大槻雅章税理士事務所

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№119 消費税の「税抜経理方式」と「税込経理方式」

2019-02-20 | ブログ
2019.02.20

今回は、消費税の税抜経理と税込経理のメリット・デメリットについて質問がありましたので解説します。

消費税の納税義務者である事業者は、「税抜経理方式」と「税込経理方式」のいずれかの経理処理を選択できます。ただし、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は「税込経理方式」によります。

「税抜経理方式」とは、取引額を本体価格と消費税額に区別して経理する方法で、「税込経理方式」とは消費税込みの取引額で経理する方法です。

「税込経理方式」を選択した事業者は、消費税等の納付税額を租税公課として必要経費又は損金の額に算入するので、いずれの方法を選択しても会計上の当期利益は同じになります。

ところが税務上の所得金額を算出するときには以下のようなメリット・デメリットが生じます。


(1)交際費課税


法人税法上、中小企業の交際費は年間800万円を超えると損金不算入となります。税抜740万円で税込み800万円になるので、差額60万「税抜経理方式」の方が有利となります。
また、交際費等の範囲から1人当たり5,000 円以下の飲食費は除外されます。税抜4,629円で税込み5,000円になるので、差額371円「税抜経理方式」の方が有利となります。
よって交際費課税の計算上、「税込経理方式」より「税抜経理方式」の方が有利となります。

(2)減価償却費

取得価額10万未満の少額減価償却資産は、事業の用に供した事業年度において損金算入することができます。また、取得価額20万円未満の減価償却資産は、3年間で減価償却する一括償却資産の損金算入の規定を選択することができます。
例えば、「税抜経理方式」の法人が、税抜92,592の資産を取得した場合は全額損金算入できますが、「税込経理方式」の法人の場合は10万円になるので3年間で償却することになり、取得した事業年度の減価償却費は減少します。
よって減価償却費の計算上、「税込経理方式」より「税抜経理方式」の方が有利となります。

(3)特別償却、特別控除


減価償却資産を取得した場合、一定の要件で、通常の減価償却額に加えて割増償却できる特別償却の制度、法人税から一定額が控除できる税額控除の制度があります。この場合には「税込経理方式」を採用していると取得価額が大きくなるので有利となります。
よって特別償却、特別控除の計算上、「税抜経理方式」より「税込経理方式」の方が有利となります。

(4)棚卸資産


貸借対照表及び損益計算書上の期末棚卸資産の金額は「税抜経理方式」の場合は税抜き、「税込経理方式」の場合は税込みで記載します。
よって「税抜経理方式」と「税込経理方式」のいずれの経理処理を選択しても会計上の当期利益は同じになります。

(完)