2017.09.15 私道の財産評価
私道の用に供されている宅地の価額は、自用地として計算した価額の100分の30で評価し、さらに、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しないとされています(財産評価基本通達24)。
この通達の取扱いに関し、課税庁は、「不特定多数の者の通行の用に供されている」の解釈をかなり限定的に解釈していました。
この解釈に関し、平成29年2月28日、最高裁は納税者敗訴の1審、2審を破棄し、
(1)都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備され、
(2)道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものであり、
(3)居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている「歩道状空地」については、
評価通達24に基づき評価できると判断しました。
■原審(東京高等裁判所 平成27(行コ)286)の要旨
「財産評価基本通達24にいう私道とは特段の事情のない限り、道路内の建築制限(建築44条)や私道の変更等の制限(同45条)などの制約があるものを指し、建築基準法等の法令上の制約がある土地ではなく(中略)各歩道状空地が市から要綱等に基づく指導によって設置されたことをもって(中略)制約と評価する余地があるとしても、これは被相続人がそれを受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えた上での選択の結果生じたもの(中略)利用形態を変更することにより通常の宅地と同様に利用することができる潜在的可能性と価値を有するから評価通達24にいう私道供用宅地に該当しない。」
■最高裁判決( 平成28(行ヒ)169、民集第71巻2号296頁)
「相続税に係る財産の評価において、私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を、建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する理由はなく、そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は、私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。」
「これを本件についてみると、本件各歩道状空地は、車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので、いずれも相応の面積がある上に、本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また、本件各歩道状空地は、いずれも本件各共同住宅を建築する際、都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり、本件各共同住宅が存在する限りにおいて、上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。そして、これらの事情に照らせば、本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、このことから直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできない。」
(完)
私道の用に供されている宅地の価額は、自用地として計算した価額の100分の30で評価し、さらに、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しないとされています(財産評価基本通達24)。
この通達の取扱いに関し、課税庁は、「不特定多数の者の通行の用に供されている」の解釈をかなり限定的に解釈していました。
この解釈に関し、平成29年2月28日、最高裁は納税者敗訴の1審、2審を破棄し、
(1)都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備され、
(2)道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものであり、
(3)居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている「歩道状空地」については、
評価通達24に基づき評価できると判断しました。
■原審(東京高等裁判所 平成27(行コ)286)の要旨
「財産評価基本通達24にいう私道とは特段の事情のない限り、道路内の建築制限(建築44条)や私道の変更等の制限(同45条)などの制約があるものを指し、建築基準法等の法令上の制約がある土地ではなく(中略)各歩道状空地が市から要綱等に基づく指導によって設置されたことをもって(中略)制約と評価する余地があるとしても、これは被相続人がそれを受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えた上での選択の結果生じたもの(中略)利用形態を変更することにより通常の宅地と同様に利用することができる潜在的可能性と価値を有するから評価通達24にいう私道供用宅地に該当しない。」
■最高裁判決( 平成28(行ヒ)169、民集第71巻2号296頁)
「相続税に係る財産の評価において、私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を、建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する理由はなく、そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は、私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。」
「これを本件についてみると、本件各歩道状空地は、車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので、いずれも相応の面積がある上に、本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また、本件各歩道状空地は、いずれも本件各共同住宅を建築する際、都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり、本件各共同住宅が存在する限りにおいて、上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。そして、これらの事情に照らせば、本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、このことから直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできない。」
(完)