2012.3.30 外国法人に対する課税関係
個人または法人が、本国(居住地国)以外の外国(源泉地国)で事業や投資等を行う場合には、居住地国と源泉地国の双方で課税関係が発生します。そこで日本では、外国税額控除、外国子会社配当益金不算入制度、租税条約の機能により国際的二重課税を排除する仕組みになっています。
外国税額控除は№40、外国子会社配当益金不算入制度は№25で解説しましたので、今回は租税条約の機能と、外国法人に対する課税方法について解説したいと思います。
1.租税条約
源泉地国は外国法人に対して、その国内源泉所得のみに課税しますが、国内源泉所得の定義が各国の税法で異なるため、相互主義に基づいて各国の課税権を配分するルールが租税条約です。
租税条約は、原則として国内法に優先して適用されますが(憲法98条)、租税条約よりも国内法が有利な場合は国内法によります(所得税法162条、法人税法139条)。外国税額控除は、居住地国での内国法人・居住者に対する二重課税を排除する方式であるのに対し、租税条約は、源泉地国での外国法人・非居住者に対する課税を減免して国際的二重課税を回避する機能です。
2.日本における外国法人に対する法人税・所得税の課税
日本以外で設立された外国法人が日本に支店を設立した場合、日本はその外国法人が日本国内で稼いだ所得(国内源泉所得)に対して課税します。
外国法人に対しては、国内源泉所得の種類(法人税法138条)と外国法人の形態(法人税法141条)を限定列挙して法人税を課税しています。また、所得税法は、非居住者に対する所得税の源泉徴収(所得税法212条)と徴収税率(所得税法213条)を定めています。
これらの規定をまとめると、日本国内に支店・工場等の恒久的施設を有する外国法人は、日本での事業の所得、国内にある資産の運用・保有・譲渡による所得には日本の国内法人と同一の法人税が課税されます。また、外国法人が支払う一定の国内源泉所得に対しては、所得税が源泉徴収されます。所得税が源泉徴収される主な国内源泉所得と税率は、利子等15%、配当等20%、人的役務の提供20%、不動産賃貸料20%、使用料20%などです。
(完)