会員のカトケンです。あけましておめでたうございます。
昨年は大変な1年になつた。せめて気持ちは前向きに行きたかつたが、職場で日々プレッシャーを感じながら、抱えてゐた仕事の年末の〆切まで心休まる遑が無かつた。
幸ひ通勤中の読書が唯一心が開放される時間となり、『ある市井の徒ー新コ半代記』(長谷川伸自伝)に夢中になつて乗り越えることができた。
幼くして母と生き別れ、一度だけ母らしき人が人力車からパッとお菓子を投げそれを拾つたこと、兄と2人で生き別れた母に会ひに行つたが果たせず人力車に乗せられ泣きながら帰つてきた件の途中には、明治17年生まれの作家が幼いころの横浜の鉄道事情が分かる描写があつて興味をそそられる。
その母とはその後どうなつたかは読んでのお楽しみとして、日ごろ様々な回想録を読んでゐるが、記憶が一部しかなくても、その断片的な手がかりから過去の出来事を組み立てていく自叙伝に読了後、自然再読してゐる自分がゐた。
さすが『相楽総三とその同志』にをいて何百人の草莽の同志たちのみならず、幕府方や鎮撫側諸藩の人たちをも調べ上げた作家である。
これぞと思ふ作家がゐたら、また自伝をめくつてみたいものだ。
さて、年末年始は早めに故郷へ帰り、先考の墓参りやら大掃除やら家の仕事に追われる。こんな状況だから、いろんな人にも会へないが物を届けてくださる親戚や近所の方がをり、寂しい中にも喜びや楽しみがあつた。
大晦日恒例の菩提寺の読経と新年のお祈りでは父の代から交流のある方々と二言三言、現在の消息やら母の状況やらをやりとりするだけでもホッとしたことだつた。
いつもなら篝火を焚いて檀家の皆さんと除夜の鐘を聞きながら火の番をする。昨年は中学の同級生と30年ぶりの再開を果たしたが、今年はそれもなく寂しく散会した。
また、元旦には浅間神社で高校の同級生と落ち合つて周辺の史跡や神社仏閣を回るのが恒例だつたがそれも叶はず。今回相方が帰省を自粛し昨年は予定が合はなかつたため、これで3年会はず仕舞ひとなるなら如何にも口惜しいことだ。
気を取り直して、自転車に乗つて方々を回るうち、2つの出来事が印象に残つたーー1つ目は以前このブログで紹介した葵区大岩の中村正直寓居跡に昨年9月に新しい石碑が建てられてゐたこと(=写真)。しかも、昨年末、12月27日付静岡新聞に記事があると知つて束ねた新聞から慌てて取り出す破目になつた(=写真)。
『西国立志編』執筆から150年記念の建立と分かり、富春院の山門前に「尚志」の碑があることを高校の日本史の先生から教えていただいたことを思ひ出した。
2つ目は葵区大鋸町の西福寺を訪れ、幕臣今堀千五百蔵(ちおらい、頑翁)・登代太郎父子の墓を詣で(=写真)、すでに無くなつたと勘違ひしてゐた登代太郎の実弟速水三郎の墓(=写真)にも再会できたこと。
今堀登代太郎は講武所の剣術教授方出役で伊庭八郎の友人である。養子に行つた三郎も双子の実兄沢次郎とともに剣術に秀でてゐるが、同山に沢の墓は無い。それでも速水家の墓誌には江戸時代からの戒名が刻まれてをり、三郎の諱正直が戒名に入つてゐる。
ここは駿遠に移住した徳川家臣団の泰斗前田匡一郎先生と新選組のみならず鬼平や町奉行など幕臣にも造詣が深い釣洋一先生と小弟の3人で平成21年に静岡市内を回つたとき教はつた場所である。
その時前田先生から教へられた大鋸町の遊郭跡にあつたお宮さんには残念ながらたどり着けなかつた。しかし、生まれた街の史跡を自転車で回ることなど子供のときには経験しなかつたが、これほど快適なものだと今まで感じたことはなかつた。
そろそろ甥つ子姪つ子が実家に来るころと家路に就き、戻つてしばらくぶりに甥つ子に会つたら背は伸びてゐるし、声変わりもしてゐる。果ては今まで使つたのを聞いたことがない敬語で話しかけてくることに、何ヶ月か会はないうちにすつかり大人になつたと感じ、驚くばかりだつた。
久しぶりに母や姉一家と夕食を囲み、いつもならトランプに興じるところ、今回は新しいボードゲームを皆でワイワイ楽しんでゐたら、帰る時間があつといふ間に来てしまつた。
今回は寂しい正月になるだらうと思つてゐたが、かうして振り返つてみると、いつもどおりとは行かなくとも心温まる時間を過ごすことができ、充実したものとなつたーー
新年開始早々、新型コロナウィルスの蔓延による緊急事態宣言が出て掃苔活動もままなりませんが、少しずつ知つてゐる情報を発信して行きますので、本年もよろしくお願ひいたします。
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昨年は大変な1年になつた。せめて気持ちは前向きに行きたかつたが、職場で日々プレッシャーを感じながら、抱えてゐた仕事の年末の〆切まで心休まる遑が無かつた。
幸ひ通勤中の読書が唯一心が開放される時間となり、『ある市井の徒ー新コ半代記』(長谷川伸自伝)に夢中になつて乗り越えることができた。
幼くして母と生き別れ、一度だけ母らしき人が人力車からパッとお菓子を投げそれを拾つたこと、兄と2人で生き別れた母に会ひに行つたが果たせず人力車に乗せられ泣きながら帰つてきた件の途中には、明治17年生まれの作家が幼いころの横浜の鉄道事情が分かる描写があつて興味をそそられる。
その母とはその後どうなつたかは読んでのお楽しみとして、日ごろ様々な回想録を読んでゐるが、記憶が一部しかなくても、その断片的な手がかりから過去の出来事を組み立てていく自叙伝に読了後、自然再読してゐる自分がゐた。
さすが『相楽総三とその同志』にをいて何百人の草莽の同志たちのみならず、幕府方や鎮撫側諸藩の人たちをも調べ上げた作家である。
これぞと思ふ作家がゐたら、また自伝をめくつてみたいものだ。
さて、年末年始は早めに故郷へ帰り、先考の墓参りやら大掃除やら家の仕事に追われる。こんな状況だから、いろんな人にも会へないが物を届けてくださる親戚や近所の方がをり、寂しい中にも喜びや楽しみがあつた。
大晦日恒例の菩提寺の読経と新年のお祈りでは父の代から交流のある方々と二言三言、現在の消息やら母の状況やらをやりとりするだけでもホッとしたことだつた。
いつもなら篝火を焚いて檀家の皆さんと除夜の鐘を聞きながら火の番をする。昨年は中学の同級生と30年ぶりの再開を果たしたが、今年はそれもなく寂しく散会した。
また、元旦には浅間神社で高校の同級生と落ち合つて周辺の史跡や神社仏閣を回るのが恒例だつたがそれも叶はず。今回相方が帰省を自粛し昨年は予定が合はなかつたため、これで3年会はず仕舞ひとなるなら如何にも口惜しいことだ。
気を取り直して、自転車に乗つて方々を回るうち、2つの出来事が印象に残つたーー1つ目は以前このブログで紹介した葵区大岩の中村正直寓居跡に昨年9月に新しい石碑が建てられてゐたこと(=写真)。しかも、昨年末、12月27日付静岡新聞に記事があると知つて束ねた新聞から慌てて取り出す破目になつた(=写真)。
『西国立志編』執筆から150年記念の建立と分かり、富春院の山門前に「尚志」の碑があることを高校の日本史の先生から教えていただいたことを思ひ出した。
2つ目は葵区大鋸町の西福寺を訪れ、幕臣今堀千五百蔵(ちおらい、頑翁)・登代太郎父子の墓を詣で(=写真)、すでに無くなつたと勘違ひしてゐた登代太郎の実弟速水三郎の墓(=写真)にも再会できたこと。
今堀登代太郎は講武所の剣術教授方出役で伊庭八郎の友人である。養子に行つた三郎も双子の実兄沢次郎とともに剣術に秀でてゐるが、同山に沢の墓は無い。それでも速水家の墓誌には江戸時代からの戒名が刻まれてをり、三郎の諱正直が戒名に入つてゐる。
ここは駿遠に移住した徳川家臣団の泰斗前田匡一郎先生と新選組のみならず鬼平や町奉行など幕臣にも造詣が深い釣洋一先生と小弟の3人で平成21年に静岡市内を回つたとき教はつた場所である。
その時前田先生から教へられた大鋸町の遊郭跡にあつたお宮さんには残念ながらたどり着けなかつた。しかし、生まれた街の史跡を自転車で回ることなど子供のときには経験しなかつたが、これほど快適なものだと今まで感じたことはなかつた。
そろそろ甥つ子姪つ子が実家に来るころと家路に就き、戻つてしばらくぶりに甥つ子に会つたら背は伸びてゐるし、声変わりもしてゐる。果ては今まで使つたのを聞いたことがない敬語で話しかけてくることに、何ヶ月か会はないうちにすつかり大人になつたと感じ、驚くばかりだつた。
久しぶりに母や姉一家と夕食を囲み、いつもならトランプに興じるところ、今回は新しいボードゲームを皆でワイワイ楽しんでゐたら、帰る時間があつといふ間に来てしまつた。
今回は寂しい正月になるだらうと思つてゐたが、かうして振り返つてみると、いつもどおりとは行かなくとも心温まる時間を過ごすことができ、充実したものとなつたーー
新年開始早々、新型コロナウィルスの蔓延による緊急事態宣言が出て掃苔活動もままなりませんが、少しずつ知つてゐる情報を発信して行きますので、本年もよろしくお願ひいたします。
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