2015.01.03 税務調査:理由付記
国税庁長官は「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」を国税局長に通知し、税務調査に当たっての基本的な考え方を定めました(平成26年4月3日改正)。
内容は、①調査と行政指導の区分の明示②事前通知に関する手続③調査時における手続④調査終了の際の手続⑤理由附記の実施、というように5つに分かれています。
この中で⑤の理由付記の実施については、「処分の適正性を担保するとともに処分の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を図るとの理由付記が求められる趣旨が確保されるよう、適切にこれを行う。」と定めています。
そこで今回はこの理由付記について解説したいと思います。
行政手続法は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない(第8 条)。」と規定し、また、「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない(第14 条)。」と規定しています。
簡単に言うと、税務署長は納税者の申請を拒否する処分や、税務調査で納税者にとって不利益な更正処分をする場合には、その納税者に対してその理由を書面で示さなければならないということです。
これを理由付記といいます。
したがって、税務調査で納税者が不利益な更正処分を受けたときでも、法的根拠となる理由、金額の算定根拠などの事項が記載されていない場合には、理由付記が十分ではないとして争われ、税務署の課税処分が取り消される場合があります。
最高裁の裁判例としては、「いかなる事実が法人税法第127条第1項第3号に該当するとして青色取消処分がなされたかを請求人においてその記載自体から了 知し得るものということはできないから、同条第2項の定める理由付記の要件を欠くものであるとするのが相当である。最高裁昭和49年4月25日第一小法廷 判決(民集28巻3号405頁)」
「当該更正通知書に付記された理由は、どのような根拠で架空の資産と判断したのかについて資料の摘示がなく、その判断過程も記載されていないことから、法 人税法第130条《青色申告書等に係る更正》第2項に規定する要件を満たさない違法なものである。最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻 3号850頁)」
などの判決があります。
ただし行政手続法第8条1項ただし書きには、「法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その 他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであ るときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」と規定されています。
例えば税法の条文等に提出期限や計算期間、金額、数量などが明定されている場合などがこれに該当します。
(完)
国税庁長官は「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」を国税局長に通知し、税務調査に当たっての基本的な考え方を定めました(平成26年4月3日改正)。
内容は、①調査と行政指導の区分の明示②事前通知に関する手続③調査時における手続④調査終了の際の手続⑤理由附記の実施、というように5つに分かれています。
この中で⑤の理由付記の実施については、「処分の適正性を担保するとともに処分の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を図るとの理由付記が求められる趣旨が確保されるよう、適切にこれを行う。」と定めています。
そこで今回はこの理由付記について解説したいと思います。
行政手続法は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない(第8 条)。」と規定し、また、「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない(第14 条)。」と規定しています。
簡単に言うと、税務署長は納税者の申請を拒否する処分や、税務調査で納税者にとって不利益な更正処分をする場合には、その納税者に対してその理由を書面で示さなければならないということです。
これを理由付記といいます。
したがって、税務調査で納税者が不利益な更正処分を受けたときでも、法的根拠となる理由、金額の算定根拠などの事項が記載されていない場合には、理由付記が十分ではないとして争われ、税務署の課税処分が取り消される場合があります。
最高裁の裁判例としては、「いかなる事実が法人税法第127条第1項第3号に該当するとして青色取消処分がなされたかを請求人においてその記載自体から了 知し得るものということはできないから、同条第2項の定める理由付記の要件を欠くものであるとするのが相当である。最高裁昭和49年4月25日第一小法廷 判決(民集28巻3号405頁)」
「当該更正通知書に付記された理由は、どのような根拠で架空の資産と判断したのかについて資料の摘示がなく、その判断過程も記載されていないことから、法 人税法第130条《青色申告書等に係る更正》第2項に規定する要件を満たさない違法なものである。最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻 3号850頁)」
などの判決があります。
ただし行政手続法第8条1項ただし書きには、「法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その 他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであ るときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」と規定されています。
例えば税法の条文等に提出期限や計算期間、金額、数量などが明定されている場合などがこれに該当します。
(完)