕開けにふさわしい楽曲と言える。
『奇跡のうた』。吉元由美作詞、林哲司作曲・編曲。
新アルバムの掉尾を飾るのは、一転して穏やかな楽曲だ。生きているだけで奇跡、その奇跡に感謝しようという歌詞で、決して平たんではなかった彼女の人生と重ね合わせても感慨深いものがある。図らずも、ファーストアルバム収録の『I WILL』にも通じるような、宇宙を感じる世界観になっている。
まるで聖母のような歌唱に心が洗われる。このアルバムに出逢えたことに感謝する。
ささやくような桃子の歌唱は全く変わっておらず、当時から高い完成度だったことを再認識する。
しかし、新曲2曲を昔の曲と比べると、当たり前だが少女らしさの中に少しだけ円熟を感じる声になっている。一方、アイドル時代の歌唱にはまだ少し幼さ、拙さが残っている部分が聴き取れ、そういう対比ができるのもまた楽しい。
ところで、今回のアルバムを全く躊躇なく購入したが、後からよく考えると、桃子のアルバムは全て持っているから、新曲2曲だけを配信で購入するという方法もあったはずだ。通常のベストアルバムならきっとそうしたはずだ。
しかしそうではなく、迷わずCD現物を購入したのはなぜだろう。それは、2曲の新曲という以上の付加価値を感じたから。どの曲が選ばれ、どんな順番に収録されているのか、それを車で聴くとどんな感じなのだろう、そう思うとワクワクしたから。趣味とはそういうワクワクを求めるものだろう。
ついでに言えば、バンド「RA MU」名義の『Thanks Giving』、その後ソロに戻った『ミラーレ~鏡の向こうへ~』も持っていて、同じくらい愛聴しているが、その2枚も結構「シティポップ」だと思う。
菊池桃子デビュー30周年アルバム『青春ラブレター』の感想。
菊池桃子デビュー30周年コンサートの感想。