探墓巡礼顕彰会-墓碑調査・研究プロジェクト-

「探墓巡礼顕彰会」の公式ブログです。巡墓会企画の告知など活動報告をしています。

『歴史研究』の連載から~出雲に眠る男爵家たち~

2015-11-11 01:34:49 | 会合報告
会員のクロサカです。今回は千家男爵家・北島男爵家・小野男爵家について紹介したいと思います。
今回の話は、現在でも連載をさせて頂いている『歴史研究』で発表した内容となります。
しかし、数年前に発表したということもあり、入手が少々困難である可能性が高いため、再掲載させて頂きたいと思います。
その他にも紙面の都合上、載せられなかったカラー写真を少し追加し、見やすいものにしたいと思い、再掲載に至りました。
以下、一部加筆修正が入っていますが、どうぞ御覧ください。

出雲調査については、大学院に進学後初の地方調査として赴きました。
出雲は古くより、八百万の神が集う場所として崇敬されており、出雲大社を始め、日御碕神社などの古社が多くあります。そういうこともあり、出雲大社の社家である千家家と北島家、日御碕神社の社家である小野家の三家が出雲国造の末裔とされて男爵に叙されました。この三家は、明治期以前より当地に歴代墓所を形成しており、現在まで連綿と続いています。本稿では、三家の近代以後の墓所に関して紹介していきたいと思います。



 はじめに、出雲大社社家である千家家と北島家の二男爵家の墓地ですが、両家ともに松林寺御墓所に歴代当主、旧松源寺墓所に千家家の婦女子と分家、神光寺に北島家の婦女子と分家の墓所があります。この三つの墓所は、全て出雲大社の周辺に集まっていますが、それぞれ独立しています。
 松林寺御墓所には、近世から現代までの千家家歴代当主と近代以後の北島家歴代当主の墓所があります。出雲国造家の墓所は、当主と夫人・婦女子でしっかりと分けられているため、こちらには、女性の墓が一基も建立されていません。墓型は、共に自然石墓を踏襲しており、神道墓所の姿をよく留めています。特に千家家における近世の墓型は、自然石ではあるものの石を横に置いたような墓標で何も刻まれていません。辛うじて墓標の隣に代数と当主名が刻まれた案内の標石があるのみです。北島家については、案内の標石が建立されていないため、歴代当主の特定は絵図や史料を確認しなければなりませんが、近代以降のものに関しては、墓石正面に位階と俗名がしっかりと刻まれています。両家ともに同じような墓型の変化を遂げているという事実は非常に面白いと思います。上の写真は、各県知事や司法大臣、貴族院議員、大社教初代管長も務めた千家尊福男爵の墓になります。下の写真は、出雲教初代管長北島脩孝男爵の墓です。



 つづいて、千家家と北島家の婦女子と分家の墓地は、旧松源寺墓所と神光寺に建立されています。旧松源寺墓所には、近世の千家家一族の墓所と近代以降の夫人、子女、分家の墓碑も建立されています。神光寺には、北島家の墓所があり、こちらには近世の北島家の夫人、分家の墓所があります。
 


 さらに、日御碕灯台のすぐ近くにある日御碕神社の社家小野家の墓所については、日御碕神社入口の大鳥居の向かいに見える小高い丘に小野家の墓所があります。しかし森の中には、他の社家の墓地や一般の方の墓地もあるため、一番奥まったところにある小野家墓地を見つけるのは容易い事ではありません。出雲大社社家の墓地と違い、全く整備がなされていないため、探墓難易度は非常に高いと思われます。小野家の墓所は、二ヶ所存在し、近世墓所と近代以降墓所があります。近代以降墓所には、当主と夫人の墓のほか、近代以降に分家した一族の墓所もあります。上の写真が小野尊光男爵夫妻の墓碑で、以前『歴史読本』の特集で秋元茂陽氏は、「マッチ棒のような形」と形容している通り、風変わりな墓標です。下の写真は、『歴史研究』11月号の本会員のカネコさんの連載に関係する小野尊正男爵と夫人の米子の墓標です。米子は佐野常樹伯爵の長女で、嫁いだ相手が小野尊正男爵です。



 ちなみに、これらの墓所調査を行うために、JR出雲市駅で借りた電動自転車で巡りましたが、往復20kmのアップダウンを走ることになり、追い打ちをかけるように電池も切れるという災難に遭い、ホテルに戻った頃には、全身が筋肉痛状態に陥っていました。しかし、とても有意義な調査をすることが出来ました。

最後に今回紹介した墓所における当主の墓標に刻まれている墓碑銘を掲載して締めたいと思います。

[千家男爵家]
千家尊孫『前国造千家尊孫奥都城』
千家尊澄『従五位千家尊澄奥都城』
千家尊福『貴族院議員正二位勲一等前出雲國造男爵千家尊福奥都城』
千家尊紀『出雲大社宮司従三位勲六等千家尊紀奥都城』
千家尊統『第八十二代出雲國造出雲大社宮司千家尊統奥都城』
千家尊祀『第八十三代出雲國造出雲大社宮司千家尊祀奥都城』

[北島男爵家]
北島全孝『従三位出雲國造北島全孝奥都城』
北島脩孝『従三位男爵出雲國造北島脩孝奥都城』
北島齊孝『貴族院議員従三位勲四等男爵出雲國造北島齊孝奥都城』
北島貴孝『元貴族院議員従三位勲三等出雲國造北島貴孝奥都城』
北島英孝『第七十九代出雲國造北島英孝奥都城』

[小野男爵家]
小野尊安『尊安命』
小野尊光『第九十五代従二位尊光命』
小野尊正『九十六代尊正命米子命』
小野勝彬『九十七代勝彬命貞子命』

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