大槻雅章税理士事務所

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№77 法人税:雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の税額控除

2015-05-06 | ブログ
2015.04.01 法人税:雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の税額控除

今回は、お問い合わせが多かった「国内勤務の使用人に支払った給与等が増加した場合の法人税額控除」について解説いたします。
要件(3)が改正されましたので、継続雇用者の定義にご注意ください。

1.概略

青色申告法人が、平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合、三つの適用要件を満たすときには法人税額控除が認められるという制度です。

(注1)国内雇用者とは、法人の使用人(その法人の役員の特殊関係者および使用人兼務役員を除きます。)のうち国内の事業所に勤務する雇用者(具体的には、その法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者)をいいます。正社員、アルバイト、日雇い等も含まれます。

(注2)給与等とは、所得税法第28条第1項に規定する給与等をいいます。退職金は含まれませんが、通勤手当や少額の経済的利益は給与等に含むことができます。
ただし、適用年度に通勤手当等を含む場合には、その前事業年度や基準年度の計算も同じ方法で行わなければなりません(措通42の12の4-1の2)。

(注3)出向先法人が出向元法人に給与負担金(社会保険料の事業主負担部分を除く)を支出する場合において、出向元法人が出向した使用人に対する給与を支給することとしているときは、出向先法人から受けた当該出向負担金の額は出向元法人の給与等の支給額から控除します(措通42の12の4-2、42の12の4-3)。

2.適用要件

この制度の適用を受けるためには、次の(1)から(3)までの要件を全て満たす青色申告書を提出する法人に限られます。

要件(1)支給総額が基準年度より一定の割合以上増加していること。

雇用者給与等支給増加額(注1)≧基準雇用者給与等支給額(注2)×各年度の増加割合(注3)

(注1)雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
したがって、雇用者給与等支給増加額=雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額となります。

(注2)基準雇用者給与等支給額は、基準事業年度(平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日の前日を含む事業年度。例えば、平成27年3月決算の法人の場合は平成25年3月期となります。)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

(注3)各年度の増加割合とは、平成27年4月1日前に開始する事業年度については2%以上、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度については3%以上、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度については5%以上とされています。



要件(2)支給総額が前事業年度以上であること。

雇用者給与等支給額(注1)≧比較雇用者給与等支給額(注2)


(注1)雇用者給与等支給額とは上記要件(1)の(注1)のとおり。

(注2)比較雇用者給与等支給額とは、適用年度の前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
なお、適用年度とその前事業年度の月数が異なる場合は一定の調整計算をします。



要件(3)継続雇用者に対する平均支給額が前事業年度を超えていること。

平均給与等支給額(注1)>比較平均給与等支給額(注2)


(注1)平均給与等支給額=適用年度の継続雇用者に対する給与等の支給額(A)÷適用年度の各月の(A)の支給対象者数の合計数。

(注2)比較平均給与等支給額=適用年度の前事業年度の継続雇用者に対する給与等の支給額(B)÷適用年度の前事業年度の各月の(B)の支給対象者数の合計数。

(注3)継続雇用者とは、適用年度およびその前年度において給与等の支給を受けた国内雇用者をいいます(措法42の12の4②六)。
したがって、適用年度と前年度に1回でも給与等の支給を受けた者は継続雇用者に該当し、要件(3)の計算対象に含まれます。

また、雇用保険法第60条の2①第一号に規定する一般被保険者に該当する者に対して支給した給与等のみを平均給与等の計算対象とし、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条①二に規定する継続雇用制度の対象である者として財務省令で定める者(つまり60歳定年退職後に継続雇用されている者)に対して支払った給与等は平均給与等の計算対象から除きます。

3.税額控除限度額

税額控除限度額は、雇用者給与等支給増加額の10%相当額です。
ただし、法人税額の10%(中小企業者等については20%)が限度となります。


(完)

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