AKB48 チームBのファンより

鈴木紫帆里さんを中心にAKB48 チームB について語るサイトです。

AKB48『アイドルなんかじゃなかったら』を聴く。(ときめき研究家)

2023-08-31 19:59:38 | ときめき研究家
AKB48の新曲は、一見刺激的なタイトルの問題作だ。しかし、実は、AKBグループの初期の頃から何回も繰り返し歌われてきた「アイドルの心得」を改めて宣言するという意味合いの楽曲だと解釈する。

昨年、岡田奈々の恋愛が発覚した際に、「緊急投稿、いま改めて恋愛禁止を考える」という記事を書いた。
その記事の主旨は、「AKBグループにとって、恋愛禁止は自覚と自己責任で守るべき規範である」ということ、そしてそれは遥か昔、2013年に『清純フィロソフィー』で明示されているということだった。
それでも理解していないメンバーがいる、あるいはファンもいる。だったら、カップリング曲なんかではなくシングル表題曲として、より明確な形でその規範を示そうとしたのが『アイドルなんかじゃなかったら』なのだろう。そう感じた。岡田奈々も卒業し、2013年以降に加入したメンバーがほとんどになった今、ここまではっきり言わないと分からないのかという嘆きのような気配もうっすら感じられる。

もう一つ憶測するなら、YOASOBIの『アイドル』のヒットに触発された秋元康が、対抗心を燃やして作ったのかもしれない。YOASOBIと比較すると、アイドル自身の視点に固定して、より分かりやすい内容の歌詞になっている。アイドルと恋愛という古くて新しいテーマに、こっちはもう何十年も付き合ってきたんだよという気概を感じる。令和版『なんてったってアイドル』はこっちだよ、と言っているようだ。「飛び降りる」「スキャンダル」「アイドルはやめられない」という、元祖『なんてったってアイドル』と共通のフレーズを目立つように使っているのがその証拠だ。

ファンの中に好きな人がいる。でもステージ上から微笑むことしかできない。私がアイドルなんかじゃなかったら告白し、キスもしたいのに。
そんな歌詞は、ファンに「もしかしたら」という幻想を抱かせるようなあざといレトリックだ。
でもアイドルはやめられない。ファンを裏切れない。卒業するまでは誰も好きにならない。そういう歌詞を直後に置くことで、その健気なプロ意識を応援したいという気にさせる。
そう、疑似恋愛はどんどんしてください、でもあくまで疑似ですよと、ファンを教育し飼いならす目的の歌詞でもあるのだ。
こういうコンセプトソングの上手さは秋元康の真骨頂だろう。

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乃木坂46『おひとりさま天国』を聴く。(ときめき研究家)

2023-08-10 18:56:42 | ときめき研究家
乃木坂46の『おひとりさま天国』は、わかり易く、それでいて色々なことを考えさせる楽曲だ。

友達は皆いつも恋バナばかりで、おひとり様は肩身の狭い思いをして来たが、慣れるとおひとり様は快適で天国だという歌詞。他人の目を気にせず、自分の心地よい生き方でいいのだというメッセージソングである。

ただ、影響力のある乃木坂46が歌うには、このメッセージは10年遅すぎたのではないか。既に現在の日本社会において、おひとり様は充分に市民権を得ており、敢えて世に訴えるという役割は無用と思われる。どちらかと言えば、世の中の風潮に追随して歌を作った感さえある。
という私の感覚がずれている可能性もある。若者の世界では、今もって恋愛至上主義、恋人自慢が盛んで、恋人がいない娘はかわいそう、一人が好きなんて変わり者、そんな空気が残存しているのだろうか。若者は案外保守的だし、空気を読むことに過敏だと聞く。もしそうだとすれば、人気アイドルグループである乃木坂46のメッセージは、少数派であるおひとり様たちにとって救いとなるのかもしれない。

そもそも「おひとり様」には2つの意味がある。1つは、恋人や配偶者のいない独身、シングルという意味。
もう1つは、恋人がいる・いないに関わらず、1人で行動する人という意味だ。独身であっても、1人で食事や映画に行くことができず、いつも友達を誘うというタイプの人もいる。逆に、恋人がいても常時2人で行動するのではなく、1人でキャンプや旅行に行くのを好む人もいる。人それぞれだ。

この歌の「おひとり様」とはどちらの意味なのか? 1番は前者、2番は後者の意味のように聞こえる。恋人がいなくても平気、1人で行動するのも平気。両方の意味でおひとり様は天国だと歌っている。2つの意味をあまり区別せず使っているようだ。恋人がいれば2人で行動するのが普通、恋人がいなければ1人で行動するのが普通、そう決めつけているようだが、本来はそうではないのではないか。

一方で、世の中で市民権を得ているのはどちらの意味の「おひとり様」なのか考えてみたが、主に後者だろう。1人焼肉、1人カラオケ、1人キャンプ、1人旅など、「1人〇〇」は普及して来ている。それは経済的要因であって、1人客を獲得することがお店やサービス提供者の利益になるからだ。
一方で前者の「おひとり様」を貫いて「生涯独身」で過ごす人も増えてきているが、彼らにとって住みやすい社会かどうかは微妙だと思う。少なくとも「天国」ではなかろう。少子化、晩婚・非婚化に焦る政治家たちは、「早婚多産社会(産めよ増やせよ)」への回帰を望んですらいるだろう。そう考えれば、乃木坂46の『おひとりさま天国』は、遅すぎたとも言えないのかもしれない。

曲調はアップテンポで心地いいが、どこか野暮ったく、日本的なサウンドだ。「〇〇音頭」的なノリを感じる。イントロや間奏の俗っぽいメロディーに心を奪われる。特にAメロは何かに似ていると思ったが、NMB48『ワロタピーポー』のAメロに雰囲気が酷似している。
カップルで過ごす日として「誕生日、クリスマス、バレンタインデー、ゴールデンウイーク」を挙げているが、AKB・坂道グループ伝統の「3大きっかけデー」にゴールデンウイークを追加しているのが新しい。
(「3大きっかけデー」は、『気づいたら片想い』『1,2,3,4ヨロシク』などに登場)

ちょっと脱線して、『〇〇天国』というタイトルが付いたアイドルの楽曲を思い出してみる。
『学園天国』(1974年:フィンガー5、1989年:小泉今日子がカバー)は、両バージョンともロック調の派手なアレンジでヒットした。歌詞の内容は、クラスの「席替え」で憧れの彼女の隣になれるか祈るという他愛のない学園ソング。その他愛なさがシンプルでいいのだろう。
『メビウス天国』(1987年:水谷麻里)は、不思議系アイドル水谷麻里の7枚目のシングル。「ヘッドフォン電車で聴くな」とか「ファッション雑誌を持つな」とか「振られて海など見るな」とか、オタク系男子を叱咤激励するような歌詞が秀逸。本人もノリノリで歌っていて、エンディング近くの「メビウス天国」の部分の声が裏返っているのに、制作側もそのテイクをそのまま使う荒業を見せていた。何がメビウスなのかは未だに不明。
『フリフリ天国』(1990年高岡早紀)もアンニュイな雰囲気の隠れた名曲。
アイドル以外では『おさかな天国』(1991年:柴谷裕美)、『サーフ天国、スキー天国』(1980年:松任谷由実)などという曲もあった。

『〇〇天国』ではないが、『天国のキッス』(1983年:松田聖子)、『天国にいちばん近い島』(1984年:原田知世)などもある。AKB48では『天国野郎』(2009年:チームB:センターは浦野一美)。天国ではないが英語だと『稲妻パラダイス』(1984年:堀ちえみ)、『パラダイス銀河』(1988年:光GENJI)も懐かしい。
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